
こちらの作品の宣伝は、何度か目にしていたけれど、特に観に行く予定はなかった。
でも、temahimeさんがこちらの記事でとても良かったと書かれていたので、観てみることに。
公開は4月後半だったけど、まだ上映していて良かった。
原作は、2005年・第133回直木賞を受賞した朱川湊人の小説「花まんま」。
早くに両親を亡くし、大阪の下町で暮らす加藤俊樹(鈴木亮平)とフミ子(有村架純)の兄妹。兄の俊樹は、死んだ父と交わした「どんなことがあっても妹を守る」という約束を胸に、兄として妹のフミ子を守り続けてきた。妹の結婚が決まり、親代わりの兄としてはやっと肩の荷が下りるはずだったのだが、遠い昔に2人で封印したはずの、フミ子のある秘密がよみがえり……。
(映画.comより抜粋)
フミ子のその秘密とは、子どもの頃から知らない女性の記憶が宿っていたということ。
タイトルの「花まんま」とは、ツツジの花をごはんやおかずに見立てて、おままごとの弁当を作った、フミ子の思い出につながる品で、物語の重要な役割も担っていた。

その意味が分かった場面から涙があふれ、最後の結婚式シーンでの花嫁入場と、お兄さんのスピーチからは涙腺崩壊だった。
事前に用意していた言葉ではなく、兄のそのとき溢れた気持ちでの祝辞は、まるで演技を通り越していたかのように胸に迫ってきた。
結婚式シーン自体、ドキュメンタリーを観ているようだった。有村架純さんや参列者である出演者たちの表情からも、その思いが溢れていたのが伝わってきた。
早くに亡くなった両親から、妹を守るんだよと言われて、兄が妹をここまで育ててきた。それが自慢だったのだけれど、それは自分だけでの力ではなく、ここに列席している多くの方から、妹も自分も助けられ守られてきたということに気づく場面にもグッときた。
これからご覧になる方のために、あまり多くを語るのはどうかとも思うけど、もう一つの家族の気持ちもとても切なくて。
特にその家での年老いたお父さん役である酒向芳さんの、娘への愛があふれた演技とその哀愁いっぱいの表情には泣かされた。

(酒向芳さんには私から、助演男優賞を差し上げたいくらいでした。賞品は○○煎餅で^^;)
ところで、この映画を観ていて、同じく「生まれ変わり」がテーマになっていた、こちらの『月の満ち欠け』が思い浮かんだ。主演も同じく有村架純さんだったのもあって。
この作品でも、お父さん役である大泉洋さんが、自分の大切な家族に、また別の家族の記憶があるなんて信じられず、とてもやるせない気持ちになる場面が、この話での兄・俊樹の気持ちとオーバーラップして思い出された。
『花まんま』は、『月の満ち欠け』での生まれ変わりの話とは、またちょっと違うのだけれど。
終盤は、temahimeさんも書かれていいたとおり特に泣けるけれど、色々な人の優しい思いが伝わって来て、観終わって温かい気持ちに包まれるような作品だった。
ファンタスティックなシーンも、コミカルで。
舞台が大阪なので、登場人物たちの関西弁もポンポン弾むようでテンポよく感じた。
映像的に特に印象に残ったのは、スクリーンいっぱいの綺麗なツツジ。そこに佇むフミ子や、子供時代の兄弟の場面も素敵だった。

フミ子のフィアンセ(鈴鹿央士)は動物行動学の専門で、カラスと話が出来るシーンも面白かったな。

妹を思う熱血漢あふれた兄を演じた鈴木亮平さんもはまり役で、妹・さくらを思う寅さんを連想したり。
それから、特にフミ子の子供時代を演じた小野美音さんの、はっきりとした眼差しやその表情が心に残った。見たことある子だなと思ったら、NHK連ドラの『おちょやん』や『ブギウギ』に出演していたんですね。

お笑いコンビ「オール阪神・巨人」のお二人も、二人を見守る大阪の温かいおっちゃんという役柄で良かったなー。
話の終盤、フミ子の不思議な記憶が薄れていくのは寂しく感じたけれど、人は誰でも年齢と共に色々なことを忘れていったり、記憶も薄れていき、それは悲しいことでもあるけれど、笑いあった瞬間などその一瞬一瞬の輝きは確かに存在していたのだし、それはこの世からずっと消えないような気がした。