
前波吉継(まえば よしつぐ)は、越前朝倉氏の重臣から織田信長の越前守護代へと転身した戦国武将です。
朝倉氏の直臣筆頭の名門出身ながら主家を裏切り、守護代の地位を織田信長から授かるものの、わずか1年で一揆により命を落としました。
ゲームの「信長の野望」シリーズでも必ず登場しますが、その経歴を知ったほうが、戦国時代を駆け抜けた一人の武将としてイメージしやすいでしょう。
そこで本記事では、大河ドラマやゲームの「信長の野望」シリーズの話も交えながら、前波吉継の生涯や魅力を解説します。
前波吉継の出自・功績・逸話
前波吉継は、越前朝倉氏の重臣・前波景定の次男として生まれながら、主家を裏切って織田信長に仕えた戦国武将です。
| 名前(読み方) | 前波吉継(まえば よしつぐ) |
|---|---|
| 別名/渾名/二つ名 | 九郎兵衛尉、桂田長俊(かつらだ ながとし)、播磨守 |
| 生年 | 大永4年(1524年)※諸説あり |
| 没年 | 天正2年1月19日(1574年2月10日) |
| 父 | 前波景定 |
| 母 | 不詳 |
| 兄弟姉妹 | 前波景当 |
| 妻 | 不詳 |
| 子 | 新七郎 |
以降では、前波吉継の生涯や功績を詳しく見ていきましょう。
出自
前波吉継は、朝倉氏の直臣中筆頭の家柄である前波氏の出身です。
前波氏は越前国一乗谷付近の前波村を本拠とした地侍で、朝倉氏から絶大な信頼を得ていました。
その信頼の証として、前波氏は朝倉氏の通字である「景」の字を用いることを許されるほどの家柄。
また、父の前波景定(かげさだ)は朝倉氏に仕え、一乗谷の奉行人として政務を担当していました。
吉継は、この景定の次男として生まれましたが、生年には大永4年(1524年)説と天文10年(1541年)説があります。
永禄8年(1565年)頃に父が亡くなると、前波家の家督を継いだのは兄の景当(かげまさ)。
兄・景当は朝倉家の年寄衆筆頭を務め、永禄11年(1568年)には足利義昭が一乗谷を訪問した際に接待役を担当するほどの重臣でした。
景当て
しかし元亀元年(1570年)11月26日、堅田の戦いで兄が戦死したため、吉継が前波家の当主となります。
家族や親類
前波吉継の妻については、史料に詳しい記録が残されていません。
嫡男の新七郎は、後述する富田長繁の叛乱時、祖母や母とともに一揆勢に捕らえられ、殺害されています(天正2年(1574年)1月20日)。
一方、兄・景当の子である前波勝秀は、朝倉氏滅亡の混乱を生き延びています。
勝秀は後に豊臣秀吉の御咄衆として仕え、さらに徳川家康にも仕えて元和6年(1620年)まで生きました。
このように前波一族では、主家を裏切った吉継の系統は断絶し、忠義を貫いた景当の系統が存続したのです。
内政や合戦での功績
前波吉継は朝倉義景に仕え、奉行衆として一乗谷の政務を担当していました。
元亀元年(1570年)6月の姉川の戦いでは、朝倉軍の一員として織田・徳川連合軍と戦っています。
ところが元亀3年(1572年)8月。
近江国で朝倉軍が織田軍と対陣している最中、吉継は突如として行動を起こしました。
富田長繁、毛屋猪介、戸田与次郎らとともに、白昼堂々と織田信長の陣に駆け込んで降伏したのです。
さらに天正元年(1573年)8月の朝倉攻めでは、吉継は織田軍の越前案内役を務めました。
その結果、土地の地理に詳しい吉継の道案内により、朝倉氏は滅亡へと追い込まれます。
この功績により、信長から越前守護代に任命され、さらに信長の「長」の字を賜って桂田長俊(かつらだながとし)と改名しました。
信長への忠誠を示すため、吉継は駿馬「一段ノ早道」を献上するなど、新しい主君との関係構築に努めています。
晩年と最期
桂田長俊と改名した直後、吉継は眼病を患い失明してしまいます。
『朝倉記』では、この失明を「神明ノ御罰也」と記しており、主家を裏切った報いと見なされました。
また、守護代となった吉継は、越前で圧政を行い、旧朝倉家臣や領民から強い反感を買います。
特に、同じく朝倉氏から織田氏に寝返った富田長繁との対立は深刻でした。
天正2年(1574年)1月、富田長繁は吉継の悪政に苦しむ民衆を扇動し、3万3千人規模の土一揆を起こしたのです。
1月19日、一揆勢は一乗谷の吉継を攻め、衆寡敵せず吉継は討死。
大永4年生まれだとすれば、享年は51歳でした。
『信長公記』は吉継の死を「大国の守護代として栄耀栄華に誇り、恣に働き、後輩に対しても無礼であった報い」と手厳しい評を残しています。
ちなみに翌20日には、逃亡を図った吉継の母、妻、嫡男の新七郎も捕らえられて殺害されます。
前波吉継の直系は完全に断絶した一方で、前述のとおり兄・景当の系統は後世まで続きました。
主家を裏切った者と忠義を貫いた者、その子孫の運命が明暗を分けたのは、まさに因果応報というべき皮肉な結果となったのです。
押さえておきたいエピソード
前波吉継にまつわる逸話は、以下を押さえておくといいでしょう。
- 朝倉氏の直臣筆頭の名門・前波氏の出身ながら、白昼堂々と敵陣に駆け込んで主家を裏切った
- 寝返りの理由は「義景の鷹狩りで遅参し、下馬せずに前を通って勘当された」「嫡男が織田方への内通を疑われた」など諸説ある
- 織田信長から偏諱を受けて桂田長俊と改名した
- 失明と一揆による最期は「朝倉義景の祟り」と噂され、『朝倉記』にも記録が残る
- 前波吉継と富田長繁との対立が越前一向一揆の引き金となり、その結果越前は一時的に「一揆持ち」の国となった
ほかにも興味深いエピソードがあれば教えていただきたくっ!
信長の野望シリーズでの前波吉継
「信長の野望」シリーズといえば、戦国時代のシミュレーションゲームでおなじみです。
ここでは、「信長の野望」シリーズのなかでもおすすめのタイトルで、前波吉継の能力がどのように設定されているのかを見ていきましょう。

タイトル別能力
前波吉継の各タイトルでの能力値は以下で設定されています。
| タイトル | 政治 | 知略 | 武勇 | 統率 |
|---|---|---|---|---|
| 信長の野望・創造PK | 54 | 63 | 38 | 26 |
| 信長の野望・創造 戦国立志伝 | 54 | 63 | 38 | 26 |
| 信長の野望・大志 | 内政54 外政58 |
63 | 38 | 29 |
| 信長の野望・新生 | 58 | 68 | 43 | 34 |
タイトルごとの所持戦法や特性は以下のとおりです。
| タイトル | 戦法 | 特性・個性 | 志 | 奉行特性 |
|---|---|---|---|---|
| 信長の野望・創造PK | 叱咤 |
|
- | - |
| 信長の野望・創造 戦国立志伝 | 叱咤 |
|
- | - |
| 信長の野望・大志 | 足止め 補佐:回避 |
|
所領拡大 | - |
| 信長の野望・新生 | 治療 |
|
- | 楽市奉行 (楽市楽座) |
ゲーム内で向いている役割

「信長の野望」シリーズでは、政治が50台、知略が60台で、武勇と統率は低め。
越前朝倉氏に仕えていた時代は、奉行人を務めていたこと、主家を裏切った点が、ステータスに反映されているようです。
軍事面での活躍は記録上残っておらず、富田長繁の叛乱時もあっさりと(?)敗れていることから、武勇・統率はあまり評価されていないのでしょう。
特性・個性も、内政や調略向きのものが設定されています。
「信長の野望・新生」では、戦法が治療(兵力回復)、特性が修繕(所属城の耐久自然回復量上昇)持ちなので、意外に城主向きに設定されています。
※ただし治療はクールタイムが長く、回復量が少なめ。
家臣が少ない時期に城を任せる武将がない場合以外、前線から離れた地での城主を任せるのが良さそうです。
それ以外の場合、大名の側近や本領の代官、あるいは城主の補佐的役割としておくのが無難。

何気に修繕特性はありがたいので、早めに城の修繕を進めたいケースで、前波吉継や山崎吉家などの修繕持ちで固めるといいです。
※修繕レベル5になれば、回復量が通常の2.5割増しになる。
もし前線(戦場に駆り出される範囲にある城)の城主に据える場合、軍事面に優れた家臣を付けてあげないと、削られるだけの部隊になってしまうので注意しましょう。
「信長の野望・創造 戦国立志伝」で家臣プレイから越前を支配する大名に成りあがるのもおもしろいですが、軍事が弱いのでちょっと苦労します。
個人的には、仕える家臣の総合力で楽しめる、「信長の野望・大志」や「信長の野望・新生」で前波吉継を重宝するほうがおすすめです。
朝倉義景に姫が生まれたら前波吉継に嫁がせ、家督を譲るのもアリといえばアリ!
前波吉継プレイにおすすめのタイトル
前波吉継プレイにおすすめの「信長の野望」シリーズは、以下4つのタイトルです。
それぞれでおすすめポイントが異なるので、プレイスタイルに合うものを選びましょう!
| タイトル | おすすめポイント |
|---|---|
| 信長の野望・創造PK |
|
| 信長の野望・創造 戦国立志伝 |
|
| 信長の野望・大志 |
|
| 信長の野望・新生 |
|
「信長の野望・創造 戦国立志伝」以外のタイトルの場合、大名プレイをするには以下どちらの方法が必要な点に注意してください。
前波吉継が登場する小説・書籍・アニメなど
続いて、各メディア作品で前波吉継に関するものをピックアップしておきます。
前波吉継が主人公の作品はありませんが、越前に混乱を巻き起こした張本人でもあるため、何気に登場する作品があります。
興味がある書籍や作品があればぜひ!
登場する小説
- 『酔象の流儀 朝倉盛衰記』 2018年 赤神諒
前波吉継と山崎吉家の複雑な関係性が物語の核となる、骨太な歴史小説。朝倉義景に冷遇された前波吉継の苦悩と裏切りまで、その心理描写が秀逸です。主人公同然の存在感を放っています。越前朝倉氏に興味が傾く必読の一冊です!
リンク - 『くるい咲き 越前狂乱』 2018年 大塚卓嗣
越前の混乱期を活写した迫力満点の歴史小説。前波吉継が桂田長俊として権力を握り、そして滅びゆく過程を緊迫感たっぷりに描いており、戦国時代の無常を感じさせる傑作です。
リンク
登場するマンガ
- 『信長の忍び』 2008年~連載中 重野なおき
コメディタッチながら歴史考証がしっかりした人気作品。前波吉継は、守護代就任が描かれる1コマがあります。楽しみながら歴史を学べる良作マンガなので、一度手に取ってみてほしいです。アニメ版は刀根坂の戦いや朝倉氏滅亡の前で終わっているため、前波吉継の出番はありませんが、アニメから入る方がわかりやすい人はアニメ版もぜひ!
リンク
前波吉継の関連書籍
- 『朝倉氏と戦国村一乗谷(読みなおす日本史)』 2017年 松原信之
朝倉氏研究の第一人者が一次史料を駆使して描く決定版。越前朝倉氏の実態が、詳細に分析され、戦国大名の統治機構を知る上で欠かせない一冊です。
リンク - 朝倉氏の城郭と合戦 2020年 佐伯哲也
朝倉氏のお城や合戦を図で解説するシリーズ。縄張り図や遺構写真、地図などの豊富な図版とともに朝倉氏一族と家臣の城郭51城を収録した専門書です。お城好きにおすすめの一冊!
リンク - 『春風亭昇太と語る一乗谷朝倉氏遺跡』 2025年 福井県立一乗谷朝倉氏遺跡博物館(編)
前波吉継が仕えた朝倉氏の本拠地、一乗谷朝倉氏遺跡の最新研究成果を収録しています。遺跡の名誉お屋形さま・春風亭昇太師匠の語りと博物館学芸員らの裏話で、一乗谷の魅力を分かりやすく紹介しています!
リンク
大河ドラマでの前波吉継
前波吉継は、いままでNHK大河ドラマに登場したことはありません。
朝倉氏や越前が物語の中心となる大河ドラマが、これまで制作されていないことが要因でしょう。
今後、織田信長の越前侵攻や朝倉氏滅亡が、物語の重要な場面として扱われる作品があれば、前波吉継も登場する可能性があります。
実は、『麒麟がくる』(2020年)は明智光秀が主人公で、一時越前に赴いていた時期が描かれ、登場チャンスがありました。
しかし、残念ながら朝倉氏の家臣は山崎吉家と朝倉景鏡以外配役なしという結果に…。
朝倉氏の衰退や越前のその後の状況をどう扱うかは、その作品にとって意味がある場合に限られるのではないかと思います。
そういう意味では、脚本家の考え方や創意工夫も影響してくるため、越前が舞台として登場すればいいってものでもありませんよね。
はたして、2026年の『豊臣兄弟!』では前波吉継が登場するのかどうか。
ゆかりの地:前波吉継と歴史を感じる場所
前波吉継のゆかりの地を紹介します。
一乗谷朝倉氏遺跡(福井県福井市)
一乗谷朝倉氏遺跡は、前波吉継が奉行衆として朝倉義景に仕えた本拠地です。
福井県福井市城戸ノ内町にあり、特別史跡・特別名勝・重要文化財の三重指定を受けた貴重な遺跡群となっています。
前波吉継は、天正2年(1574年)まで越前守護代として、この地に居住していました。
現在は復元された戦国時代の町並みや朝倉氏遺跡博物館があり、当時の様子を体感できます。
JR越美北線一乗谷駅から徒歩15分、福井駅からは朝倉・永平寺直行バスでアクセス可能です。
福井県立一乗谷朝倉氏遺跡博物館(福井県福井市)
一乗谷朝倉氏遺跡博物館は、福井県福井市安波賀中島町にある、2022年10月に開館した朝倉氏専門の県立博物館です。
朝倉氏の歴史を総合的に学べる施設で、最新の研究成果に基づく展示が充実し、朝倉氏の統治機構を理解するのに役立つでしょう。
一乗谷朝倉氏遺跡に隣接しているため、遺跡見学と合わせて訪れるのがおすすめです。
JR越美北線一乗谷駅から徒歩7分と、アクセスも良好です。
龍門寺城跡(福井県越前市)
龍門寺城跡は、福井県越前市本町にある寺院境内の城跡で、前波吉継を打倒する一揆の中心地となった場所です。
前波吉継を敵視した富田長繁が、ここを拠点として3万3千の一揆勢を集めました。
天正2年(1574年)1月、前波吉継はこの地から押し寄せた一揆勢により、一乗谷で討たれます。
現在は堀跡の痕跡や城郭の土塁が残り、1588年に龍門寺として再建されました。
ハピラインふくい武生駅から徒歩12分。
戦国時代の紛争の舞台を訪れてみてください。
前波吉継の生涯と功績まとめ
朝倉氏の名門・前波氏に生まれ、越前守護代まで上り詰めた前波吉継。
しかし主家への裏切りと引き換えに得た栄達は、わずか1年で終焉を迎えました。
失明と一揆による最期は「朝倉義景の祟り」と噂され、因果応報を体現した人物とも言えます。
戦国時代の下剋上の風潮を象徴する一方で、その末路は後世への教訓となっているのかもしれませんね。
前波吉継は、ゲーム「信長の野望」シリーズで登場する常連武将です。
因果応報な人生を送ったといえ、激動の戦乱期を生き残るため、知力を尽くしたことは間違いありません。
「信長の野望」シリーズで見かけたら、ぜひ重用してあげてください!
また、ゲーミングPCのサイト「ツクモル?」で「信長の野望 新生」のプレイにおすすめのゲーミングPCを紹介しています。
最新の「信長の野望」シリーズは、グラボ必須になっているので、ゲーミングPCの購入を検討している人は参考にしてみてください。
では今回はこの辺で。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
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