
「太った豚よりも、痩せたソクラテスであれ、というけれど……、あれ、ソクラテスって太ってなかったっけ?」
哲学者・神崎繁が残した知的ユーモアあふれるエッセイ集。
(神崎繁さんは2016年に63歳で病死されたそうです。)
目次は、「人生のレシピ」「古代を読み解く」「思考のためのレシピ」と大きく三つの項目に分かれていて、徐々に難しい内容になっていた。
最初の、軽いタッチで書かれたエッセイ「人生のレシピ」での様々な章が面白く心に残った。
う~ん、なるほどなるほど、と思わせられるためになる事柄や考えが多く、そのいくつかを備忘録としてまとめておきます。
・ソクラテスは太っていたか?
それについての著者の考えは、
ソクラテスが太っていたかどうかは両方の証言があるので分からないが、冬の凍てついた戦場で素足で歩いたり、また戦友を救ったという逸話や、質素な食事に満足し、
「食事の美味しさは、料理法よりも健康による。」
とかの言動からすれば、頑健ではあってもむやみに太っていたとは考えにくい。
とのことで、また、
「ダイエット」という言葉は、ギリシャ語の「ディアイタ」が語源で、「食養生」と訳されるが、元々は「日々の暮らし」「生き方」を意味する。
ソクラテス流に言えば、身体のダイエットも大事だが、満たされない心が肥満の原因であることが多く、過度に身体を気にする前に、心のダイエットにも気を配る必要があるということだろう。
「ダイエット」の語源が「日々の暮らし」や「生き方」を意味するってところが深いなと思った。
肥満の原因は、昨年からコロナ太りって言葉も流行っているようにストレスも一因だろうけど、私もまずは心のダイエットを心がけようっと^^;
・古代ギリシャの夢占い
古代ギリシャには、「夢占い」「占星術」「鳥占い」「生贄占い」など天体の動きや生物の行動によって吉凶を占う専門家がいたらしい。
「夢占い」はごく一般的なもので、日頃から常に自分が見た夢を専門家に占ってもらい、事柄の吉凶を判断していたそうだ。
例えば、奴隷が戦争で闘うといった「比喩的な夢」は、当時戦士は市民に限られていたので、市民から見れば没落の凶兆だけれど、奴隷から見れば吉兆の夢だそうで、この辺りなるほどと感じた。
古代の夢占いは、順境でも浮かれず逆境でも絶望しない、行動の指針を与えるものだったそうだけど、それは現代でも当てはまると思った。
占いは、当たるも八卦当たらぬも八卦といわれているように、私も朝のテレビ占いでも、悪い時も気にせずその点に気を付ける指針にしているので。
といっても、昼になればその内容もすっかり忘れているのだけど(笑)
以前、占いの学校に通った経験のある仕事仲間に、手相やタロット・占星術等々色々あるなかで何が一番当たると思うか訊いたところ、その友達は「四柱推命」だと答えていた。
夢といえば、私が昔からたまに見る焦っている内容で印象的な夢といえば、学校や仕事先へ行くのにどうしてもたどり着けず時間に間に合わなかったり、車の運転が出来ないのに、運転しなければならない状況に追い込まれたりなどの夢だ。
夢占いでは、これは何を意味するのだろう…
今度自分で調べてみよう^^;
・一日の中にも人生の春秋がある
「青春」という言葉には更に、「朱夏・白秋・玄冬」と続く言葉があることはあまり知られていない。これは中国古来の五行思想に由来し、万物を構成する五つの要素である木・火・土・金・水に対応して、方角や季節などを五つに分けたものである。
色も、青・赤・黄・白・黒 に分けられ、それに季節の名を付して、人生の時もまた「青春・朱(=赤)夏・白秋・玄(=黒)冬」に区分される。季節にはもう一つ「土用(色では黄色)」があって、これで「五行」。
こうした東洋の伝統思想に対応するのは、西欧では哲学よりもむしろヒポクラテスの医学的考え。
ヒポクラテスは、人体を流れる体液を、血液、黄疸汁、黒胆汁、粘液の四つに分類し、冬には冷たい粘液が優勢であるが、春になると血液が増加、夏には黄疸汁が増え、秋には黒胆汁が優勢になると考えた。
秋になると何やら物悲しいのはそのためであり、黒胆汁は「メランコレー」と呼ばれ、メランコリー(憂鬱)の語源である。
このように五行説にせよ、四行素説にせよ、東西の古来の知恵は、人間に起こるさまざまな現象を孤立したものとは見ず、宇宙に起こる出来事の循環的構造と結びつけて考えて来た。
夜明けから黄昏に至る一日の刻々の移り行きもまた、1年の春から冬への四季の巡りに、そして、赤ん坊から老年に至る人生の工程になぞらえられる。
ローマ時代の哲学者セネカは、長い人生をあたかも一日しかないかのように大切に、逆にまた、一日を一つの人生であるかの様に丁寧に生きることの重要性を説いた。
このエッセイの中で一番心に残ったのが、この「一日の中にも人生の春秋がある」だ。一日を人生であるかのように丁寧に生きるって気持ち、最近特によく分かる。
私も明日は何が起こるか分からないから、一日一日を大切に生きようって一年前辺りから特に強く思うようになって来た。
やれることはなるべく、出来るうちに今のうちにやってしまおうというか。
いつかと言っていると、そのいつかは来ないとよく言われているように。
そして、人間に起こるさまざまな現象と宇宙に起こる出来事と結び付けて考えることは、「占星術」に限ったことではなく、古来からの知恵だったということを改めて知った。
人間の脳内細胞と宇宙は似ているという話や、人間の中に宇宙があるとか、宇宙(自然)の摂理が人体に大きく影響を及ぼしているとかの話は、最近でも聞いたことがあるけれど、改めてみな繋がっているんだと感じた。
「ピタゴラスの定理(三平方の定理)がピタゴラスが発見者ではないらしい。」との記述にびっくりだった。「ピタゴラスの定理」というからには、ピタゴラス自身が発見したのかと思っていた。
でも、「ピタゴラスは天体の運動がまるで和音のハーモニーに聞こえた。だから、確かに数の比例への神秘的直観を持っていたのであろう」とあった。
天体の運動が和音のハーモニーに聞こえただなんて、何かロマンチックで素敵だなぁ。
ピタゴラスと言えば、表紙の絵にあるピタゴラスのカップは、著者がかつてギリシャ旅行をした時に持ち帰ったものだそうだ。
たくさん飲みたいと、このカップに溢れんばかりに注ぐと、ワインは一滴も残らず流れ出して飲むことが出来ない。
それは、欲望を全部満たそうとするならば、何も手にすることが出来ないことを教えてくれるという意味だそう。
他にも、「プラトン流飲酒教育」「風の教え」「笑う哲学者と泣く哲学者」「かたちと色」「市民と合唱」等など、人生レシピでは興味深い話が満載だった。
昨年10月に刊行されたこちらの本は、ソクラテスやプラトンなども出て来る面白そうなエッセイだったので、図書館から借りて読んでみた。
日本語ボランティアで担当している、プラトンが好きなアメリカ人女性との雑談時にも役立つかなと思ったので。
特に、プラトンの師であるソクラテスが太っていたかどうか、なんて話は興味ありそうな気がする。
古代の夜空に思いを馳せるような、ロマンチックな部分もある素敵なエッセイだったので、今夜は最後にお馴染みのこの曲を♪
『ムーンリバー』
『ムーンリバー』といえばオードリー・ヘップバーン主演『ティファニーで朝食を』の主題歌で、こちらもとても素敵なシーンだった。
またオードリー・ヘプバーンといえば、最後の出演作だった、スピルバーグ監督の『オールウェイズ』もとても好きな忘れられない映画だったな。
まだレンタルビデオを頻繁に借りていた頃に観たのだけど、この作品でのオードリーヘップバーンは天使の役だったっけ。
『ムーンリバー』は他にも色々なアーティストがカバーしていたようだけど、こちらのエリック・クラプトン&ジェフ・ベック共演映像も素敵です♪