デマと報道 斎藤美奈子
2025/1/29 東京新聞
18日、元兵庫県議で、斎藤元彦知事らに対する告発文書の真偽を調べる百条委の委員だった竹内英明さんが死亡した。一連の告発文書問題においては文書作成者だった元西播磨県民局長につぐ2人目の死者である。
翌19日、N国党の立花孝志党首が「竹内元県議は明日逮捕される予定だった」「逮捕が怖くて命を絶った」などとXや動画で発信。情報は瞬時に拡散され、20日、兵庫県警本部長が県議会で「全くの事実無根」と述べる異例の事態に発展した。
デマは時に人の命をも奪う。その最たるものが関東大震災時の朝鮮人虐殺だろう。「朝鮮人が放火した」などの流言の拡大には当初行政や新聞も加担。警視庁は6日後にデマは処罰の対象になると警告するビラを出したが、多数の殺害事件はすでに起きた後だった。
右の史実は重い教訓を残す。デマの拡散を防ぐには、公的機関や新聞テレビなどの報道機関が虚偽情報をきっぱりと、迅速に、大々的に否定することが必要なのだ。
生前の竹内さんはデマや誹謗(ひぼう)中傷に悩んでいたという。25日のTBSテレビ「報道特集」がこの件を特集、立花氏および同様の虚偽情報を流した東国原英夫氏に発生源としての責任を問うたのはその意味でも有益な報道だった。とはいえ、もっと早く対応していれば最悪の事態は避けられたかもしれない。残念でならない。