高市総裁が掲げる国主導投資の「責任ある積極財政」、市場が注視
2025/10/08 読売新聞
始動 高市体制<中>
自民党の高市早苗新総裁の誕生以降、東京株式市場は連日、沸いている。日経平均株価(225種)は6日、防衛関連株などが買われ、2000円以上急騰した。7日も一時、500円以上高い4万8500円台まで上昇し、終値は最高値を更新した。
前任2人の総裁が誕生した直後、株価は急落した。「石破ショック」「岸田ショック」と呼ばれた市場の失望に比べ、明らかに期待は高く、高市氏の経済政策を材料にした「高市トレード」の強さを物語っている。
市場が高市氏に好感を示すのは、国主導で投資する「責任ある積極財政」を掲げているからだ。4日の就任記者会見で「国が呼び水的な投資をする。投資すれば、必ず需要が生まれ、税収も上がる」と述べ、インフラやエネルギーなどへの「賢い投資」を強調した。金融緩和への志向も株価を押し上げている。高市氏は前回総裁選で「金利をいま上げるのはアホ」と言い放った。今回は発言を抑えてきたが、就任会見で「金融政策も責任を持たないといけないのは政府」とくぎを刺した。「利上げは尚早」という日本銀行へのメッセージとも受け止められた。
だが、株式市場の活況とは裏腹に、財政悪化への懸念は強まっている。
政府は、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を2025~26年度を通じて早期に黒字化する目標を掲げる。内閣府が8月に示した試算では、1%台半ばの実質経済成長率が続けば、26年度に3・6兆円の黒字になる。
だが、高市氏が明言するガソリン暫定税率の廃止などは考慮されていない。財務省幹部は「補正予算の規模や『年収の壁』への対応は総裁の意向が反映される。戦々恐々だ」と語る。
長期金利の代表的な指標である新発10年物国債の流通利回りは7日、前日より一時0・015%高い1・695%まで上昇(債券価格は下落)し、約17年ぶりの高水準となった。金利上昇は、財政悪化への警告でもある。
高市氏は物価高対策で財源不足になれば、赤字国債の増発を容認する考えを示している。野党が求める消費税減税も「選択肢として放棄するものでない」と言い切る。国民民主党が重視する年収の壁引き上げにも前向きだ。
英国では22年、当時のトラス首相が財源の裏付けがない大型減税を打ち出し、国債・株・ポンドのトリプル安による「トラスショック」を招き、わずか1か月半で退陣に追い込まれた。
市場では、高市氏の経済政策にトラスショックの再来を危惧する声も出始めている。財政運営への信認を失えば、高市トレードは一気に姿を変える危険もはらんでいる。高市氏の手腕を、市場は 固唾かたず をのんで見守っている。(経済部 田中俊資)
