「サピエンス全史」の著者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の言葉
NHK「トランプ時代への警鐘~歴史家 ユヴァル・ノア・ハラリ~」より
第1次世界大戦後の特需や自動車産業の成長などで繁栄の時代を迎えていた米国。しかし、バブルが崩壊し世界恐慌に突入すると、フーヴァー大統領は高関税によって自国の産業を保護しようと試み、その動きが欧州などに波及。ブロック化が加速し、世界経済が縮小した。追い詰められた日本やドイツなどが対外的な膨張政策をとり、世界大戦の引き金となった。
ロシアの野心は、目的を達成するまで止まらないとハラリ氏は見る。「ウクライナ戦争は2022年に始まったといわれていますが、実際にはロシアは2014年にウクライナに侵攻しました。ロシアはクリミアを征服し、2014年から2022年まで断続的に戦争が続きました。休戦協定はロシアによってすべて破棄されたことを覚えておくことが非常に重要です。もしいま協定によって戦争が停止したとしても、2~3年後に再び進行しないという保証はないということです」
「トランプ大統領がウクライナに戦争の責任を負わせたのを聞いたが、理解できませんでした。どうして彼はロシアの侵攻をウクライナのせいにできるのか。しかし彼の世界観では、強い者が支配し、弱い者は強い者に従わなければなりません。争いは弱者の責任だとトランプ大統領は考えるのです。すべての国がこの世界観を極めて危険だと感じている。それが問題なのです。」
「1945年以来、国際システムの企保原則は『強国が弱国を侵略し征服できない』というものだったはずです。ここ数十年で発展した自由主義の秩序は、多くの問題を抱えながらも、人類史上最も平和で繁栄した時代を生み出したのです。各国は、外部からの侵略に関して以前より安全だと感じたため、軍事予算を減らし、教育・医療・福祉の予算を増やしました。世界全体の平均軍事費は予算の約6~7%に低下し、一方で医療費の平均支出は10%に達しました。こうした状況はいま、ロシアによるウクライナ侵攻、中東やその他の地域でのさらなる戦争勃発、トランプ政権の新たな国際ビジョンによって変わりつつあります。世界各国が予算や資源を医療や教育から競って軍隊の強化に移せば、戦争の可能性は高まるばかりです。」
「一言で言えば、ポピュリズムは情報を武器と見ているのだ。極端なポピュリズムは、客観的な真実などというものはまったく存在せず、誰もが『その人独自の真実』を持っていると断定する。人々はその真実を使って競争相手たちを倒す。」
「21世紀の大きな問題は、私たちが開発している新しいテクノロジー、SNSやAIのようなものが、民主主義と全体主義、どちらに味方するのかということです。私たちは、民主主義と全体主義の違いを倫理観やイデオロギーの違いとして考えがちです。しかし実際には、情報の流れ方の違いです。」