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非色  有吉佐和子 著

まるで差別感情を1から10まで理解するためのレッスンのような本でした。

秩序のために規律があって、規律のために役割があって、序列がある。そしてそもそもプリミティブな情動として、人間には差別感情がある。

人種に対する偏見から無意識レベルで表出する見下しまで、どんどん内省の解像度が細かくなっていく。差別は肌の色の話だけじゃない。

書店へ行けば ”マウンティング” のモヤモヤで共感を誘う小説がたくさんあるけれど、ここまで人間の業に迫る作品を読むと、どれも物足りなく感じてしまいます。

 

 

物語は第二次世界大戦後に米兵と結婚した女性たちのお話でした。

わたしがこの本で初めて知ったのは、当時のアメリカでのプエルトリコ人、イタリア人への差別で、今年の春にシンディ・ローパーがライブのMCで話していたことを思い出しました。

シンディは自分の周囲にいた女性たちのことや、イタリア系のルーツがあることを話していました。昔の女性はお金を貯めたくても銀行口座を作るのに夫や兄など男性の裏書きが必要だから銀行を使えなかった。そんな昔の社会環境の話をしていました。

 

この本の主人公・エミコの子供は、まさにシンディと同じ世代。

自分が稼いだお金を働かない夫に使わせないように職場や同僚の家に隠してもらう日本人女性の話が、この小説にもありました。その金額が多くなるにつれ、ハラハラドキドキしました。

 

 

  *   *   *

 

 

今の時代ならヤングケアラーだ虐待だ育児放棄だと言われそうな実態も、この作家の手にかかると本質にぐっと深くフォーカスする題材になり、問題が生々しく迫ってきます。

まだ10歳に満たない子供が育児を請け負うことで、使えない大人よりも家庭内で上位に立てる。それを学習した子供がとる “ダメな大人” への残酷な態度に、自分にもある気質を見ました。

 

 

当時4.5万人いたとされる戦争花嫁の人生には、とても悲しい出来事も起こります。

それでもその時は日本にいるよりアメリカへ行くほうがましだろうと決断し、その道を選んでいる。

外国人との間に生まれた子を日本で育てる環境の厳しさは、わたしの世代でも少し想像ができます。「アメリカで暮らしたる!」と英雄主義を信奉しなければいけない家族関係の苦しさ、身内からのプレッシャーの描写は、まるで隣の家の話のようでした。

 

 

そしてこの前半の物語があるからこそ、後半にそんな目に遭っても日本に帰ろうとは微塵も思わない主人公のガッツが頼もしい。

中絶が許されない当時のアメリカで

「それでも子供はがめつう生まれよるで」

「ニューヨークは、それだけが不便なとこや。千ドル出しても生命の保証なしやというし。しゃあない、産むわ!」

 

こんなふうに話す関西出身の友人・竹子さんがブルックリンの暮らしを見せてくれる。そこからもうひと展開あってからのラストがいい。

 

それにしても、有吉佐和子さんの小説は取材による事実の温度の折り込み方が格別ですね。

よくこれだけ多くの立場の人を物語の中にテンポよく盛り込めるものだと、その構成力に驚きます。

 

 




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