原発の積極活用を掲げる岸田政権が重点施策とする高レベル
放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定で、
長崎県対馬市のトップは応募しないと判断した。政府が
交付金という「アメ」を示したところで、
自治体の「NO」は覆せない。そもそも核のごみを造る
核燃料サイクル政策は絵に描いた餅の状況で、廃棄物問題を解決できぬまま
原発推進に突っ走っている。
◆「同意」が必要な選定プロセス 進む見通しなく
「これ以上、市民の分断を深めたくない」。比田勝尚喜市長は27日午後の記者会見で、慎重に言葉を選び選定に応じない理由を話した。政府の説明が推進派向けの一方的なものだったため、住民の理解が深まらなかったと振り返った。
政府は4月、処分場選定に注力する方針を打ち出し、経済団体や議会などに働きかけて
自治体の負担を軽減するとした。ただ、選定までには3段階の調査があり、段階を進むには知事と市町村長の同意が必要だ。
2020年に始まった北海道
寿都町と
神恵内村での第1段階の文献調査は、事業主体の
原子力発電環境整備機構(NUMO)が報告書の作成に入る最終段階。
寿都町は第2段階の概要調査に進むかどうかを決める
住民投票を実施し、町長が判断する方針だ。
北海道の鈴木直道知事は一貫して反対の立場。今月12日の定例会見でも、核のごみの持ち込みを「受け入れ難い」と定めた道条例を根拠に「概要調査に移行する場合は現時点で反対の意見を述べる」と明言した。
他の
自治体が選定に応募する動きはない上に、前提となる
核燃料サイクル政策が破綻している。核のごみは、
原発の使用済み核燃料を再処理工場で化学処理する過程で出る。だが、肝心の
日本原燃の再処理工場(
青森県六ケ所村)は稼働の見通しが全く立たない。
再処理工場は完成延期を26回繰り返し、
原子力規制委員会が工事計画の審査を始めて3年近くたっても、原燃は十分に説明できずにいる。今月4日の審査会合では、耐震性評価の前提条件を「一から検討する」と出直しを約束し、ゴールはさらに遠のいた。原燃は4月、事態を改善するための社内チームを設けたものの、今月7日の規制委事務局との面談で「適切に機能していない」と自白した。
原発でたまり続ける使用済み核燃料。それを再処理できず、政府が想定する核のごみさえ造れるか分からない—。
原子力政策の迷走ぶりは止まらない。(渡辺聖子)
核のごみの最終処分場 地中300メートル以上の深さに使用済み核燃料を溶かした廃液とガラスを混ぜた高レベル放射性廃棄物「ガラス固化体」を埋めて処分する施設。原子力発電環境整備機構(NUMO)が建設地決定までに、資料で立地の可能性を調べる「文献調査」に2年程度、次にボーリングなどで地質を調べる「概要調査」に約4年、地下に調査施設を造って詳しく調べる「精密調査」に約14年かける。国は文献調査に入った自治体に最大20億円、概要調査では最大70億円の交付金を出す。