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パッキパキ北京 綿矢りさ 著

夫の海外赴任で中国に来てみたら無敵になれた妻の物語を読みました。

これが・・・最高に面白い!

心をたのしく揺さぶられました。

 

 

彼女の無敵っぷりが最高です。

その無敵っぷりを、インテリな(?)夫は魯迅の書いた阿Qという人物に喩えて褒めているのだけど、夫は彼女のことを自分の理想の範囲でしか解釈しないので、その誠実さを突き止めることができていません。

 

 

終盤で、そんな無敵な彼女が日本にいた時には「できていなかったこと」を明かします。

中国で赤い服を着ることを楽しみながら、日本では赤と白のボーダーを着ることができなかったと。そこで、とても律儀な行動原理を持っている人であることが匂わされます。

侵してはいけない聖域をわかっているという点で、阿Qの何倍も知性を持っている。

 

 

 

  こういうのを待ってた!

 

  スピリチュアル・ビクトリー!!!

 

 

 

この小説を読めただけで、ああ今年はいい一年だったと思うくらい幸福な読書時間でした。

 

 

滞在記として読んでも勉強になる面白さ

この小説は舞台が北京で、その土地の特性など、読んでいるとためになるトピックがいっぱいです。

「もはやマッサージというより、爽快な悪魔払いの域」と説明されるレポートが笑えます。

 

日本人マッサージ師なら用心して触れない眼球のキワのキワまで強めの指圧で攻めてくる。

 

いますぐ施術を受けに北京まで行ってみたくなります。

 

 

他のアジアと北京との微妙な違いは、以下のようにレポートされていました。

 

平均的な事象に囲まれた日本から来た身からすれば、オンとオフが激しくて未だ平均を見出せずにいた。街を普通に歩いていても常にギョッとする落差が待ち構えているので気が抜けない、しかし街中にあるという監視カメラの存在のおかげで、カバンを盗られたりする犯罪にあまり用心しなくて済むのはまだ気が楽だ。

 

彼女がそれまでに行ったことのある他国の名前がいくつか後半にちらっと書かれていたのですが、その経験と比較して監視カメラの存在に言及されています。中国都市部の特徴をこんなにわかりやすく感じられた滞在記は初めてです。

 

 

風水の話が興味深かった

食事や装いや「赤」のバリエーションの多さなど、とにかくあらゆる観察記録が爆笑ものなのですが、陰陽と風水についての箇所がとても印象に残りました。

主人公の語り口が、まーいい調子で、楽しいです。

 

 日本にいるときは、風水信じてる芸能人の記事を見ると、運とかに頼らずに自分の実力信じろよなと思ってたし、霊とかも生まれてから一度も見えたことのない零感人間だけど、風水の本場の中国に来るとさすがに気づかずにいられないほど、パワーのみなぎっているスポットがある。ここは風水的にベリーデリシャスな土地なんだろうな、あ~風の巡りが堂々として気持ちいいというエリアと、うっこんな所にゃ一秒たりとも長居したくねぇずらかるか、というエリアの差が激しすぎる。

(中略)

シビアなほど陰と陽をはっきりさせてる北京と、ごちゃついてるけどまんべんなく全体的に良くしていこうとしている東京では、そもそも目指してる都市の未来が違う気がする。

 

現地へ行ってみるとわかる文化や民間信仰のレポートが面白すぎて、中国へ行ったことのある人が読むと、きっとすごく面白いのだろうな。

 

 

  *   *   *

 

 

いや~、それにしても。読んでよかった。元気出た。

この本を読みながら、わたしはこの映画の桃井かおりさんを想起していました。

 

映画の中で「あんたみたいなのをペン乞食って言うのよ」という桃井さんのセリフと似た、気持ちの良いセリフが終盤で登場します。

少し前の時代を思い出させる、イキのいい女性がそこに居ました。

電車で読むのは危険なレベルの爆笑系でした。これはすごい。

 

 




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