今年観てよかった映画の話です。
映画の感想は Threads に書いているのですが、インパクトが大きく長文で感想を綴りたくなりました。
憂いをぶっ飛ばす勢いのある映画で、「倍速で映画を観る」という行為がそもそも無理なスピード感。
こういう映画でこんなに感動するなんて、なにがよかったのだろう。
74分の短い尺の映画に、恋に必要なことがギュッと詰め込まれていました。
恋に必要なことは、人生に必要なこと。
昨今の価値観に逆行するとも言えそうなこの考えを、あえて大声で言いたい。
恋に必要なことは、人生に必要なこと!
情報はノイズ
この監督&美術、この俳優&女優の組み合わせの映画を観たのは初めてではありません。
- 監督:増村保造
- 美術:下河原友雄
もうこれだけでオシャレ度は保証済み。
出演は・・・
情報だけ見ると「家族総出でオシャレな布陣を敷いて、何やっとるの!」という映画です。原作者の川口松太郎氏はこの映画を作った大映という会社の重役でもあります。
だけど、そういうのも全部吹っ飛ぶほどよかった。
なんだこのよさは。
なにがよかったんだろう。
先入観はノイズ
わたしは先入観を抱く残念な時代を生きてきました。
川口浩という人物の認識が最初からジャングルにいるワイルドな探検隊長なので、混乱するのです。
隊長は映画俳優時代のイメージを完全にリセットして転生していた。
これはものすごいことじゃないだろうか。
だって、子供たちのためにずっと隊長を演じてたってことでしょう?
インターネットのなかった時代の子供は隊長の過去を知らずに信じきっていました。
『処刑の部屋』『巨人と玩具』『最高殊勲夫人 』『浮草』『妻は告白する』で隊長の俳優時代を観てきて、大人になってあらためて川口浩という人物を知ったわたしの記憶が、この映画で100%リセット完了。ああ! 気持ちがいい。
主演の二人が良すぎた
これまで観てきた隊長は若尾文子さんとの共演作が多く、野添ひとみさんとの共演作を観たのは『巨人と玩具』以来でした。
この映画『くちづけ 』の野添ひとみさんはすべてにおいて驚異的です。
彼女のスタイルの良さと目の輝きに、隊長のやや棒で淡白な風合いがベスト・マッチング。最高です。
- 隊長が彼女の水着と帽子を選ぶシーン(最高!)
- 隊長の伴奏で彼女が歌うシーン(最高!!!)
- ちゃんと恋人になるシーン(最高!!!!!)
最高があふれていました。
精神的に水を得た魚のようになっていく感じがよかったし、隊長がパンの配達のオートリキシャーを運転して瀟洒なアパートに住んでいる母の部屋へ行くシーンもよかった。
複雑な親子関係の中で性格が抑圧されちゃったけど自力で矯正する力も持っている、そういう人格がすごくよく伝わる映画でした。
▼歌のシーンだけ外国の人がYoutubeに上げているのを発見しました。
「ピアノ弾ける?」「真似事ならできるよ」と言いながら実際にピアノを弾く。
本人が弾いています。たまらんシーンです。
隊長、真面目や。
アナログ時代のあれこれがいい
パッと決めてサッと動く男性の魅力に、この世の女性はかなわないんじゃないか。
そんなのずっと前からわかってた。だけど忘れてた。
固定電話しかない時代に電話帳で探してコンタクトを取ろうとしたり、「動く」と決めた後の挙動のひとつひとつがものすごく魅力的に映ります。
紙ナプキンに連絡先をサッとメモするのもいいし、そんな時のために胸にペンが刺さってる。
キムタクが20代~30代前半頃にドラマで演じていた役もこれに近い感じがあったように思うのだけど、それですらもう20年前の話。
ぎゃー。
モバイルツールありきの世界で失う祈りの実践
隊長が電話帳をめくるたびに、わたしの中で祈る気持ちが起こりました。
「どうか、どうか結ばれてくれこの二人!」と。
判断も行動も早いけど、自分の気持ちに気づくまでに微妙に時間がかかる。
こういう人間の魅力的なアンバランスを、この映画の隊長は完璧に演じていました。
概ねグイグイいけるし行動力もある。
動きながら考えて自分の気持ちに気づいていく。
結論をできるだけ合理的に情報を解析して導き出したり、リスクヘッジの要件を類推し続けたらきりがない「ツールありきの情報世界」では、純粋なエネルギーを使えない。
わたしはやっぱり、ここがなんかおかしいと思っている。
そのことに気づくきっかけがこの映画の中にありました。
『狂った果実』を観た時にも思いましたが、50年代後半の映画は勢いが強烈です。
▼バイクのシーンをあげてる人も・・・(どこかの国のバイク好きの人がアップしていました)