年末進行ですね~~(雑な導入)
今年はなんか印象的な邦題(っていうか邦題まわりの印象的な話題)が多かったな~と思ったのでまとめてみました。※個人の意見です!!当たり前!!
順番に意図は無く(無いのかよ)、思いついた順になっております。
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まずはこちら、しみじみと良かったタイ映画2本!タイの映画、単館系でときどきスマッシュヒットを飛ばしている印象があるが、個人的にはほぼ観たことなかったエリアです。円安が進行し外国映画の買い付け単価が高騰しつつある中、比較的お買い得なのがタイ映画なのだそうで……へえ。たぶん監督とか俳優の名前で客を呼べるジャンルではないので、邦題も宣伝も担当者の創意工夫が垣間見えて頭が下がります。
『おばあちゃんと僕の約束』(原題:Lahn Mah)
こちら、タイトルとしてはまあ平凡なんですが、一般向け試写会で邦題を募集する、という斬新な企画により決定された邦題です!すごい、そんなの聞いたことない…。割と穏当かつ内容に沿った邦題で良いですね。原題の意味は「金持ち」で、公式SNSアカウント名を仮タイトルの「金持ち」にしていたらトラブルで変更できなくなって焦っていて気の毒だった(が、まあまあ笑ったし、鑑賞後に「金持ち」で固定されなくて良かったねえ…と思いました)。タイの世代間ギャップとか細やかな生活習慣の描写とか、みどころも色々あって良い映画でした!
『親友かよ』(原題:Not Friends)
これ、この原題をこういう訳し方するのセンス良いですよね!!普通に(?)考えるともうカタカナで「ノット・フレンズ」のままにするか、なんかふわっとしたサブタイトル(←悪口)でしのぐか、にすると思うんですけど、この短くて覚えやすく、かつ分かりやすいのに意図が掴みにくいのでフックになる、良いバランスの邦題!しかし今さら気付いたけど原題は複数形なんだね…ということは??誰視点のタイトルなんだ??
急逝したクラスメイトを偲ぶため(という建前で割と自分のために)、彼の遺した小説を原作とした映画を撮ろうと奮闘するが…、という話で、手作り感あふれる撮影のプロセスや人を巻き込んでどんどんプロジェクトが大きくなっていく様子(そのことにあまり臆してない主人公は映画監督の才能があると思う)がテンポよく描かれ、また「映画を撮る」とはどういうことか、現実の人生とどうつながっていくのか、みたいな話までやっていて面白かったです。高校生活の機微みたいなのがけっこうリアルでちょっと古傷が痛む人もいるかもね!!
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続いては台湾の青春もの!台湾映画は青春ものが得意なのか、はたまた日本の観客が台湾にノスタルジックな青春を求めているのか?全国で公開される台湾映画、工夫をこらした邦題がついていることが多く、前項のタイ映画と同じくどうやって適切な観客層にリーチするかの試行錯誤が感じられますね(誰目線だ…)。
『鯨が消えた入り江』(原題:我在這裡等你 A Balloon's Landing)
原題は、作中で重要なモチーフとして言及されているレスリー・チャンの作品へのオマージュ…だよね?で、そのまま日本語にすると馴染みが薄いであろうところを、作中の重要モチーフに変えて、ロマンチックで儚くて、でも爽やかなイメージの本作にぴったり!!と思いました。間違いなくスマッシュヒットの要因の一つだと思います。覚えやすいし、他と被らないし、人に勧めやすいしね。
それでなんか本国の宣伝がクィアベイティングだとかなんとかみたいな批判も薄っすら目にしましたが、いや元の脚本家が香港の作家なのに台湾で制作スタッフを探した意図とか、香港の俳優のキャリアのこととか考えたら(香港のBLドラマが大陸寄りの議員に公然と批判された話とか踏まえると)、そりゃ製作陣はロマンスだとは断言せんやろ、と思いますが、ね…。ただレスリーと主役のキャラクターを重ねるような展開を考慮すると、元の脚本はもっと明確にロマンスを意識してただろうという気はする。で、台湾で同性婚が法制化されて、こういう映画の受け皿としての場が提供できているのは、やはり公的な可視化は強いよね、という感想です。羨ましいことです。
『ひとつの机、ふたつの制服』(原題:夜校女生 The Uniform)
一つの机を時間差で共有する高校の夜間学生と普通科学生が友達になる、っていう映画の内容をちょっとぎこちない感じも含めてよく表現している邦題だと思いました!原題だと華語と英語に分かれちゃってるからね。
90年代の少年少女を夢中にさせたポップカルチャーや、それぞれにお洒落でかわいい等身大のファッション、思春期の瑞々しい喜び、悩みや痛みについて、優しく共感的に描写していて、ノスタルジックでありながら現代的な軽やかさもあり、いい映画でしたよ。
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パラレルワールドを取り扱うと邦題が長くなりがちなのか、という仮説について考えさせられた2本。いや毛色が違い過ぎる。でも過去の選択に後悔し続けて、あのときああすればよかったのに、という気持ちに寄り添う2本ですよね(強引なまとめ)。というか逆に、パラレルワールドを扱っていてタイトルが長い先行作品があるんだろうか…漫画とかにあったっけ???
『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの"もしも"の世界。』(原題:So Long, See You Tomorrow)
原題は、作中で印象的に言及される本の一節、そして邦題、あまりにも全部書いてある!!全部!!!ただこのタイトルのイメージよりはずっと内省的、ポスターでは少年時代がピックアップされているけど、本編はほぼ大人になってからのビターな人生の振り返り(通信簿)だったので、分かりやすさゆえに取りこぼした客層もあるかもな、と思いました。いやしんみりしたいい映画だったのよ。その時々で、どういう道を選んでいても、すべてが充たされた人生などどこにも無くて(家族と親密/疎遠、地元/上京、社会的成功/普通の賃金労働者、独身/家庭、友人/同僚、etc…)、でもどこかで、欠けていた何かが別の形をして不意に目の前に現れる。3つの人生それぞれを生きる主人公を演じたシム・ヒソプが素晴らしかったです。少年時代の回想シーンと3パターンの人生が、有機的なつながりを持っていることを繊細に示す編集があって、そこからのラストが良かったわね……。
本作、『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』を引っ張ってきたKDDIの配給なのよ(感想も書いた)。ちょっと前の映画だけど、作品セレクトの方針が一貫していて(たぶん)、感心しました。
『世界一不運なお針子の人生最悪な1日』(原題:Sew Torn)
原題は「綻びを繕う」転じて「問題を解決する」みたいな意味だそうですが、邦題、分かりやす~~~い!!全部書いてある(二回目)!!原題のダブルミーニングも素敵だけどね。あと内容そのまま書くと、「怪奇!異常裁縫女の館、燃ゆ!」みたいなテンションでしたね。いやシンプルなサスペンスなんだけど、同じシチュエーションからどれだけ話を転がせるか?みたいな脚本のアイディア例みたいにもなっていた。でも主人公のキャラ設定(異常裁縫女)が勝因なのは間違いない。ワンアイディアの勝負とはいえ3通りも見せてくれたらそれはもう満足です。元気な老婦人が過剰に出てきて圧倒されたが。あとパラレルワールドを渡り歩いて、疲弊しきったあとのハッピーエンドは沁みるね。教訓としては「いちど始めた仕事は全うしよう」だろうか(そうなのか?)。それから、作品の世界観を補強するような刺繍モチーフのポスタービジュアルが素敵だった。イメージ刺繍の図案がパンフレットに載っていて、それもかわいくて良かったです。
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それからそれから、世界は暴力に満ちている、の2本!…だからまとめ方が無茶なんだよなあ…。暴力を扱った映画としてはかなり新機軸を意識していて、非常にフレッシュだったジャンル映画ですね!ジャンル映画だよな???
『愛はステロイド』(原題:Love Lies Bleeding)
原題は「愛は血を流して横たわる」転じて「叶わぬ恋」!!ロマンチック~~…ってそんな話だったっけ……。まあ偶然の出会いから運命の逃避行に発展するからロマンスものといえばそれはそう!主演二人のルックスがあまりにもイケててロマンスの説得力がすごい。しかしボディビル界のネガティブな面とかを絡めたシビアなノワールもので(面白いシーンはいろいろあるけど)、途中はしんどかったね……。邦題の、いびつだけど力強い、そして新鮮な言葉の組合せが映画の内容にピッタリだと思います!ていうか普通にかっこいいよね、自伝のタイトルとかにしたい(そんな人生はちょっと波乱万丈すぎるかもしれない)。
この映画、主役のどちらかを(あるいは両方を)男性にしても成り立つし、それでも充分面白い作品になったと思うけど、しかしこの座組で作られたからこそ、こんなにもダークで力強くロマンティックなおとぎ話になり得たのでしょう。
『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』(原題:Boy Kills World)
原題だけでもそんなに違和感ないのに、謎の漢字9文字(もしかして九字切りのパロディ!?今さら気づいた!ニンジャ匂わせ?そのまんまスト2リスペクト!?)をサブタイトルに付けておきながら情報量が増えてないにもほどがある!いやでも往年のアーケードゲームを思わせる演出、それこそ格ゲーのキャラ選択に出てきそうな登場人物たち、キッチュでダークなディストピア的サイバーパンク、みたいな世界観には合ってたと思う!面白かった!あと珍しく素顔のビル・スカルスガルドがたまにびっくりするほどセクシーでびっくりした(反復)。手足が長いのでアクションが映えまくり。アンドリュー・小路もすっげえ楽しそうに躍動していた。ていうかキャラデザが全員天才。それから観た人みんな言ってますけど6月27日(キャラ名)が気になるところですよね…名前も設定もめちゃくちゃかっこいいよね…君のこともっと教えて欲しいナ…。
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苦すぎる成長の味わい、2本!
『九月と七月の姉妹』(原題:September Says)
映画単独の邦題ではなくて原作小説の邦題をそのままつかってるんですね。さすがにセンスがいいな。この邦題のおかげで観に行こうと思ったもんね。あとパンフレットのディレクションもポリシーが首尾一貫していて、監督、原作者の充実したインタビューに加え、松田青子、上坂あゆ美の寄稿、それぞれのおススメ書籍が数冊ずつ紹介されていて、ターゲット層が明確だ…!!と思いました。
映画自体は小説の粗筋を読んでもらったらいいんですけど、少女から大人に成長する途中の身体感覚が生々しく、ちょっとホラー寄りの演出も相まって個人的にはめちゃ怖かったです……。
『テレビの中に入りたい』(原題:I Saw the TV Glow)
原題の「テレビが輝くのを見た」はメタファーとして素敵だけど、主人公たちの切実な祈りを反映しつつ覚えやすくてフックのある邦題、かなりイケてると思います!
思春期の、世界との軋轢が無視できないほど激しくなっていく辛い時期に、ただテレビだけがアジールとして機能していて、そこに頭を突っ込んだまま夢を見ながら老いてもいいけど、そうじゃない道もあるからね、っていう話だった(よね)?ネオンカラーの紫やピンクの光、様々なレベルのメタファーが散りばめられてたぶんぜんぜん理解できてないけど、あのとてつもない息苦しさ、いくつかの分岐点、誰にも奪えない痛みと内なる光、ずっと苦しくてしんどかったね……。こんな映画を必要としているたくさんの若い人に届いて欲しいね。
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あとは手短に!年が明けてしまうよ!!!
個別の感想でも書いたけど、『さよならはスローボールで』もけっこういい邦題だと思います、ちゃんと観て欲しい客層に届けたいという気持ちを感じる。
『エディントンへようこそ』は、現代はシンプルに『Eddington』なんだけど、「ようこそ」を付けたことで「エデントン」が地名で、そこを舞台にしたクローズドな話であることが類推できるので上手いなあと感心しました。別に好きな映画ではないが…。
『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』も上半期の感想で書いたけど、いい邦題だよね。全部説明する系という意味で、上で書いた『お針子』と同系統ではある(ジャンルも近接している)。
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あと80年代アメリカのサタニックパニックを扱ったドキュメンタリー『サタンがおまえを待っている』(原題:Satan Wants You)、メインビジュアルとの相乗効果もあってダイレクトでいい邦題ですけど、なんかパンフレットにボツになった邦題案コーナーがあって、まあ現状のに決まって良かったね…て感じのラインナップなんですけど、やっぱ邦題を決めるのって大変なんだな……としみじみしたので、もしパンフレットを読む機会があれば見てあげてください。それに決まらんくてよかったね、みたいなレベルのがいっぱい読めて新鮮。新鮮?
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個人的に、いい邦題が付いてる映画はそれだけで応援したくなってしまうんですよね。作品を愛して、どうにか日本の観客に観て欲しいと思ってる関係者がどこかに確実に存在しているということなので。
ということで、来年も良い邦題に出会えるといいですね!!!
では!!!