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川崎重工、空港でロボットを活用した自動PCR検査サービス

2020年10月22日 発表

PCR検査ロボットシステム

 川崎重工業は、PCR検査ロボットシステムを開発し、空港で自動PCR検査サービスを開始すると発表した。

 同社では、メディカロイド、シスメックスとともに、新型コロナウイルスなどへの感染リスクを伴う工程をロボットで無人化・自動化するシステムを開発。医療従事者の安全を守るとともに、検体受付から病院との連携による検査結果通知まで80分以内で行なえるようにした。

 同サービスは、検査システムをトレーラーに積載できる40フィートコンテナ(2.5×12m)にパッケージ化し、必要に応じて移動させられるようになっている。処理能力は、1コンテナあたり2000検体/16時間とされている。汎用ロボットを利用しており、工程変更が可能で、新型コロナウイルス以外にもインフルエンザなど、さまざまな感染症対策にも活用できるという。

 ロボットによる自動化のメリットとしては、時間の短縮以外にも検査コストの低減も図れることだという。現状、民間のPCR検査の個人負担額は数万円となっているが、同システムでは約1万円まで下げられる見込み。

社長直轄プロジェクト推進室 室長の辻浩敏氏

 同社 社長直轄プロジェクト推進室 室長の辻浩敏氏によれば、成田、羽田、関空の3つの国際空港を中心に導入に向けての調整を進めており、早ければ年明けにも導入される見通し。

 ロボットシステムの販売ではなく、同社自身にPCR検査サービスを提供する形にしたことについて、同氏は「全社で取り組むべき社会的課題と位置づけ、グループ内を横断する社長直轄プロジェクトとして今年度初頭から取り組んできた。コストの面で導入に二の足を踏む空港会社もいるため、きちんとしたサービスまで含めて対応することが航空のトラフィックの回復には大きく寄与できるのではないかと考えている」と説明している。

空港での活用を想定したデモ

 今回公開されたデモでは、実際に空港に導入し、使用する流れが披露された。

 旅行者は、受付で容器を受け取り、自身で唾液を採取し、容器を返すだけ。検査結果が出ると、スマートフォンに通知が届き、陰性であれば陰性証明書が発行され、出国可能となる。

受付で容器を受け取る
自分で検体採取
検査結果を確認し、陰性証明書を受け取る
スマートフォンで受け取る陰性証明書のイメージ

 辻氏によれば、受付から陰性証明を受け取るまでにかかる時間は2時間を目標にしており、一般的な国際線搭乗時の空港滞在時間と大差ない形にしたいという。

 陰性でないとされた場合は、所定の手順に則って同社が事前に調整した提携病院に移動することになる。移動にかかる費用についても、同社が搬送に対応できるタクシー会社と契約し、全体の検査費用の中に盛り込むことで、料金を不要にするとしている。

 また、今回のシステムは空港での使用を念頭に開発されたものだが、オリンピックのような大規模イベントへの活用も期待されている。ただし、海外へのビジネス渡航という場面では1万円でも受け入れられるが、スポーツ観戦ではさらに安価に運用できるようにする必要があるため、検討すべき課題は残されている。

複数のロボットアームにより自動化された検査工程
現在主流の検査システムでは96検体をまとめて処理するが、8検体ごとに分けて処理することで加熱冷却を繰り返す工程の時間短縮を図っている
病院側で医師が確認する画面
空港を想定した自動PCR検査サービスのデモ

遠隔操作で鼻腔検体採取できるロボットも開発中

 このほか同社では、鼻腔検体採取を医療関係者が遠隔操作で行なえるロボットも開発中。

鼻腔検体採取ロボットも開発中

 PCR検査においては唾液検査も容認されつつあるが、鼻腔から検体を採取する方法が精度が高いとされており、国によって基準が異なることもあり、鼻腔検体採取の効率化も求められる。

 同社が開発している遠隔操作ロボットでは、対面での採取を不要とすることで安全性を高めつつ、スワブスティックを鼻に入れる以外の作業を自動化することで効率を高められる。

 1人の検査に医療関係者が携わる時間を15秒程度に短縮できるため、複数台のロボットを活用することで、人力のみで対応する場合と比べ、多くの被検者をさばけるようになる。また、多くの医療関係者を空港に待機させる必要もなくなるという。

 こちらは医療行為に該当するため、厚生労働省の認証が必要で、導入に至るのは早くても年度末となるとされている。