このシリーズが5作ある中の4作目の本を読みました。
古書店で『サンカルパ 』というタイトルの本が目に飛び込んできました。
わたしはこのシリーズの1と2と5を読んだことがあり、これは4。真ん中の3だけ読んでいません。
このシリーズは話の軸が婚活物語です。
もともと運命について考える傾向の強い結婚適齢期の著者が、インドでサイババやアガスティアの葉と出会い、その内容の本が売れてサイババブーム、アガスティアの占いブームの立役者・時の人となり、金の無心をされたり怪しまれたりしながら、最後の本『愛と復讐の大地』ではインドで投獄されるに至るハードな旅行記。(犯罪を犯していないのに投獄されちゃう)
途中からサイババとアガスティアの葉が有名になったようだけど、時間軸で追っていけるテーマは運命の相手を見つけて結婚することなので、やはり婚活物語といえるでしょう。
あまりに破天荒なためおもしろく読まされるなか、著者によるインド哲学やアーユルヴェーダ、伝承文化の解説の文字起こし(日本語化)は絶品で、自己陶酔型のロマンチックな物語の途中途中で、驚くほど明快な解説文章が挿入されます。
途中で挟まれるアメリカ旅行記ではディーパック・チョプラ氏やアサント・ラッド氏といったその道の開拓者を訪問していて、「著者はそもそも、権威と接してきた医師なんだよな・・・」と、多面性を見せてくれます。
同時に、著者の意識はずっと「アガスティアの葉」「償いのプログラム」に翻弄されています。それだけインパクトのある経験だったのでしょう。
地下鉄サリン事件の年に出版された
この本の「まえがき」の日付は1995年8月。同年の3月に地下鉄サリン事件が起きており、その直後ともいえます。
今にして思えば、現実というものは、われわれが想像するような「運命」vs「自由意思」といった単純な構図では測りきれないものだった。予言に接した当初感じられた神秘も、その後に続いたような大いなる神秘の、単なる始まりでしかなかったのである。
本書では、その後の展開の中で、私があらためて捉えなおしたヴェーダや、神の化身・サイババが語られている。そして、自分の中で考え得る「運命と自由意思」を、ぎりぎりまで問い詰めたつもりである。それは、現実が、最終的には一体だれの「意思=サンカルパ 」で営まれているのかという、自分自身の長年の問いへの挑戦でもあった。
著者にとってオウム真理教の存在・事件がどう映っていたのかわからないし具体的な言及もないのだけど、興味深い時期に書かれた本です。
ブームの頃に出版された1と2は文庫化されているけれど、3以降は文庫化されていません。
男社会のしんどさと運命思想への傾倒
著者が広島出身でキリスト教の教育を受けていた話は、それまでの本で読んだことがありました。
ですがこの本で語られている以下のような話は、はじめての気がします。以下の、広島学院での中高生時代の話が印象に残りました。
このころ寮には陰湿ないじめがあり、上級生が下級生の暴力を振るうのは当たり前とされていた。設立当初、寮の舎監だったアメリカ人がとんだ暴力神父で、その結果、こうした “伝統” が形成されていったのだという驚くべき話を、われわれは何度も聞かされたものである。
ところで、私たちの部屋の上級生は、よりによって寮でも一、二を争うと評判の、凶暴な人物だった。この人は、実際は心根の優しい人だったのが、内心に何かの葛藤があったのか、下級生をとことんいじめた。だが、いじめられる下級生が二人いた間はまだよかったと言える。二学期の途中で私が指の骨を折ってからは、いじめはY君一人に集中した。
(第三章 魂の旅立つところ より)
イエズス会が設立した学校の中で起こる暴力。
Y君という友人は著者自身が忘れていたような些細なことでも再会時に謝罪してくるような人で、大学進学の前に海へ身を投げてしまったと書かれていました。
ここを読んだときに、著者がインドの伝承や呪術的な要素のある治療とも言えるアーユル・ヴェーダに傾倒していった気持ちが、なんとなくわかるような気がしました。
わたしは女性と男性では神秘思想に惹かれる理由が少し違っていると思っていて、男性の場合はやさしい心のままでは生きられない社会状況が、過酷な状況すらも「これも運命」という考えによって救われる、そういう仕組みがはたらいているように感じて。
この部分を読んだときに、ふと石原慎太郎小説の世界を想起しました。
* * *
読んだのは夏の終わりくらいだったのですが、ずっと感想の書き方に迷っていました。
ものすごくいろんなことが書かれすぎているので。
今年はこの本を読む少し前に、遠藤周作著『沈黙』を読んでいました。
そこで暴力と純粋さの衝突、それを克服するために起こる思考への視点を得たせいか、この本の感想もキリスト教や聖師への諦めという観点に少しに寄りました。
信じたいものを信じられない環境は人の精神を摩耗させるし、そこから他者の言葉で一足飛びに脱出しようとすると、ガツンと揺り戻しが来る。
運命を信じたい人の婚活は、どの時代も修羅の道みたい。
このシリーズと登場人物の本の感想
▼著者と結婚相手の女性のキューピット役のようなかた
▼アメリカ訪問記に登場されていました
▼この先生の診断を受けたエピソードがあります。それが読めただけでも、『サンカルパ』を手にして大収穫でした☆