安倍元首相銃撃事件 第12回公判
2025/12/2 浅野健一
安倍晋三元首相銃殺事件で裁判員裁判を受けている山上徹也さんの第12回公判は今日午後1時10分から午後5時半まで開かれました。
傍聴希望者は398人、抽選当選者は33人でした。前回より少し増えています。
山上さんに対する被告人質問の3日目。主任検察官が前回に続き、70分にわたり聞きました。休憩を挟んで、裁判員、裁判官が質問しました。裁判員は6人全員が男性。裁判員の一人は、山上さんへの質問で、山上さんと数回呼びました。弁護団以外で、当事者で山上さんと呼んたのは、この裁判員が初めてです。
検察官は、山上さんが大学を受験したかを質問。山上さんは「担任の教師の勧めでいくつか受け、一つ合格した」と回答。「国公立か私大か」と問われると、「私立大学」と答えました。結局、大学には入学せず、半年、予備校に通ったと、語りました。
これまでの公判では、山上さんが大学受験をしたという話はこれまで出ていませんでした。
検察官は、山上さんが事件の前日の2022年7月7日未明、奈良市内の統一協会施設が入ったビルの壁を、手製銃で試し撃ちしたことについて質問。山上さんは、「母親と通ったこともある統一協会・平城教会が入った場所で、安倍元首相を襲撃するのは、統一協会を許さないからということを知らせるためだった」と説明しました。
また、山上さんは、安倍氏が岡山市で行われる参院選の応援演説に出席した会場にまで手製銃を持って出掛けたが、警察官が出入り口に多数いて、自分を監視している感じがして、銃撃できなかったと語りました。
「岡山からの帰り、翌日に安倍氏が奈良市の近鉄大和西大寺駅に応援にやってくることを知った。まさか銃撃に失敗した翌日に、私が住む奈良に来るとは、思いもしなかった。偶然と思えないような気がした」
続いて、事件当日朝の行動を質問。山上さんは「演説場所近くの商業施設のトイレで手製銃の安全装置の一つをオフにし、発砲の準備を整えた。その後、到着した安倍氏を間近に見て、本当に来たなあ、と思った。後方から撃とうと考えていたが、警察官の警備で近づけないでいた。 その時だった。近くを自転車の老人が横切り、台車を運ぶ人もいて、後方の警備の目がそれて一瞬の隙ができた。それで近付き、2発撃った」
「安倍元首相は6月末にも大和西大寺駅前に来ており、動画や写真で見たが、警備が厳しいと感じた。事件の日は、工事中だったこともあり、警備が前より緩いと感じた」
検察官は、発砲の瞬間、何を考えたかを質問。山上さんは「射撃の心理学を取り上げた本で、銃を撃つ時は、無心になれと書いてあったので、なにも考えなかった」と答えました。
安倍氏が2022年9月、関連団体UPFにビデオメッセージを寄せたことで襲撃の決意を固めたされますが、「安倍元首相と教団が公に認められるのは受け入れ難かった。安倍氏に対して、嫌悪感や敵意、そうしたものがだんだんに強くなった」と述べました。
裁判員が安倍氏に対する心境について聞きました。山上さんは「安倍元首相に対する、表面における強い怒りではないが、頭の片隅や心のどこかに引っかかり続けていた。困惑、失望、嫌悪感、敵意を感じた」と回答。
裁判官が「どのようにして最終的に今回の事件に繋がったのか」と聞くと、約15秒間を置いて、「申し訳ないですけど、もう少し考えさせていただければ」と応じました。答えました。
「他の政治家ではなく、なぜ、安倍元首相を襲撃したのか」との岡田・右陪席裁判官の質問には、「安倍元総理は、統一協会と政治の関わりの中心にいる方だと思っていたので、他の政治家では意味が弱いと思った」と答えました。
「事件を思いとどまることはなかったか」と問われ、「思いとどまることはなかった」と述べました。「銃の製造に長い時間と費用をかけていて、経済的にも追い詰められていた。やめてしまうと、何のためにこんなことをしたのかと、統一教会に対して敗北したというのは絶対に避けたかった」と話しました。
「安倍元首相に対する表面における強い怒りではないが、頭の片隅や心のどこかに引っかかり続けていた」とした。
裁判官からの「安倍元総理が旧統一教会の関連団体に寄せた動画に困惑、失望、嫌悪感、敵意などを述べていたが、どのようにして最終的に今回の被害者を殺害する事件に繋がったのか」という質問に対し、「申し訳ないですけど、もう少し考えさせていただければ」と答えました。 山上さんは、統一協会幹部から安倍氏を襲撃すると変えた理由を聞く質問についても、「今は控えさせてもらいたい」と応じました。
山上さんは、事件直前に参院選の期日前投票を行っていますが、松本恒平弁護士は「誰に投票したか」と聞きました。検察官から「投票の秘密に関わる」と異議が出たが、裁判官は質問を認め、山上さんは「佐藤啓さんに投票した」と答えました。佐藤氏は安倍氏が選挙中、2回も応援に来た候補者で、安倍氏の演説中、すぐ横にいました。
佐藤氏は統一協会と繋がりがあり、裏金議員だが、高市内閣の官房副長官に抜擢されています。第2回公判で目撃者証人として出廷しています。
山上さんは佐藤氏を選んだ理由について、「安倍元首相襲撃を実行すれば演説が中止になり、そこにいる候補には迷惑になるからだ」と話しました。
被告人質問が終わり弁護士の隣に着席した山上さんは、何かつぶやいていました。初めてのことです。
この後、櫻井義秀北海道大学大学院特任教授(宗教社会学)が証言しました。
公判は予定を50分上回って終わりました。