そして、教員の多忙化が加速するだけ・・・。子どもの自殺予防対策を「組織的な対応強化」と文科相が発言。
前屋毅
厚生労働省(厚労省)は、警察庁の統計に基づき2024年の自殺者数(暫定値)をまとめ、1月29日に公表している。そのなかで小中高生の自殺者は527人と、過去最多となった。それに対して阿部俊子文科相は、29日の閣議後記者会見で、学校での危機管理体制を強化する方針を示した。
|学業不振で自殺
厚労省のまとめでは、10代までの自殺の原因・動機でのトップは、学業不振や進路の悩み、友人との不和といった「学校問題」で、全体の44%を占めていた。そういう問題に学校が対応できていないということだ。文科省に積極的な対応が求められるのは当然である。そして文科相は、1人1台端末を活用した心の健康観察を実施し、スクールカウンセラーやSNSでの相談体制なども対策案として示した。ここで気になるのは、「心の健康観察」を行うのは誰なのか、ということだ。
スクールカウンセラーやSNSの相談窓口が、小中高生全部の健康観察を行うのは現実的ではない。となれば、その役目は教員に割り振られることになるだろうことは想像に難くない。「1人1台端末を活用すれば簡単でしょう」ということなのだろうが、1人1台端末への過大な期待ではないだろうか。
さらに、「組織的な対応を強化していくために、学校内で自殺予防を組織的に行う校内連携型の危機対応チームを設置」する案も大臣は示している。危機対応チーム?そのチームのメンバーは誰なのか?そのための新たな人員を各学校に配置する気も、予算もないだろうから、この役目もまたもや教員が負わされることになるのだろう。
1人1台端末での心の健康観察を行い、自殺しそうな子がいるとなれば危機対応チームのメンバーとして働く。そういう役割も、教員は担わなくてはならなくなりそうだ。
そんな仰々しい対策よりも、教員が子どもたちと接する時間を多く確保できるようにすることを考えるのが先ではないだろうか。教員が子どもたちと接する時間が増えれば、学業不振や進路の悩み相談にものれるし、友人関係でもアドバイスできることがあるだろう。なにより、子どもたちの異変に気づいてやれるはずだ。
そのためには、根本的な教員の働き方改革をすすめることである。それをやらずに組織的な対応強化を言ってみたところで、教員の多忙を加速するだけで、ますます教員が子どもたちと接する時間はなくなる。
ただ教員の多忙を加速させるだけの対策では、何の解決にもならない。「こんな組織をつくりました」の「やった感」だけの対策では、子どもの自殺を減らすことはできないのではないだろうか。