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高橋洋一「さらば財務省! 官僚すべてを敵にした男の告白」

すべての道はローマに通ず

 小泉政権による郵政民営化、政策金融改革、歳出・歳入一体改革という、「小さな政府」の実現に向けた一里塚となる一連の改革について、実際に制度設計の最前線にいた著者の証言。これらの改革は、著者が橋本政権下において関わった財投改革からの必然の流れであったということが、ロジカルに説明されている。また、その過程において、現在の官僚制度の中に内在する問題が浮かび上がる。これらは、小泉以降の政権で取り組まれる公務員制度改革の意義、正当性を主張するものにもなっている。*1特別会計の資産負債差額の計算によって明らかとなったいわゆる「埋蔵金」の存在は、著者が最初に指摘したものとされているが、そのことについても本書は若干ながら触れている。
 ただし、政策の当事者による証言であるだけに、具体的な議論の過程などが捨象されている可能性もある。例えば、清水真人「経済財政戦記 官邸主導 小泉から安倍へ」では、経済財政諮問会議におけるやり取りがリアルに描かれ、臨場感に溢れているが、本書の記述はあくまでロジカルであり、全ての改革は歴史の必然であって、それに反対する者にとっては「取り付く島がない」ようにみえることだろう。読後感としては、小綺麗なロジックの「裏側」で行き場を失ったリアルな現実があるであろうことに、意識を向けせざるを得ない。

 なお、本書に指摘されている、将来あるべき姿とされる公務員(、民間企業)の人事の仕組みには、ある種の経済談義にみられる原理主義的な「平板さ」を拭いきれない面があるようにも思われる。著者は本書の冒頭で、「現在の財務省を始めとする霞ヶ関に働く人々は、個人としての能力は高いかも知れないが、組織としては、まさに幼稚*2な集団である」と指摘するが、果たして本当にそうだろうか。自分の周囲の限られた人間関係を前提にすると、官僚(民間企業の従業員にも妥当する)は、個々人の見識に限りがあるにも拘わらず、それがチームとして行動するときに大きな力を発揮し、そこに力の源泉がある気がするのだが。自分の思い違いだろうか。

*1:この点について言えば、筆者は、現在においても何らかの形で公務員制度改革に関与しているであろうことが想像される。だとすれば、本書が以下に述べるようなスタイルをとっている意味合いも微かに見えてくる。本書は、政策を実現しようとする立場にある者が、その立場から著述したものであり、「ポジショントーク」という評価も、あながち否定し切れるものではないように思われる。

*2:何が一番大事なことかわからないこと(福田和也)。




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