映画『名もなき者 / A COMPLETE UNKNOWN』

先週観てきた、ティモシー・シャラメ主演の、ボブ・ディランの伝記映画。
久しぶりにいい音楽映画を観た気分で、劇中流れたボブ・ディランの楽曲含めとても楽しめた。
解説・あらすじ
1961年、アメリカ・ミネソタ出身の19歳の若者ボブ・ディラン(ティモシー・シャラメ)がニューヨークに降り立つ。そこで恋人となるシルヴィ・ルッソ(エル・ファニング)、フォーク歌手ジョーン・バエズ(モニカ・バルバロ)や彼の才能を認めるピート・シーガー(エドワード・ノートン)ら先輩ミュージシャンたちとの出会いを経て、フォークミュージックシーンの中で注目を浴びるようになっていく。
監督は『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』などのジェームズ・マンゴールド。
(シネマトディより抜粋)
ボブ・ディランに興味ありなしに関わらず、音楽映画、青春物語としても楽しめる内容で、誰にでもオススメしたくなる作品だった。しかも主演はティモシー・シャラメだし!笑
といっても、今まで観たティモシー・シャラメ出演作品は、『インターステラー』『君の名前で僕を呼んで』『ストーリー・オブ・マイライフ』『レイニーディ・イン・ニューヨーク』『フレンチ・ディスパッチ』だけだと思うけど、中でも『レイニーディ・イン・ニューヨーク』での役柄が一番印象が強く残っている。
そのティモシー・シャラメ、評判通り、ディランの声・歌い方や仕草含めその佇まいがそっくりなのが、先ず初っ端からびっくりだった。
映画公開前に読んだ宣伝記事で、ティモシー・シャラメは、この映画の企画段階から関わっていて、でもコロナ禍により制作が延びてしまったため、5年近くじっくり歌やギターなどディラン研究につぎ込めたらしい。とはいえ、これほど似ているとは( ゚Д゚)
そして、フォークの女神・ジョーン・バエズ役を演じたモニカ・バルバロの歌声も、とても素晴らしくて、羨望の眼差しで聴き入ってしまった。
ミュージシャンのドキュメンタリーなど音楽映画って、上映館が少ない場合が多いけど、この作品はどこでも上映していたのも嬉しかった。
ボブ・ディランのファンってわけでもなけれど、音楽映画は結構好きで、もう20年くらい前に観た、同じくボブ・ディランのドキュメンタリー映画『ボブディランの頭の中』と『ノー・デレクション・ホーム』の二本は、都内で確か単館上映だったと思う。
もうどちらの作品もううる覚えだけれど、画面から伝わる若き日のボブ・ディランは、その目力などからもカリスマ性を感じ、とてもかっこいいなと思ったし、画面に映し出される長い歌詞の内容が、吟遊詩人と言われる所以が実感として伝わってきたのも覚えている。
そして、今回の作品でも描かれていたように、「ニューポート・フェスティバル」での事件、アコギからエレキに持ち替え歌った『ライク・ア・ローリング・ストーン』で、そのときの観客からのバッシング場面もとても印象的だった。
歌詞の内容については、今回の映画では、街角のバーで歌っていた『戦争の親玉』の和訳歌詞が特に心に残った。アメリカ60年代初頭での、ベトナム戦争やキューバ危機などの時代背景とともに。
この曲は、映像で流れたのは少しだけれど、ディランの代表曲である『風に吹かれて』よりもっと直接的で強い反戦歌だと感じた。
「戦争を仕掛けた者は豪邸の中から出てこない 血を流すのは多くの若者たちだ」というような詩だけでも、当時の若者たちの心を掴み、その代弁者だというのがよくわかった。
それから、ジョニー・キャッシュもこの映画に何度も登場していたけれど、ディランと文通するほどの仲だったとは知らなかった。
この作品の監督ジェームズ・マンゴールドは、ジョニー・キャッシュの伝記映画である『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』の監督でもあるそう。
この映画も公開当時観たけれど、主演のホアキン・フェニックスがやはりジョニー・キャッシュの曲を自身で歌っていて、熱演していたのが記憶に残っている。でも、麻薬に溺れたり暗い場面も多かったような。
観終わってシアターを出たとき、4人で観に来ていた、70代とおぼしき女性たちの会話が聞こえてきた。「どれも懐かしい曲ばかりで良かった!」とか、「猫背気味でギターを弾く姿もそっくりだったね。」とか楽しそうに話していた。青春時代から、ファンだったんだろうなー。
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絵本『かぜのでんわ』(いもとようこ・作)

一昨日の11日で、東日本大震災から14年が経ちしましたが、先週末NHKで、「風の電話 残された人々の声」という番組(再放送)を観ました。
岩手県大槌町の海を見下ろす丘に置かれた、「風の電話」という電話ボックス。
震災で会えなくなった家族や、親しかった人たちともう一度言葉を交わしたいと願う人々がここを訪れ、線の繋がっていない電話を通して会話をします。
どの人の思いや言葉も、とても身につまされました。その電話で、初めて泣くことができた父親を亡くした娘さんなど。
この電話を題材にした絵本があることを、今朝、小学校の読み聞かせで知りました。
仲間のメンバーの方が読まれたのですが、「その番組観たばかりです。」とちょっとお話したら、読み聞かせが終わった後、「この絵本、あなたに差し上げるわ。」と思いがけず下さったのでした。
読んでいると泣けてくるので、自分が「読み聞かせ」で読むかはわかりませんが…。
でも、動物たちを主人公に、動物が会えなくなった家族に、山のてっぺんに置かれた電話から電話をするという設定で、とても可愛いイラストで描かれていてほのぼのします。最後は、みんなの思いが空に届いたと分かる場面で終わります。
絵本の後書きに書かれていたのですが、実際のこの電話機の横には、
風の電話は心で話します
静かに目を閉じ、耳を澄ませてください
風の音が 又は波の音が 或いは小鳥のさえずりが
聞こえたなら あなたの思いを伝えて下さい
とあり、この電話ボックスを自身の庭に置かれた佐々木格さん(ガーデンデザイナー)が、震災前から考えていたものだそうですが、心の復興のきっかけになればと思い、実現させたそうです。

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それと、東日本大震災関連の番組でもう一つ心を打たれたのは、今週月曜夜、やはりNHKでやっていた「感想戦3月11日のマーラー(東日本大震災当日の奇跡の名演を証言で再現)」という番組。
地震の当日、都内で全てのコンサートが中止された夜、墨田区に拠点を置く、新日本フィルの定期演奏会だけが唯一「墨田トリフォニーホール」で決行され、1800席完売だったところ、来場した105人の観客の前で演奏されたマーラーの「交響曲第5番」。悲しみ、祈りが込められたこの演奏は、奇跡の名演と呼ばれているそうです。
当時のコンサートのことを、指揮者や演奏者、お客さんが振り返って証言をしていて、それぞれの思いがとても胸に響いてきました。
余震が続く中、楽団員の中には、東北の被災地に親戚がいる人もいて、心配しながらの演奏だったり。みなさん、もう二度とあのような演奏は出来ないだろうと。
イギリス人指揮者ダニエル・ハーディング氏の、「あの日は誰もが、抱えきれないほどの困難な事態に直面していました。そのようなときに、私たちには音楽があるのです。」との言葉も心に残りました。
詳しくはこちらに…