ここまで書くなんてすごい。と思う内容でした。このシリーズは社会勉強になります。(アマゾンのカテゴリ分類は<労働問題社会学>になっています)
過去に同シリーズの「旅行添乗員」「大学教授」を読んだことがあり、最初に読んだ添乗員さんの物語に心を打たれたのをきっかけに、気になるものから読んでいます。
わたしが電通マンさんの話の中で最も食い入るように読んだのは、社内で売上をどの局・部門に立てるかの駆け引きと、安定して良い案件を供給することで囲い込む社内リソースの話で、電通ほどの規模になるとすごいのだろうと思っていたら想像以上でした。
Jリーグの利権を3年がかりで博報堂から奪取した話は段階が細かく書かれており、題材としてわかりやすい教材事例として読めます。この話は正当な競争として読めましたが、この他に不正の話も出てきます。
メディアとスポンサーと代理店の関係から生まれる人権無視は当たり前、女性アナウンサーがクライアントの接待に借り出されることが常態化していた時代の話。
若年層へ影響力を持っていたフジテレビの圧倒的な力や、ニュースステーションを去る際に久米宏さんが感謝の対象として電通の名前を出した話も、懐かしさとともに、なんかせつない。
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わたしはネットの検索広告が登場する前にウェブ媒体のテキスト・バナー・記事広告が売られていた頃に企業広報の人や広告代理店営業マンの働きっぷりを目にし、こんな世界があるのかと驚いた経験がありました。
なのでまるっきり知らないことはない。にしても、この本で知った事実は重すぎる。
強烈な出し抜き世界に巻き込まれてしまうと常に酩酊していなければ耐えられず、そういうワーク・ライフスタイルになる。
光の当たる場所で働いているときはドーパミンが出まくっているけれど、闇も濃い。結果を出すための不正(というか犯罪)に協力できずメインストリームから外れてしまった著者の処遇は、まるでドラマのようでした。
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著者は電通に入る前からハングリーでガッツのあった人。
元奥様との出会いの回想に出てくる、電話帳の同じ苗字に片っ端から電話をかけたエピソードはまるで映画『くちづけ』で野添ひとみさんに電話をかけようとした川口浩さんのようで、そんな脳内映像を浮かべながら読んでいたので終盤の話は読んでいて苦しくなりました。
と同時に
「あなたは忍耐力を持って、『昭和の男』と結婚したことを受け止めなければならないのです。なぜなら、それはあなたの選択だったのだから」
とカウンセラーに言われて絶望した奥様の気持ちには同情しかなく、昭和エレジーとしか言いようのない話でした。