
新刊の書評を読んで、ゴリラが主人公で、そのゴリラが裁判を起こすなんて面白そうだと思い、図書館に予約して先月読んでみた。
軽い気持ちで読んでみたら、この物語は、人間の中にある、差別意識についても考えさせられる深い話だった。
カメルーンのジャングルで生まれた、ローズという名の雌ゴリラが主人公。
知能が高いローズは、母ゴリラに連れられ、ジャングル内の動物保護区にあるゴリラ研究所に通い、母親と共に手話で人間と話せるようになる。
人間の言葉を理解する賢いローズは、その後開発された、手に装着するグローブを使った音声装置で、会話も出来るようになる。
そして、アメリカの動物園で暮らすようになる。
世界的に有名になったローズのアメリカ行きは、もちろん人間たちの利権や政治的な思惑も絡んでいる。
アメリカの動物園で良き伴侶を得たローズは、ある日、人間の男の子が檻の中に落ちたことが原因で、その愛する夫を射殺されてしまう。
「夫を殺されたら警察を呼び、罪が問われなかったら裁判を起こす。それは人間の社会だったら当然のことだ。」
ローズはその場で即、警察に電話をする。
そして、ローズは裁判を起こす。
なぜ、麻酔銃を使わなかったのか。
その場面は前半に描かれ、最初の裁判はあっけなく終了してしまうのだけど、物語の核心的で面白い部分は、後半に描かれている。
人を守るためにゴリラが殺されても、誰も疑問に思わない。人間に危険が迫ったら、動物より人間の方が優先されるのは当たり前。
私も今までそのように考えていた。
最初の裁判の後、「正義は人間に支配されている。」とローズは発言する。
この物語は、実際、アメリカの動物園で、ゴリラの柵の中に小さな男の子が落ち、ゴリラが射殺され、大論争を巻き起こしたという「ハランべ事件」をモチーフに描かれているのだそう。
作品序盤、ローズたちが暮らす、神秘的な霧が立ち込める、ジャングルの描写にも惹きつけられた。
鬱蒼としたジャングルは、いつも薄暗く比較的涼しい。
漂う濃密な匂いや濃い緑、カエルや野鳥の鳴き声。
鮮やかな色の植物や生き物たち。厳しい自然。
それら全てが映像となって、脳裏に浮かんでくるようだった。
そこに暮らす、ジャングルでのゴリラの生態も興味深かった。
夜は木の上で、枝を曲げて作ったベッドで寝る。
群れのリーダーが、危険を察知したら、皆で移動する。
群れのボスである、ローズの父親が威厳を持って胸を叩く、ドラミングも目に浮かぶようだった。いやそれは、昔観た映画、『キングコング』でのドラミング場面が浮かんできたのかも知れないけれど。
群れ同士での闘争場面もあったけど、後書きに、ゴリラは本来、決して争いは好まない動物との注釈があった。
ローズは、ジャングルでのゴリラ研究所で、美しい女性研究者チェルシーや男性サム他と、家族のような関係も築いている。そのチェルシーに恋の相談もする。
物語全般を通して、そんなローズと関わりを持つ登場人物たちの描写も面白い。
手話での会話で、ローズがユーモラスな禁句用語を使ったり、クスクス笑えるような場面も多々あって。
賢いローズは、見た目はゴリラでも、読んでいると、一人の人間のように思えてくる。
ローズ自身も、自分はゴリラでもなく、人間でもなく、ゴリラと人間の間で彷徨う何かだと、自分の存在意義について悩むようになる。
でも、だからこそ自分は特別であり、自分を必要とする人達の望むように生きると、アメリカ行きを決意する。
野生の本能よりも、人間と同じような思考を持つようになったローズは、ゴリラ社会の一夫多妻制は受け入れ難く、ジャングルでの初恋に敗れたこともあっての決心だった。
ローズがアメリカでできた人間の友達、リリーとの友情やその会話も、心に残る場面が多々あった。
アメリカで暮らしている、ラッパーのリリーは韓国系なので、有色人種である自分に対するアメリカでの反応、また、韓国でも異質に見られてしまうこともあるので、リリー自身も存在証明に悩み、ローズの気持ちに共感できる。
ローズは、アメリカの動物園で、自分を見に来た人間に対して、人間には想像力があるからこそ、ゴリラの自分を見に来ているようで、実は自分の中に人間を見ていたり、見えているものが一人一人違うということに気付く。
同時に同じものを見ていても、心を通しての見え方は、それぞれ違うのだろうし、結局自分が見たいようにしか見ないものなのだろうな。
鋭い観察力のローズ。この辺りを読んで、以前動物園で、動物を見ている自分達こそ、動物達から観察されているのかもと感じたことを思い出した。
ラストでのリリーがローズに語る言葉も心に響いた。
「人間も、自分たちで見えない檻を作って、その中で窮屈な生活をしている。」
「動物があるがままに暮らせる世界って、きっと人間にとってもあるがままに暮らせる世界。」
そして物語終盤、裁判の場面でのこの言葉にも…
「多くの人がもう少し、動物の命に関心をもってくれたら、世界はもっといい場所になるだろう。」
動物や子供など、弱者に優しい世の中になれば、地球全体がもっと居心地の良い場所になるんだろうな。
クライマックス場面での、弁護士の言葉、そしてローズの弁論、それまでローズに嫌悪感を抱いていた陪審員の一人の気持ちの変化、その辺りの描写は特に胸に迫ってきた。
終盤、ローズが自分の居場所を決めた部分、こうなって欲しかったと希望通りの話の展開だったので、嬉しかった。
これからゴリラを見る目が変わりそうだ。
この物語を読みながら、昔カーペンターズのアルバムに入っていて大好きだった、『動物と子供たちの詩』という曲を思い出していた。
1971年公開の、同名映画のテーマ曲。
この映画は観てないように思うけど、この曲は当時、アフリカのサバンナに憧れていた私の、そのサバンナのイメージそのもので、聴いていると、キリンや象が歩くサバンナの地平線に、夕陽がゆっくり沈む光景がいつも脳裏に浮かんで来る。
久しぶりに聴いてみて、改めていい曲だなぁと思った。
『動物と子供達の詩』
原題は、Bless the Beasts and Children(動物と子供たちに祝福を)
動物と子供たちに祝福を
この世界で
彼らは声を上げられないのです
選択することもできません
動物と子供たちに祝福を
この世界が
彼らの望む世界になることは決してないのです
彼らが闇に包まれてしまったら
その道を照らしてあげましょう
愛をあげましょう
彼らの周りを愛で輝かせましょう
動物と子供たちに祝福を
嵐から守るシェルターを与えましょう
安全で
暖かい場所にいられるように
(和訳はこちらのサイトから引用させてもらいました。)
先日、「はてなブログ」のスマホアプリが、突然開かなくなってしまった。💦
インストールし直さないとだめなんだろうなぁ…
と思ったけど、インストール出来なかった。