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万博工事 未払いの真相    2025/9/19 NHK

万博工事 未払いの真相

 

2025/9/19 NHK

 

 

浮かびあがる3つの事情 


黄色は未払い訴える下請け業者(一部重複あり)


NHKが関係する業者に取材し、資料を分析した結果、海外パビリオンの建設工事で代金の未払いを訴えているのはセルビアルーマニア、マルタ、ドイツ、アンゴラアメリカ、中国、ポーランドウズベキスタンの9つのパビリオンで建設に関わった少なくとも38業者にのぼることが分かりました。

いずれも業者間のトラブルで、最上位の元請け業者から代金が支払われないというものや2次や3次など下請け業者間で代金が支払われないという訴えもありました。

裁判になっているものもあり、問題解決の見通しは立っていません。

 

なぜここまで未払いの問題は拡大したのか。

取材と分析を重ねると、大きく3つの事情が浮かび上がってきました。

 

背景事情その1 “工期の短さ” 


パビリオンの着工・完了の時期 青色が国内企業など 赤色が海外


1つ目は「短い工期」です。

NHKはすべてのパビリオン84棟について、大阪市に提出された「建築計画概要書」を元に、建設本体の工事が始まる前の建築確認と、完了後に行われる検査の時期を調べました。

その期間を帯で示したのが上の図です。

青色が国内企業や博覧会協会が費用を負担したパビリオン、赤色が海外各国が負担したパビリオンを示しています。

海外の方が国内に比べて着工の時期が遅いことが分かります。

最も遅いのがマルタ、次いでルーマニアセルビアと続きます。

この3か国のパビリオンではいずれも未払いの訴えが出ていて、業者の数が27社にのぼっていました。

各国に取材すると、当時は建設業界の人手や資材の不足により工事を担う建設業者を探すのに手間取ったという声が聞かれました。

 

背景事情その2 海外スタッフとのコミュニケーション 
2つ目は海外スタッフとのコミュニケーションの難しさ。

今回未払いの訴えが出ている9つのパビリオンのうち、7つは海外資本の企業が元請けに入っていました。

現場で追加の発注が相次ぐなか、元請けの外国人スタッフや現場の外国人作業員とのコミュニケーションがうまく取れず、契約内容を詰め切れないまま追加工事を請けるケースが多かったと複数の業者が話していました。

 

背景事情その3 問題のある業者の参加
そして3つ目が問題のある業者の参入です。

アンゴラパビリオンの工事では、未払いを起こしているとされる下請け業者が、工事に必要な建設業許可を受けていなかったことが発覚しました。

大阪府が30日の営業停止処分にしたほか大阪府警も捜査を続けています。

海外パビリオンの工事に参加していた業者の中には、ほかにも業者不足のなか経営が不透明な業者も入っていたと話す人もいました。

 

公共工事に詳しい専門家が分析 
では、海外パビリオンはなぜ国内企業などと比べて着工が遅れたのでしょうか。

入手した「建築計画概要書」によりますと、国内企業などの元請け業者になったのは大手ゼネコンなど国内の主要企業でした。

公共工事に詳しい筑波大の楠茂樹教授は「大手ゼネコンなどは工期を確保でき、コミュニケーションが取りやすい国内のパビリオンを優先したのではないか」と分析しています。

 

楠茂樹 教授
「発注者が国内の組織であれば着工が早く、リスクも少なくなるのでゼネコンが受注を優先したとみられる。その分、海外パビリオンの工事を受注できる業者は少なくなり、海外の参加国による建設業者の確保がより難しくなっていったのではないか」

また、規模が大きい万博はおおむね5年ごとに開催されていますが、今回は大阪・関西万博の前のドバイ万博が新型コロナウイルスの影響でおよそ1年後ろ倒しになりました。

このため海外の各国にとっては万博に向けた準備期間が短縮される異例の事態になっていました。

こうした事情も着工が遅れた背景として指摘する関係者もいました。

 

協会と行政が協力呼びかけた 
開幕まで1年半あまりとなった2023年8月、万博の実施主体の博覧会協会や大阪府大阪市は、海外パビリオンでの工事の遅れを受け対応に乗り出していました。

建設業の中小企業の団体に工事への協力を呼びかけたのです。

博覧会協会副会長の吉村知事は「海外のパビリオンは時期が非常にタイトになってきている。地元の大阪・関西の建設事業者の皆様にぜひお力をお借りしたい」と訴えていました。

当時の取材では、要請を受けた中小の建設業界団体の幹部は工事に参加する意義を感じる一方、海外の企業との取り引きに不安を訴えていました。

 

建設業協会の幹部(当時)
「海外との取り引きの経験が無く、行き違いで支払いをめぐるトラブルになりかねない。その行き違いを誰が埋めてくれるかが問題だ」

博覧会協会の対応は… 
博覧会協会は今月の会見で、未払いの問題について「協会は契約の当事者ではなく、未払いはあくまでも民間業者どうしの問題」だとして、被害を訴える業者に相談窓口を紹介したり、行政機関に情報提供したりしていると説明しました。

 

石毛博行事務総長
「私たちも非常に残念に思っております。協会は直接の契約当事者ではない中、行政機関に情報を提供して、そこの元にある仕組みの中で解決していただくよう働きかけているところです」

未払い問題をめぐる背景事情について、私たちが博覧会協会に取材を申し込んだところ、以下のような回答が書面で来ました。

Q.海外パビリオンの工事が遅れていたときの対応についてどのように考えているか

A.「協会は、パビリオン建設の円滑化に向けて工事環境などの改善に取り組みました。開幕日には165の公式参加者のうち160のパビリオンが開館するとともに、残り5つも順次、開館しており、特段の問題はなかったと承知しています」

Q.海外パビリオンの工期の遅れは未払いへの影響があったと考えているか

A.「工事費の支払いに関する問題の原因は、事案ごとにさまざまであることから、たとえば、工期といった特定の要素が影響しているとは考えておりません」

”開幕に間に合わせた人たちの窮地” 重く受け止めてほしい 
取材に応じた業者の中には「協会からの呼びかけを意気に感じて参加を決めた」という人もいて、「民間どうしの問題」として側面支援に徹する今の協会の対応に不満の声も聞かれました。

 

来月13日の閉幕後、パビリオンの解体に向けた作業も始まりますが、未払い問題を不安視して参加に慎重な業者もいて、予定どおり行われるか注視する必要があります。

未払いをめぐるトラブルにはさまざまな事情もあり、一律に支援することは難しいかもしれません。

ただ、短い工期の中で必死に工事に励み、パビリオンの完成を開幕に間に合わせた人たちが、今、窮地に立たされている現状は重く受け止めなければならないと感じます。

なぜこのようになったのか、協会や行政機関が中心となってさらに検証を進める必要があると思います。

(「かんさい熱視線」で9月12日に放送)

 




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