樹木希林の言葉
『東京タワー オカンとボクと、時々、オトンと』(2007年 松岡錠司)
やっぱり世の家族が崩壊しないのは、女の粘り強さですよ
オカンはとっても優しい人だけど、それだけではないですよね。ああいうブっ飛んだオトンを、オカンは選んだわけでしょ。やっぱり同じ資質があるから出会うんですよね。その良さもダメさも、オカンは持っていたんだろうと思うんですよ。ならばもっとキラキラと生きられたはずなのに、それを閉じ込めながら生きていかなきゃならなかったことを考えると、寂しいときもあったんじゃないかな。
たとえば息子に〝東京に来ないか〟と切り出されて、〝行ってもいいんかね〟って言う。あれがオカンなんでしょうね。私なら、〝行くよ、決まってるじゃない〟か〝行きませんよ〟ってハッキリするんだけど、〝本当に行ってもいいんかね〟って……そういうカンジで万事生きてきたんだろうね。資質からしたらもっと弾けてもいい人生だったのに、そうではなかった。そっち側に行っちゃったオカンの生きづらさは、時々悲しくもあり、またそれで良かったんだよなあ、とも感じた。
やっぱり世の家族が崩壊しないのは、女の粘り強さですよ。女が台となって〝始〟って漢字になる。全ての始まりの土台を作るのが女だからね。そこがグラグラしてるんですよ。今の世の中は。そこのところがドシっとしていれば、たいていのことは大丈夫。女っていうのは、きっとその人生が終わったときに、いい意味で泣いてもらえる、いつまでも〝いてくれて良かった〟と思われる存在になるんじゃないかな。
(「樹木希林の言葉」2007年4月)
