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映画『ファンファーレ!ふたつの音』を観て音楽への信頼に胸打たれる

なんかぬるい邦題と予告でこの映画大丈夫か???と思ったそこの君!!(誰だよ)大丈夫です!!!観な!!!!

というわけで、『ファンファーレ!ふたつの音』観てきたんですけど。

いや自分も公開規模が小さいしタイトルもビジュアルもなんかパッとしないし(ピエール・ロタンの笑顔は本当に素敵だけど。後述!)、でもあの『アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台』のエマニュエル・クールコル監督だし、『秋が来るとき』でめっちゃ良かったピエール・ロタンが主演?らしいし、まあ観とくか……みたいなテンションで行ったら、まあ良かったよね!!ホントごめん!!!

人生の可能性には限りがあって、思い通りになることなんか全然なくて、それでもなんとか各々の手持ちのカードでやってかなくちゃならなくて、大事な人には傷ついて欲しくなくて、ずっと一緒にはいられなくて、でも大切な美しいものを分かち合いたくて、っていう苦くて切実な大人たちのどうしようもないけれどかけがえのない人生の話だった!えーん……

それでですね、とにかく冒頭から演奏シーンが圧巻なので、音の良い映画館で観る価値はあるよ!と声を大にして言いたい(言った)。

整然として豊かなフルオーケストラの艶やかな音色も、ブロークンで調子はずれだけど賑やかで陽気な市民楽団の音楽も、孤独な夜に響くピアノの和音も、兄弟を包み込むレコードのノイズも、全部、ぜんぶ素晴らしかった!あらゆる音楽、宴席で誰かがたわむれに口ずさむ素朴な歌曲まで、全てが丁寧に、その魅力を最大限に活かすように録られ/撮られているから、そのこと自体が、主人公たちの音楽への愛そのものを表現し尽くしているんだよね。そしてあの鳥肌の立つようなラストに結実するわけですが……!!

そういう感動的な人間ドラマではあるものの、全体的な演出はカラッとドライで、日々をやり過ごしている大人たちの感覚に寄り添う感じがむしろ優しい。大人だから、日常の雑事に追われてるうちに大事な出来事がいきなり迫ってくる感じが妙にリアルでちょっと笑える。この地に足の着いた現実感覚みたいなのも本作の良さのひとつだと思うんだよね!!

以下、なるべくネタバレせずに行きますが、観れる人は読む前に観てよね!!!頼んだよ!

生き別れたまま育った兄弟が、大人になってからあるきっかけで出会い、音楽によって強い結びつきを得て、互いの人生においてかけがえのない存在になってゆく…という骨子は割とシンプルなお話なんですが。

兄は世界的な名声を得た指揮者で、演奏活動に学生の指導に作曲にと日々忙しくしている”成功した”音楽家、弟は、かつて炭鉱業で栄えた北の寂れかけた田舎町で実家暮らしの労働者、普通に生きていたら全く接点の無い二人が出会うきっかけは一つの大きな不幸だけど、絆を深めてゆくのは音楽への深い理解と愛ゆえなわけで、それが言葉じゃなくて、ちょっとした表情や仕草、軽いやり取りで繰り返し描写されるのが本当に良かった。ヘッドフォン越しに聞こえるオーケストラの練習に耳を傾けて緊張がほんの少しだけ和らぐ弟、吹奏楽団のアットホームな練習風景を見てどんどん笑顔になっていく兄、好きな音楽の話になると夢中になって時間を忘れて語らってしまう兄弟…!!

ジャンル問わず、何か音楽が流れてくるとちょっと足を止めて振り向いてしまったり、不意に歌詞を口ずさんでそれが思いがけずシンクロしたり、そういう瞬間がたくさんあって、それは好きな音楽がある人なら誰もが共感できるフックになっているし、兄弟やその周囲の人々がポジティブな関係を築く説得力にもつながる。そういう何気ない演出が本当に、マジで上手い。

しかも(わたしは欧州の音楽文化に疎いのでなんとなくですが)作中で使われている楽曲、新旧ポップスやジャズやクラシック音楽は、フランスで広く愛されている楽曲を、意識的に様々なジャンルから選んでいると思われるので、フランスで大ヒットしたのも頷けるよなあと思いました。いや上手いのよ。こういう、シビアな現実をあまり美化せず語りながら、大衆感覚に訴求するエンタメ作品に落とし込むバランス感覚が監督の持ち味なんですかね。しかしこの記事で「(音楽の)専門的な知識はない」と謙遜しておられ、またまた~~とか思わなくもないが、しかしそのスタンスがあるからこそ本作が広く大衆に受け入れられ、届いたのだろうなとも思いますね。

で、じゃあ音楽を愛してれば人生が上手くいくかというと、もちろんそんなわけない。吹奏楽団の仲間たちは長引くストライキと雇止めの恐れ、将来への不安などのストレスで疲弊しているし、楽団の運営も一枚岩ではない。当たり前だけど、市民楽団のメンバーにとって、仕事を失ってしまえば音楽どころではないし、だから音楽で生計を立てている兄の世界と、不安定な雇用状況にある弟の住む世界には決定的な断絶がある。だからこそ、音楽によってその境界を越えることができるかもしれない、と高らかに謳うラストに、あんなにも心を動かされるんだよね……人生は苦くて辛いし願いはひとつも叶わない、だけど希望は確かにあるんだねえ……。

ちなみにフランス北部で市民楽団の活動が活発な理由はパンフレットに解説があって、作中の楽団が創立142年(!)といのも実在の様々な楽団がモデルとなっているそうです。あと作中の楽団員も、実際に市民楽団で活動されている皆さんが参加されているそうで、あの息の合った賑やかな雰囲気はそれでか!と思って嬉しくなりました。その辺りの話もしている監督のインタビューも良かったら読んでね。ネタバレはあります。「労働者のコメディ映画」というジャンルでは英国に一日の長があり、フランス映画で挑戦してみた、という話はなるほど~と思いました。楽団がモチーフの作品だと『ブラス!』だけど、労働者のエンタメ映画といえば他にも『リトル・ダンサー』や最近だと『ドリーム・ホース』とかもこの流れかなあ。たぶんもっとたくさんあるよね。

前作は舞台芸術で、今回は音楽(特に演奏活動)がモチーフなんだけど、どちらも、人間同士の関わり合いに基づく芸術活動が人生にもたらすものへの信頼がすごくあって、演劇も音楽も大昔から人類の社会活動に含まれていたことを想起せずにはいられない。人間が人間らしくあるために、互いに影響し合うことを恐れず、支え合うことを受け入れ、芸術がもたらす恵みをありのままに享受することがすごく大切なんだと思い出させてくれる。

特に音楽は、言葉によるコミュニケーションに先行して発現したとも言われているので、本来はものすごくプリミティブな意思疎通の手段のはずで、この映画はそういう話をしているのかもしれないと思ったりしました。いろんな人々が、事前の打ち合わせなく一緒に演奏したり歌ったりする場面がいくつかあって、その空間だけは、どんな時でも多幸感に満ちている。育った環境、社会的階層が異なっていて、全く接点のないはずの人々が、音楽を共通言語にしてつながる、その喜びが圧巻のラストシーンに鮮やかに結実して本当に胸打たれるよね。

ところでさ、監督も絶賛していたけど、ピエール・ロタンは素晴らしい役者だね!!!ぱっと目を引く華やかさがあり、キャラクターの複雑な内面を繊細に表現する技術があり、共演者との豊かなケミストリーがあり、ちょっと目が離せない感じの俳優だよね!!

ずる賢い小悪党なのか、心優しいヤンチャ坊主なのか、不器用な善人なのか、虚言癖の盗人なのか。僅かなリアクションや言葉のニュアンス、表情の変化で、そこにいるのがどういう人間なのかを観客に注意深く伝えてくれる、その匙加減のリアリティが素晴らしいよね。これは監督との相性もあるんだろうけどね。

で、これまで観たピエール・ロタンの出演作はけっこう”悪い”役が多くて、斜に構えたみたいな雰囲気のことが多かったんだけど、今回のキャラクターは(『アプローズ、アプローズ!』のとき以上に)音楽のことを信頼していて、音楽がもたらす喜びに素直に身を委ねたときの輝くような笑顔が本当に素敵で、それが映画全体のメッセージの説得力を底上げしていてすごかったです。

ちょっとクラシカルな雰囲気もあって、歴史文芸ドラマとかも似合うだろうな~と勝手に思っています。これからも出演作を日本で拝見できることを願っているよ!

はい!

ということで観れる人は『ファンファーレ!ふたつの音』観てね!!普通に評判いいからまだ上映してるとこたくさんあるよ!!!映画館で音楽の祝福に包まれよう!!

では!!!




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