以下の内容はhttps://tyuuou233.hateblo.jp/entry/2025/04/09/054519より取得しました。


ジョブズのように貧乏に 2011年10月25日  トマ・ピケティ

ジョブズのように貧乏に

2011年10月25日 トマ・ピケティ

 

 みんなスティーブ・ジョブズが大好きだ。ジョブズビル・ゲイツ以上に好感度の高い起業家の代表格であり、大金持ちであって当然と考えられている。というのも、ゲイツがオペレーション・システムの事実上の独占によって(とはいえ彼はウィンドウズを発明したわけではあるが)富を築いたのに対し、ジョブズiMaciPodiPhoneiPad等々じつにたくさんのイノベーションを世界にもたらし、情報機器の使い勝手にもデザインにも革命を起こしたからだ。

 たしかに、そのうちどこまでがこの一人の天才によるものか、どこまでが何千人もの技術者によるものなのかは、誰もよくわかっていない。技術者の名前は忘れ去られる。まして、エレクトロニクスや情報科学の基礎研究に携わる無数の研究者の名前は言うまでもない。彼らの研究成果が日の目を見なかったり、特許をとらなかったりすれば、なおのことである。それでも、どんな国、どんな政府も、あのような起業家が自国に現れてほしいと願っているにちがいない。

 ジョブズゲイツは、才能にふさわしい富を築いたという点でも、起業家の代表格だと言える。フォーブズ誌の長者番付*によると、ジョブズの資産は80億ドル、ゲイツは500億ドルである。これを知ると、ちゃんとお金は才能のある人のところへ行くのだと、世の中はなかなかよくできていると、つい満足したくなる。だが残念ながら、富が才能や努力に見合っているとは言えない。満足感に浸っていないで、もうすこし深くこの点を掘り下げてみるのも無駄ではなかろう。

 まず疑問を感じるのは、イノベーターであるジョブズの資産が、ウィンドウズの上がりで食べているゲイツの資産の六分の一にすぎないことだ。この事実は、競争原理にはいまなお改善の余地があることを示しているように思われる。

 さらに憂鬱なのは、アップルがここ数年メガヒットを連発し、その創造的な発明が全世界で大人気になっているにもかかわらず、ジョブズの資産がリリアンヌ・ベタンクールの資産(250億ドル)の三分の一以下であることだ。彼女は一度も働いたことがなく、ただ父親から遺産を受け継いだだけである。フォーブズ誌の長者番付を見ると、ジョブズより上に遺産相続者が十人以上いる(それでも噂によれば、同誌は遺産をできるだけ低めに見積もるような計算方式を採用しているらしい)。

 それだけではない。資産が一定水準を超えると、その増え方は企業経営者の収入よりもはるかに速いペースで、というよりも爆発的に、増えるようになる。1990年から2010年にかけて、ビル・ゲイツの資産は40億ドルから500億ドルに、リリアンヌ・ベタンクールの資産は20億ドルから250億ドルに増えた。どちらも、年平均13%以上、インフレを差し引いても実質10~11%増えた勘定である。

 彼らのケースは極端にしても、一般的にも資産は大きいほどハイペースで増える。中規模な資産は年平均3~4%しか増えないし、もっとささやかになれば、さらにペースダウンする。たとえば“Livret A“と呼ばれる非課税貯蓄口座の利率は現在2・25%だから、インフレを差し引くと0・5%になってしまう。だが巨額の資産であれば、投資リスクを冒すこともできるし、運用のプロを雇うこともできる。このため実質的な投資収益率は7,8%に跳ね上がり、最大級の資産ともなれば、持ち主の才能や職業的能力のいかんにかかわらず、あっさり10%以上に達する。要するに、金は金を生むのである。

 このことは、さまざまな政府系ファンドにも、また大学の基金にも当てはまる。北アメリカでは、寄付による基金が一億ドル未満の大学の場合、1980~2010年の投資収益率は年5・6%だった(インフレ調整済み、すべての運用費用差し引き後だから、これはこれで悪くない)。これに対し、一億~五億ドルの基金の投資収益率は年6・5%、五億~十億ドルでは7・2%、十億ドル以上では8・3%である。そして御三家ハーバード、プリンストン、イェールの場合には、10%近かった(この三校はいずれも、1980年の時点ですでに寄付金総額十数億ドルを誇り、2010年にはビル・ゲイツリリアンヌ・ベタンクールにひけをとらない数百億ドルに達している)。

 財産が増えるからくりは単純だが、そのすさまじさは好ましくない。この傾向がいつまでも続くと、富の分布ひいては経済的影響力の格差はますます拡大し、二極化するだろう。これを食い止めるには、累進性のグローバル資産課税が望ましい。未来の起業家を優遇するために、少ない資産に適用する税率は低くする。一方、勝手に増えていくような巨額の資産には高い税率を設定する。だが現状を見渡す限り、もしこれが実現するにしても、はるか先になりそうだ。

 

*~フォーブズ2010年世界長者番付によると、ビル・ゲイツは2位、リリアンヌ・ベタンクールは15位、スティーブ・ジョブズは110位である。

(『トマ・ピケティの新・資本論』2015年  村井章子:訳)

 




以上の内容はhttps://tyuuou233.hateblo.jp/entry/2025/04/09/054519より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14