
先月感想を書いた『イライラ文学館』の編者と同じく、文学紹介者・頭木弘樹氏のエッセイ。
13年間の闘病生活からの経験を踏まえた、弱者に対する温かい眼差しが感じられた。
闘病中、カフカの言葉が救いになったそうで、カフカの言葉も本書に多く登場していた。
本と同じタイトルの章では、
「言葉にできる思いはごくわずかで、実は言葉にできないたくさんの思いの方が多い。」
と、思いを上手く言葉にできない人の方が魅力があり、理路騒然と話せる人より、つっかえながら話す人の方が好感を持てるのではないかという部分、確かに自分もそう感じるかもと共感できた。
「思わず出てしまった言葉が本心でないこと」を著者は子供時代に体験。
でも、言葉にした途端にその言葉は力を持ってしまう。
web上でも、書く前に一呼吸間を置いた方がいいとはよく言われているけど、ブログを書くにあたっても言葉の扱いは難しく感じる。
人にはどんな事情があるか分からないので、想像力が大切だという部分も心に残った。
「自分だったら、決してこういうことはしない」ということを他人がしていると、とても腹が立つけれど、そのとき「相手には特別な事情があるかも知れない」ということには、なかなか思い至らない。
「もしかすると事情があるかも」と思えば、腹も立たなければ、非難したくもなくなる。
ということを、映画館で上映中、スマホをいじっている人がいて迷惑だと聞いた例を挙げられていた。
それは、聴覚障害のある人が、「スマホで字幕ガイド/音声アプリ」を使っていたからとのこと。
こういった事情が分かると腹立たしくなくなるし、気にならなくなる。
「誰かが許せないと思うことをしたときは、このことを思い出して。」と書かれていた。
確かに映画の上映中、スマホの光が目についたりすることがあるけれど、そういう事情だったのかもと、読んで合点がいった。
著者が学生時代、8回転校をして8回性格が変わったというのは驚きだった。
あるときは暴力的だったり、物静かだったり…。そこまで極端にはなかなか変われないのではと感じた。大学3年のときから難病を罹ってしまい、そのとき大きく性格が変わったというのは理解できるのだけど。
著者が目を病んだとき、眼科で父の匂いをふと感じたという、不思議な話も興味深かった。隣に人が座った気配がして、その匂いに包まれたとき、検査前の不安や心配が柔らいだのだそう。
電子書籍は字を大きくできるので、高齢になったときや目の病のときも便利であり、また、ネット朗読もありがたいといわれていた。
YouTubeで、「えぷろん」さんという方の「吾輩は猫である」の朗読は、なんとも滋味にあふれ、何度慰められたか知れないのだそう。そして、大人になってから「読み聞かせ」をしてもらうのもいいものだと思ったのだそうだ。
私もこの本を読んでから、えぷろんさんのその朗読を聴いてみたけど、確かに味わいのある声だった。
「目で読んで良い文章と、耳で読んで良い文章とは違うということにも気づけた。」
というのも、自分も読み聞かせをしているので、なるほどと感じた。
カフカ以外にも、様々な文学のフレーズが紹介されていて、その点も興味深かった。
山田太一・脚本のドラマから引用した台詞も、色々心に残った。
山田太一原作といえば、今年『異人たちとの夏』のリメイク映画が公開されたけれど、話の設定が違っていたようなので私は観ていないのだけど、昔観たこの映画は今でも心に残っている。
孤独な主人公(風間杜夫)が、昔住んでいた浅草の路地裏にふと足を踏み入れると、かつての自分の家があり、既に亡くなっている両親が温かく迎えてくれるという話。
特に両親を演じた、片岡鶴太郎と秋吉久美子が好演していて良かった。懐かしい昭和の下町の両親という感じで。(ちょっとオカルトチックだったけど^^;)
今も同じ季節なので、山田太一さんから急に思い出してしまった。
確かに夏は、お盆もあるし、異人たちに出会ってしまいそうな季節ですよね。
子供の頃やった、肝試しとかも懐かしい。
そういえば、「現実がすべてですか?」という最終章では、
「ありえないことを考えてみることで、初めて気づける現実もある。」「言葉が飛躍的に発達したのは、ありえないことを言えるようになったとき。」と書かれていた。
ここまで1800字なので、先月読んだ絵本の紹介も少し…
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絵本『おうさまのまえでみぎむけーみぎ!』(柏原佳世子・作)



先月、小学低学年と、図書館の読み聞かせで読んだ絵本。
同じ柏原佳世子さんの『おうさまがかえってくる100びょうまえ』の続編です。
『おうさまがかえってくる100びょうまえ』は、王様が留守の間、お城を散らかし放題の家来たちが、王様が急に帰って来るその100秒前から、大慌てで部屋を片付ける様子が面白おかしく描かれています。文章はほぼ、100からの数字のカウントダウンだけですが、王様が帰って来る時間が刻々と近づいてくる感じがスリルがあり、ワクワクします。
シリーズ2作目のこちらは、王様の誕生日に向けて、家来たちがあいさつの練習をします。
リーダーが何度号令をかけても、家来たちは、右と左の区別がつかず上手くいきません。
リーダーが、右はスプーンを持つ方と教えても、右利き左利きそれぞれなのでばらばらで。困ったリーダーは「(銅像の)馬は右、花は左」という分かりやすい目印を考え、当日の誕生会を迎えるけれど…という面白いお話。
絵も大きく家来たちの表情もユニークで、まるでコントのよう。
子供たちも、右や左で迷った経験があると思うので、親しみやすい話だと思います。
私も子供の頃は左利きで、入学時にお箸と鉛筆を持つのは右に直されましたが、今でも何かのとき、とっさに左手が出たりします。

夏といえば、ひまわりですね♪