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侍タイムスリッパー

なんでこんなに考え続けているか、と考えて、シンプルに面白いからだ、と思った。シンプルに面白い、それはすごいことだ。

実際、例えばその映画の広がり方や、創意工夫、また、スクリーンにかかるまでの熱量やそこにあるドラマなど、この映画の「魅力」はたくさんある。あるのだけど、でも突き詰めればまず第一に面白かった、なのだ。

 

ところで、私には大好きな映画館がある。
兵庫県尼崎市に昔からある塚口サンサン劇場という映画館で、エプロンでも来れる映画館、というキャッチーな言葉がとても似合う。オレンジを基調とした可愛らしい映画館は映画好きはもちろん、地元の人たちにも愛されている。
特定のジャンルに強い映画館のように見えるが、数年通った私は思う。特定のジャンル、ではなくて、全ての映画をこの映画館やそこにいる人たちは愛している。だから、塚口サンサン劇場は強いのだ。

 

そして、今回私は「侍タイムスリッパー」をその塚口サンサン劇場で観た。おかげさまでもう少し近場の映画館でも上映があったが、どうしても私はこの映画館で観たかった。


「侍タイムスリッパー」を観ようと足を運んだ休日の昼間。映画館のロビーにはたくさんの人がいた。
中でも私が嬉しかったのは「久しぶりに映画館に来た」という会話や空気を味わえたことだった。どこか落ち着かない、そわそわした空気。
小声で囁かれる会話が心地いい。
言葉にしないお約束が通じる「内輪」の、それこそ映画好きが集まる上映回も好きだけど、私はこういう時の映画館も大好きだ。
新鮮にスクリーンの向こうに心を揺らし、驚き、笑って、最後は夢中になって息を飲む。
そんな空気を、この映画館は私の知る中でも1番味わえるのだ。


そんな私の期待通り、その日の塚口サンサン劇場もよく笑い声で揺れ、息を飲んで、最後はみんな、あの景色の中にいたように思う。
その経験含めて最高だったな、と振り返ってふと思うのだ。

 

映画が好きな人も久しぶりに観た人も考察したい人もただただ受け取りたい人も。みんなが揃って楽しんでいた。その光景が本当に嬉しかった。し、それは、まるで、あの映画と地続きじゃないか。

 


侍タイムスリッパーは、コメディだ。
笑いどころもたくさんあって、劇場ではたくさんの笑い声が起こる。スクリーンの中の出来事は全部虚構だけど、それをみんな喜んで、笑って、楽しむ。
それは、劇中、初めて時代劇に触れた時の高坂新左衛門の気持ちと一緒だった。
息を飲んで夢中になり、怒り、笑う。時には、涙を流す。


高坂は幕末の藩士だ。会津の武士で、剣道を嗜み、論語も諳んじることもできて、振る舞いもとても紳士だ。
なんだかんだと現代に彼が馴染んだのは、きっとその人柄の良さもあるだろう。
そしてその彼が、同じように、スクリーンの前、虚構を愛して、映画を愛している私たちと同じように心を動かす。もうそんなの、高坂に夢中になってしまうに決まってるのだ。
劇中で、彼を助けてくれる色んな人たちのことを「ご都合主義だ」と感じなかったのもそこで、彼の真っ直ぐさや優しさは思わず手を差し伸べたくなるところがあった。

 

救われた、と彼は言う。
時代劇を見て、そこにある人の営みに「救われた」と彼は言った。その言葉に、私は救われた気がした。

 

彼は、幕末の世から時代劇の撮影所へと辿り着いた。危うい言葉ではあるけれど、「終わりかねない」時代に、図らずも彼はまた立ち向かうことになる。
そこで彼は、終わりを止める、とかではなく、ただ、ただただ、その時を生きる。
大義や、自分の人生の意味ではなくただ真っ直ぐに自分の信じた、自分が出来ることを精一杯やる。
終わるとか終わらないとかじゃないのだ。大義だとかでもないのだ。ただ、彼が、信じた、「こうせざるを得ない」中で、彼はもがく。

 

そこには何も出来ないまま、「終わってしまった」時代への後悔でもあるように思うし、自分が何をすべきなのか、を問いかけ続けた姿みたいにも思った。いずれにせよ、私たちはそのスクリーンの向こう側の光景に夢中になって真剣に見つめてしまった。
気がつけば、同じところで、私は生きた、そんな気すらしていた。

 

最後、あるシーン。
ああ、きっと、監督やスタッフ、役者たちは「伝わる」と思ってくれたんだな、と思ってしまった。真剣に息を飲みながら、どこか頭の片隅で物語とはまた別軸に、感動した。
このシーンが「伝わる」と思ってくれた。それだけの時間の積み重ねだった、という自信と愛がそこにあった。

 

 

最初から最後まで全力で、映画の世界を楽しんだ。映画館全体があの撮影所にいた、そんなような気がした。
そうして、最後の最後、スクロールが流れる。
そこに、たくさん、あの作中に見た人たちがいた。演者もスタッフもみんなまぜこぜで、みんなで映画を作っていた。
それは、まるでこの映画の物語そのもののような気がした。映画を作って、届ける。それが、こうして広がっていく。
ああほんとに、すごい。しっかりとコメディで愛にあふれた、本当に幸せな映画だった。

 


主人公に特化した感想を「つくのラジオごっこ」で一人喋りしたりしました。声が完全に嗄れててお聞き苦しいですが、それでも語りたくて仕方ない、勢いだけは伝わる気がします。
15分弱の短い音声なので、よければ。




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