絵本『ハグくまさん』(ニコラスオールドランド・作/落合恵子・訳)
~すべての子どもたちと、忙し過ぎる大人たちへ~

森にちょっと不思議なクマがいました。
だれかに会うと、いつも抱きしめてしまうハグくまさんです。
小さな動物も、大きなヘラジカだって、どこでもハグ、誰でもハグ。ハグくまさんは何でも抱きしめてしまうのです。

中でも大好きなのは、森の木を抱きしめること。
ある日、斧を持った人間の男がやってきて、1本の木の前で立ち止まり、その木を見上げます。
それは、森で一番大きく美しい、ハグくまさんが最も好きな木だったので、この男もてっきり木を抱きしめるのかと思っていたら、何とその木に向かって斧を振りかざしました。
生まれて初めて、抱きしめたくないものに出会ってしまったハグくまさん。
驚いたハグくまさんは、怒って思わず男に飛びかかろうとしますが…(この時のハグくまさんは、怒りで凶暴な顔になっています。)
でも次の瞬間ハグくまさんは、その男をおもいっきり抱きしめたのでした。
驚いたのは男です。男は斧を放り投げ、一目散に遠くへ逃げていきました。
そのあとハグくまさんがしたことは、心をこめて、その傷ついた大きな木を抱きしめることでした。
動物たちが、大きなクマに、抱きしめられたときのびっくりした表情が面白いです。
そして、自分が大好きな木を傷つけた男に対して、ハグくまさんがとっさに取った行動には、怒りに包まれたときのヒントが隠されているようにも感じ、こちらも温かい気持ちになりました。
といっても、嫌なことをした相手に対して、なかなか大きな愛で包むことは難しいですよね。
ところで、以前観た情報番組で知ったのですが、ハグをすると、幸せホルモンが分泌されるそうですよね。精神が安定し、ストレスが軽減するとか。
自分で自分を抱きしめるセルフハグでも、心が落ち着き、十分癒しの効果を得られるそうですね。
きっと、木を切り倒そうとした男も、ハグされた癒しの効果が後から効いてきたのではと思います。
そして、ハグくまさんのように、木を抱きしめたり触れたりするだけで、気分がリフレッシュしたり、リラックス効果などがあるそうで、自然って偉大です。
この絵本は、先月図書館で読みました。
昨年も、ニコラス・オールドランドさんの絵本を紹介しましたが、この『ハグくまさん』にも、以前の本での主役・ヘラジカが登場していたので、おっ!と思いました。
*

ずっと前、お母さんのお腹の中にいたわたし。
でも今、わたしはわたしで、お母さんはお母さん。
あなたとは呼ばないけれど、お母さんもあなたの一人。

他の家族も、なくなったおばあちゃんも、あなたの一人。
一人でいるときも、私のまわりには、見えないあなたがたくさんいる。
一人のわたしと、たくさんのあなたで、わたしたち。
わたしたちは、みんなで助け合って、生きる。
人だけが、あなたじゃない。
木も草も、動物も、魚も、あなた。
わたしは一人では、生きていけない。
たくさんの「あなた」に出会って、わたしは、わたしになる。
仲の良い友だちがいても、わたしはいつか新しい誰かに会う。
あなたもいつか、新しい誰かに会う。
いろんな「あなた」に会うのが楽しみ。
でもあなたとわたしは、いつまでも友だち。
(ところどころ、抜粋しました。)
「『わたし』は一人ですが、たくさんの『あなた』に出会い、社会そのものが『あなた』の集まりです。」「人間は、自分一人では自分になれない、自分以外の人間によって自分を発見し、つくっていくことです。」という気持ちが込められた、絵本です。
長新太さんのほのぼのとした絵とともに、谷川俊太郎さんがやさしく語りかけてくれるかのようです。
冒頭の、「おかあさんも、あなたのひとり」という部分から、引き込まれました。
仲良しの友だちと喧嘩をしても、嫉妬を感じても、自分の中の様々な感情を発見し、そうやって自分が作られていく。わたしは一人のようで、実は一人ではない。
来週、小学6年の教室で読む予定です。
仲良しの友だちと中学で離れ離れになっても、いつまでも友情が続けばいいなという気持ちも込めて。
でも、大切な友人や家族であっても、「わたし」と「あなた」の間、または自分自身との、距離の取り方も大切だなと、この絵本を読んでいて感じました。
今のSNS流行りの世の中は、LINEなど便利である一方、自分以外の「あなた」と直ぐに連絡がとれてしまい、距離が近すぎるようにも感じています。