広島市平和教材、「第五福竜丸」も削除 中学向け、23年度から
広島市教育委員会は、中学生向けの平和教材から、米国の水爆実験で被ばくしたマグロ漁船「第五福竜丸」の記述を削除することを決めた。被ばくの実相が十分に伝わらないとして、2023年度から別の内容に差し替える。授業では今後も取り上げるという。
市教委の平和教材を巡っては、漫画「はだしのゲン」の掲載取りやめも決まっており、日本被団協などが撤回を求めている。
市教委によると、第五福竜丸の記載がなくなるのは、中学生向けの「ひろしま平和ノート」。核兵器を巡る世界の現状をテーマとする章の冒頭で、第五福竜丸について紹介。被ばくの経緯のほか、被ばく半年後に亡くなった久保山愛吉無線長が残した「原水爆の被害者は私を最後にしてほしい」という言葉を写真とともに載せている。
市立小中高校で実施されている「平和教育プログラム」の内容を検証する有識者会議で、「被ばくの実相を確実に継承する内容になっていない」との指摘があり、市教委が削除を決めた。
新たな教材では、第五福竜丸に代わり、各国の核兵器保有や核軍縮の取り組みに関する内容に差し替える。教員用の指導資料には第五福竜丸の記述を残す。
市教委指導第2課の長屋吉輝課長は「現在の教材と中身は変わるが、第五福竜丸についてはこれまでと変わらず授業で扱っていく」と説明している。
第五福竜丸は1954年3月1日、太平洋・ビキニ環礁で実施された米国の水爆実験で操業中に被ばくした。乗組員23人が放射性物質を含んだ「死の灰」を浴びて半年後に久保山さんが死亡し、原水爆禁止運動が広がる転機となった。【毎日新聞 2023年3月1日 岩本一希】