安倍元首相銃撃事件 傍聴記
2025/11/18 井上淳一
抽選券をもらって、待つこと3時間。今回の傍聴希望者数は分からないけれど、初回は722人で22倍。前回は341人で10倍強。足立正生さんは今まで7回全部ハズレ。今回は4人で来ていたのに、全員ハズレ。で、僕だけ当選。もう申し訳なくて。責任重大。プラス、ついにナマ山上徹也と対面出来ると一気に緊張が走る。
12時25分。奈良地裁に入る。厳重な荷物チェック。荷物はロッカーにすべて入れなければならない。持ち込んでいいのはノートだけ(ルーズリーフの人は紙だけにしろと言われていた)。ペンは裁判所から貸し出されたものしかNG。ポケットの中に入っていていいのはハンカチだけ。僕はレシートが入っていたら、捨てさせられた。盗聴や盗撮出来る余地なんて全くない。
傍聴席は67席。一般傍聴は32席、マスコミ32席、関係者3席(検察が座ってた)。
13時05分。山上被告がのっそりと入ってくる。上下黒。銃撃の時は線の細い感じがしたが、ふっくらしたせいか、落ち着いて見える。老眼が始まっているのか、資料に目を落とす時に眼鏡を外す。が、以降は外したまま。基準がよく分からない。母親が見たくないのか。
その母親が入ってくるが、一切顔を上げない。詳しくは、コメント欄の朝日新聞の記事を。プレゼント記事にしたので、全文読めます。
前半の山場は、弁護側の尋問の最後、自身の責任を問われた時だ。
「私が加害者だと思う」
そうハッキリ母親が答える。
「本当の宗教の姿をはき違え、献金に一生懸命になって大変な間違いをした」
しかし、その言葉に微かな違和感を覚えた。この後、休憩になっていたので、鈴木エイトさんに「あれ、まだ統一教会を庇ってますよね?」と訊くと、「あれ、そのまま報道すると、反省してるように見えるけど、教義は間違っていないと言ってますからね」と。やはり。脱会を問われると、言葉を濁していたし。この根深さ足るや。
次に検察側の尋問。微に入り細に入り、もう統一教会がそこまで事件に関係ないことを証明しようという意図がありあり。あとは安倍晋三と統一教会の関係を薄くしようと、「あなたは安倍元首相に勧誘されたのですか?」という質問まで。バカじゃないの。そんなこと、あるわけないじゃん。本当にくだらない。
尋問の最後ーー
「徹也は根は悪い人間ではないです。私がもっとしっかりしていたら人生は台無しにならなかった。徹也には申し訳ないと思っています」と母親。その声が震えている。これを言うために、これを息子に聞かせるために、ここに来たのだろう。
衝立で隠されているので傍聴席からは見えないが、その顔が間違いなく山上を向いているのが分かる。その時、ずっと顔を伏せていた山上が一瞬顔を上げた。
休憩になる。それまで休憩中もポーカーフェイスで俯いていた山上が何度も額に手をやる。何かが確実に揺れている。
裁判官からの質問が終わった後、母親がまたしても「徹也に申し訳なくて」と言いかける。「ここはあなたが話す場ではない」と裁判長が止める。それでも退廷間際、「テッちゃん、ごめんな……」と母。その声はみなまで届かず、またも裁判官に遮られたが、山上には確実に届いていた。退廷する母の背中をまたも一瞬だけ山上が見る。一体、何年ぶりに見る母の背中だったろう。それが被告と証人となって、ようやく実現する。何が彼を、彼女をこうさせたのか。
これがこの日のピークだと思っていた。いや、傍聴記はこれで終わった方がいいに決まっている。
しかし、この後に出廷した妹がまた凄まじかった。
もちろん衝立で姿は見えない。しかし、その声から凛とした生き方が見える。母親も声から頭の良さを感じさせたが(ならば統一教会なんかにハマらなきゃいいと、さらにその思いを強くした)、妹はその比ではない。この家庭環境でどうやって、こう生きられたのか。
弁護側から今日語る意味を問われた妹はこう言った。
「私は今まで自分の生い立ちを誰にも語ってきませんでした。その腹立たしさ、悲しさ、虚しさに涙なしには語れないからです。でも、今日は覚悟をしてきました」
そこで語られる宗教二世の悲惨さ。母親も自らの加害は語っていた。しかし、こうも違うものなのか。足を踏まれた者にしか痛みは分からないと言う。その詳細はいずれどこかが書くと思う。
妹の証人尋問は明日も。明日も傍聴を希望するが、どうせなら足立さんに当たって欲しい。
足立さん、『REVOLUTION+2』をやるなら、母親目線ですよ。
最後に母親が言って、絶対に報道されないであろう言葉を。
事件について問われた母親はこう言った。
「この事件で救われた人(宗教二世という意味にしか取れなかった)がいると思う」
願わくば、母親自身も脱会し、救われんことを。