社会保障改革 税制を含めて議論を深めよ
2025/02/20 読売新聞
政府が今国会で実現を目指している社会保障改革案が、各方面からの反発で後退している。
人口減少に歯止めがかからない中、年金や医療制度をどう維持し、少子化を反転させていくのかは、日本社会にとって避けて通れない重要課題だ。総合的な視野から議論を深めていく必要がある。公的年金を巡っては、20歳以上の全国民が加入する「1階部分」の基礎年金(国民年金)の財政悪化が問題となっている。
政府案は、サラリーマンらが加入する「2階部分」である厚生年金の、積立金の一部を基礎年金に投入しようというものだ。
これに対し「自営業者らの国民年金の財政を支えるために厚生年金の積立金を使ったら、会社員らが反発する」といった声が、自民党を含め多方面から上がった。
また政府は、現在は「従業員51人以上」の企業を対象としている厚生年金の加入要件を撤廃し、全ての企業に加入を義務づける予定だ。だが、保険料の負担が新たに生じることになる中小企業の団体などは強く反対している。
零細企業にまで保険料負担を求めれば、経営が立ちゆかなくなる事業所は多いだろう。改革が強引に過ぎる、という批判が出るのも無理はない。
政府はいずれの改革も、実施時期や判断そのものを先送りする方向で調整している。
一方、医療では、患者が負担する医療費に上限を設けている高額療養費制度について、政府は上限額を段階的に引き上げる方針を示した。しかし患者の年収によっては70%超も上限額が増えることになるため、患者団体などから批判を浴びている。
高額療養費の見直しは、児童手当の拡充を柱とした少子化対策の財源を捻出する狙いもあって、打ち出された経緯がある。
前政権が、消費税などの増税には反発が強いとみて「増税なき少子化対策」の形を取ろうとした。その結果、社会保障費の削減や保険料の上乗せで少子化対策の財源を賄うことになった。
税制の議論から逃げてしまったことが、様々な 歪 ひず みを招いているのではないか。
国会では負担増の改革をよそに、野党が要求している高校無償化などを、石破政権がどこまでのむかが焦点となっている。
野党の協力を得て政権を維持することばかりに力を割き、本来不可欠な改革から目を背けているようでは困る。