よく行くインド料理屋さんでフード・ジャーニーという食べ物の提案があり、毎月楽しみに出かけています。
そこでミャンパー・ラオスで食べられているというオーラム(ハーブと肉、野菜のスープ煮込み)と一緒に、『ビルマの竪琴』が紹介されていました。
お店にあった本を読みはじめたら続きが気になり、あらためて最後まで読みました。
音楽の話だった
学生時代に中井貴一さん主演で映画化された予告映像や、それをパロディにした何かを目にして知った気になっていましたが、物語を全く知りませんでした。
児童文学とのことですが、いま読むとこんな本が終戦間もない昭和22年~23年に子供雑誌に連載されていたなんて、当時の子供は大人だなと思いながら読みました。いま90代以上の人たち。
著者はドイツ文学者で、今でいう東大の先生。本人は出征していないけれど教え子たちに帰らぬ人が多くいて、情報を得られる偶然も重なって小説の創作につながったみたい。
意外だったのは戦争の話ではあるけれども同時に「音楽とメッセージ」の話で、自分で人生を選ぶことや、その意思表明のあり方を示す物語でした。
視点はビルマに出征したある部隊の隊員の一人で、こんなことが語られます。
一高というのは今の東大で、「都の空」はその寮歌だそう。
日本でも、戦争中に、あの俗な流行歌のような軍歌ではなく、この「都の空」のような名曲が人の口にのぼるようだったら、全体がもっと品格のある態度でいることができたろうに、と思いますね。
(十章 より)
この物語は戦争そのものというよりも、勝ち負けの感情との向き合い方として、いかに思考以外のものが役に立つかを伝えています。
みんなのマインド、社会のマインド
著者がこの物語を執筆していた頃のことを伝えている巻末の「ビルマの竪琴ができるまで」に、以下のように書かれていました。
私は戦地から帰った人にあうと、その体験をきかせてもらいました。根ほり葉ほりたずねました。ところが、意外に思いましたが、自分の体験をはっきりと再現して話してくれる人は、じつに少いのでした。
(中略)
たいていの場合に、語られるのは直接の体験ではなくして、むしろある社会的にできあがった感想でした。自分自身が味わった事実は、はっきりとした形でとらえることがむつかしく、自分の判断はなんとなく自信がもてないが、社会的に通用している観念の方がたよりになるのです。つまり、個人と個人とは直接につながるのではなくして、ジャーナリズムその他によって公けの通念となったものが、個人に伝わるのでしょう。社会通念の方が先にあって、それから個人の判断が生れるのです。われわれの生活の中では、個人同士の横のつながりは、思うよりもはるかに希薄なもののようです。
こんなに昔から指摘されていたんだなぁ。
『細雪』を読んだ時に、そこには昭和17年の戦争が始まりそうな頃のことが書かれていて、今まで知らなかった人々の考えが会話で展開されていました。(かなりぶっちゃけられていました)
民間人の声のほうがリアルかと思いきやそんなことはなく、そもそも、声を持たない。声を出せないのではないんですよね。個人の考えを個人のものとして判断して出せる人からしか、個人の考えは得られません。
誰かが代弁してくれるのを待っている人がほとんどなのは、今も変わらない気がします。
市川崑監督の1956年の映画を観ました
「総集編」とありますが、これが普通の映画一本。公開時に二部構成だったみたい。
同じ監督&脚本で、モノクロとカラー、時代を隔てて2つ製作・公開されています。
配信で見られるのは1956年のモノクロ版で、原作小説を読んでこのモノクロ映画を観てから1985年のカラー版の予告を見ると、カラー版は配信にないのですが脳内で少し再現できます。
監督も脚本家も同じですが、ミャンマー(ビルマ)は社会情勢が不安定で撮影が難しいこともあり、撮影地は違っているようですがセリフはほぼ同じようです。
1956年版では原作の中で再現が難しそうな山岳民族のシーンは脚本の時点で削られていましたが、「音楽とメッセージ」の部分が映像と音で迫ってくるので、映画ならではの素晴らしさでした。
隊長役を三國連太郎さんが演じていて、まーこれがかっこいい。その4年前の『本日休診』という映画で重要な役どころを演じた三國さんの怪演的な魅力とは一転して、情に厚い隊長の役です。
この映画を観て、卒業式で歌って一度もピンときたことがなかった『あおげばとうとし』がこんなに沁みたのは初めてというくらい、あの曲がガツンとハートに来ました。
ひとりで悩みに悩んで師や仲間と別れることを選んだ人の究極の選曲歌が、卒業式で当たり前に歌われるのはかなり変。ピンとこないわけです。
英語版の本もある
冒頭に書いたお店には英語版の本もあって、店長さんがお子さん用に買ったものとのこと。

インドでも知られているみたい。(インド兵も一瞬、何度か登場します)


本や食をきっかけに知ることが増えました。
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