介護保険制度の崩壊
行き詰まる介護保険 人材不足・負担増、抜け出す道は
いま、高齢者の利用者負担について、1割から2割にする対象者を拡大するなどの検討が大詰めを迎えている。現役世代らの保険料負担を軽減し、制度を持続させるためと言われている。
支払い能力がある高齢者に負担をお願いする検討は避けられないと私も思う。だが高齢者の負担増は、本当の意味で現役世代の負担軽減になるのだろうか。
2割負担拡大などに反対する「認知症の人と家族の会」は、「しわ寄せは必ず現役世代に返ってくる」と警鐘を鳴らす。経済的理由で高齢者がサービス利用をあきらめれば、その分だけ現役世代の家族の負担が増し、介護離職などにつながる恐れがあるからだ。
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つまり現役世代の「負担」という言葉には二つの側面がある。一つは介護保険料などの金銭的な負担。もう一つは要介護の家族を見守ったり、介助したりする労力としての負担だ。後者は家庭の外には見えにくいが、遠距離介護の交通費といった経済的影響も生じうる。
介護保険料の負担を抑制しても、サービスの利用控えが広がれば、現役世代の見えにくい負担は逆に増す。高齢世代の負担か、現役世代かと単純に割り切れる問題ではない。
胸が苦しくなるもうひとつの課題は、介護人材不足と負担増のジレンマだ。
東京・上野駅周辺で11月に実施された「ケアデモ」を取材した。「ヘルパー不足は国の責任」「ケア無し日本は無理ゲー状態」。そんな声をあげ、ケアワーカーや車イスの利用者、高齢者らが繁華街を歩いた。「ヘルパーがいなくなってからでは遅いんです」。通行人に懸命に呼びかける訴えが胸に残った。
「介護殺人」などの悲劇的な事件が起きると、「家族で抱え込まず公的支援の利用を」というアドバイスがニュースで流れる。その通りだと思う。
しかしいま、ヘルパーのみならずケアマネジャー不足も深刻だ。頼った相談先が人材不足で疲弊し、対応してくれるケアマネさんもヘルパーさんもいなかったら、このような助言は成り立たない。
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人材不足による介護崩壊を防ぐには抜本的な賃上げしかなく、介護報酬を大幅に引き上げなければならない。しかしそれは現役世代を含む保険料にはねかえる。今度は負担増による介護崩壊が近づいてくる。負担増への懸念が賃上げの強いブレーキになってしまう。
人材不足による崩壊か、負担増による崩壊か。制度の仕組みに内包されたジレンマだ。ケアワーカーが尊厳を持って働ける待遇を保障し、保険料の極端な上昇をさける道はないのか。
一つの選択肢がある。介護保険の財源は保険料50%、公費(税金)50%だ。その公費部分の割合を引き上げ、介護職員の待遇改善などにつなげる方法だ。検討すべきだという声が強まっている。
この方法でも、新たな税財源の検討、確保は必要だ。ただ少なくとも、介護職員の賃上げが保険料の上昇に直結することはない。異論はあるだろうが、制度の行き詰まりを抜け出すには、この道しかないように思える。
(朝日新聞12月16日 一部抜粋)