明けましておめでとうございます。
本年もどうぞ宜しくお願い致します。
今年最初の記事は、昨年、下書きに残したままの読書感想から…

『マイクロスパイ・アンサンブル』(伊坂幸太郎・著)
猪苗代湖が舞台の連作短編集。(2022年に単行本で刊行された七編+αに、「猪苗代湖でまた会う話」を追加収録した文庫版。)
昨年8月末、飛行機での長距離移動中に読み始めたのだけど、二つの異なる世界の話が、頻繁に入れ替わったりで、なかなか頭に入って来ずそのままになり、一月以上経ってからやっと続きを読んでみた。
読み進めるうちに、どんどん面白くなってきた。
登場人物は、失恋したばかりの社会人と元いじめられっ子のスパイなど。
中でも一番心に残った登場人物は、いつも人に謝ってばかりで、腰が低い門倉部長。
それまでの伏せんが回収される話の終盤、門倉部長は、実は心の広いとてつもなく良い人だったことが分かり、思わず涙腺が緩み、温かい気持ちに包まれた。
「今、見えていることだけが世界のすべてじゃない。知らないうちに、誰かを助けていたり、誰かに助けられたり。」といったことがテーマになっている物語。
特に、文庫版で追加された、主要人物のその後が描かれている「猪苗代湖でまた会う話」は、びっくりな展開で面白かった。
読んでいて、昔観た映画『ミクロキッズ』(ミクロサイズになった子どもたちの冒険物語)を思い出したり。
読み終わって、もしかしたら、私たちの世界の頭上には、巨人の国があって、お互いは見えなくても、風とかその気配は感じられ、この世界とそちらの世界は影響を及ぼし合っているのではないかと想像したり。
また、この物語のように、二つの世界を行ったり来たりできる扉があるのではないか?と想像したりもした。
その扉とは、物語の中で、偶然のことが3つ重なると現れるようになる。
ある時は、年齢は違っても、同姓同名で誕生日が一緒の3人とか。
それまでお互い気まずい雰囲気でも、偶然の一致が分かった途端、全くの他人でも親密さがグッと増して仲良くなれる。
そんな驚きの偶然ってそうそうないと思うけど、他人でも、お互いの共通点を何か見つけられただけで、好感が増すものだよなと思う。
巻末での「著者インタビュー」によると、この作品は、2015年から毎年、猪苗代湖で行われていた音楽とアートのイベント「オハラ☆ブレイク」で毎年配られている小冊子をまとめた一冊で、1年目、2年目という時系列で話が進み、7年間かけてできた作品だそう。
そして、作中には、ロックバンド・ピーズの楽曲「グライダー」や、Tomovskyの楽曲が使われているのとのこと。
私はどどちらも知らなかったけど、その歌詞が物語の中で効果的に使われている。
中でも、心に残った歌詞や、それに関する登場人物の台詞は、終盤に出て来る、
<いい星じゃんか いい星じゃんか♪>との歌が聞こえて来る場面。
「世の中って不安になることばかりだけど、『いい星じゃんか。』と思えるときが来てもいいのではないか。」という台詞や、
<あの頃にもどりたいって そういうコト言わない/あの頃に戻りたいって それじゃ今日に失礼♪>
という歌詞も、過去や未来に囚われてばかりいると確かに、今日という日に失礼だよなと思った。
そして、<僕が大好きな あのヒトが ちゃんと幸せだったらいいな♪>という歌詞や、
「彼らは今、幸せに生きているだろうか」
「少なくとも今、彼らが笑っているといいな」
という言葉からは、本の帯にもあるように、
「どこかの誰かが幸せでありますように。」という、この作品の思いが込められているのを感じた。
昨年8月、リヴァプールでの演奏初日「キャバーン・クラブ」で、私たちの前に演奏していた、かっこいいベネゼエラのバンドの人たちのことが、一昨日のニュースから気がかりなのも、これらの思いと同じで。話したことはなくとも、彼らの平穏な暮らしを祈ってしまう。

この作品でちょっと気になったのは、そのイベント「オハラ☆ブレイク」を毎年観に来ていた人でも、年に一度だけ目する小冊子でのこの連載は、1年空いても、前の話を思い出せたのだろうかということ^^;
☆

『自分の弱さを知る~宇宙で見えたこと、地上で見えたこと~』(宇宙飛行士・野口聡一とキャスター・大江麻理子の対談集)
以前、テレビで野口聡一さんが出ていて、宇宙飛行士ってめちゃくちゃメンタル強そうと思っていたけれど、挫折や葛藤を抱えて生きてきたということを話していて、とても意外だなと思い、この対談集を読んでみたいと思った。
こちらも、昨年11月に読んだ本。
2009年、アメリカのNASAで行われた対談をきっかけに交流がスタートした野口聡一さんと大江麻理子さん。野口さんは三度の宇宙飛行体験をもち、大江さんは『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターとして活躍してきた。
だが、順風満帆に見える2人にも、悩み・葛藤・挫折があった。ストレス、人間関係から宇宙体験、そして組織のあり方までを語り合う。
◎目次
【第1章】今だから話せる燃え尽きの真実
【第2章】今を生きる自分たちに成長神話は必要か
【第3章】半径5メートルの景色が心の風向きを変える
【第4章】安全な空間から外の世界へ飛び出す時
【第5章】宇宙から帰って地上でどう咲くのか
お二人とも、ご自身の弱みについても赤裸々に語られていたところに、人間味を感じ好感が持てた。
野口さんは、不完全燃焼の毎日に心が折れそうになった時期があったそう。
3回目のフライトから戻って完全に燃え尽きたわけではなく、2回目フライト後に既に苦悩があったとのこと。
2回目の後、次の出番がなかなかなくデスクワークの毎日。
ワーッと盛り上がった後にやってくる寂寥感のようなものは、アスリートでも宇宙飛行士でもどんな立場の人も共通している。
それを認めて徐々に自分のペースを再構築していく。
野口さんの話で、特に興味深かったのは、3回目のフライトに向けて立ち直ったその経緯について。
理系の世界、技術の世界を離れて、文系の世界に逃避したとのこと。
それは、JAXAと京都大学が共同で行っていた宇宙の人間学研究。
宇宙体験を科学的にではなく、人文学的に捉え直そうという研究だそう。
京都大学の哲学や心理学の先生に、自分の宇宙体験の話をしに行った。
宇宙体験は自分の中にどう蓄積して自分を変えていくかを見たかったから。
宇宙体験の研究をすることで、辛い現場から離れられた。
「宇宙体験はどのような心の変化をもたらしたのか」については、内面的に得られる変化は、宇宙飛行士それぞれだったとのこと。
宇宙体験をポジティブにいえば、「内面世界の変容が開く、地球的視野の拡張みたいなこと。」だそう。
地球市民としての意識を持つようになって来るそうで、私も、多くの国のトップの人にも是非宇宙から地球を眺めてきて、地球市民としての意識を持って欲しいと心から思った。
また、野口さんの、「成長を求め続けることが正しいことなのか。成長はあくまでも自己実現のための手段であり、成長を目的にして苦しいスパイラルに陥るのは避けるべき。」との言葉も心に残った。
また野口さんは、当事者研究(自分自身のことは自分で解決しようとの研究)をして、
色々な人の経験談を聞いてると、追い詰められると選択肢が無くなって来る人が多いとのこと。
「色々な体調の変化に気づいたときには、もう心も体もSOSを発信している。」のだそうで、会社を辞めるかどうかで悩んでいる人には、「自分のことは自分で評価する。評価軸を自分に持ってくる。」「自分のスキルを棚卸して、自分の好きなこと得意なことで生計を立てていく道を考える。」とも言われていた。
それから、野口さんがNASAで習って良かったと書かれていた、「MBTI」という性格タイプ分析を用いたチーム作りの話も興味深かった。
余談だけれど、宇宙関連で思い出すのは、昨年秋に放送していたNHKの夜ドラ「いつか、無重力の宙で」という15分ドラマ。
高校時代の「人工衛星を作る」という夢を再び追いかけ始める、元天文部の30代女子4人の友情物語で、心揺さぶられる内容で毎回楽しみに観ていた。
エンディングでかかるこのテーマ曲吉澤嘉代子の「うさぎのひかり」も、この4人の夢をよく表していて、今聴いてもグッと来る。
その次に放送された、岡山天音主演の夜ドラ「ひらやすみ」も、とってもいいドラマだったなー。
朝ドラ「ばけばけ」も、もちろん面白いけれど(*^-^*)

昨年秋に、近くの川で一度だけ見かけたアオサギを、昨年末にもまた目撃した。
しかも、アオサギだけでなく、ダイサギなどのサギを同じ場所で10羽近く目撃。
近づくと、さぁっと飛んで行ってしまい、向こう岸に、間を開けて等間隔で並んで留まっている光景も面白くて。


それ以来見かけないので、どこかへ渡って行く途中、休憩で寄っていたのでしょうか…。