はいはい!!あるかなきかの梅雨も明け、蝉の声も高らかに、上半期が終わりましたよ!!!
ということで、上半期ベストです!!!なんか……割と普通……(特にベスト10)。いやなんか、アカデミー賞とかで評価された大作が普通に自分に刺さった、みたいなのが多かったんよね。あと20本中3本が韓国映画ということで、さすがに強いですね。普通に誰が観ても面白いうえにテーマ性とか問題意識とか舞台設定が個人的にハマるとたまらんよね。
いつも通り、観た順です!個別に感想を書いたやつはリンクを張りました(少な)。
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観た順2025年上半期ベスト10!
★ Brother ブラザー 富都(プドゥ)のふたり
★ セプテンバー5
★ 市民捜査官ドッキ
★ ブルータリスト
★ ANORA アノーラ
★ ウィキッド ふたりの魔女
★ ドマーニ! 愛のことづて
★ サブスタンス
★ シンシン SING SING
★ 罪人たち
観た順2025年上半期ベスト次点!
★ ディックス!! ザ・ミュージカル
★ 対外秘
★ トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦
★ ミッキー17
★ 終わりの鳥
★ 政党大会 陰謀のタイムループ
★ ガール・ウィズ・ニードル
★ ラブ・イン・ザ・ビッグシティ
★ テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ
★ カーテンコールの灯
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性懲りもなく個別の感想を………長いよ……。あと作品によって感想文のテンションが違い過ぎる、アテンション!!
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『Brother ブラザー 富都(プドゥ)のふたり』
マレーシアのクアラルンプール(富都)で、身分証を持たぬがゆえに最下層の暮らしを強いられ、助け合いながら危うい日々を暮らす兄弟に訪れた試練!おわーーー(号泣)(すぐ泣く)。
マレーシアは、80年代以降の経済政策の一環で労働力としての移民を積極的に受け入れており、それに付随する形で厳格な身分証の制度が運用されているそうで。どんな制度でもその隙間に落っこちる住民がおり、兄弟はマレーシアで生まれ育ったのにもかかわらず、ある事情により身分証が発行されていないため、口座を作ったり、正規の仕事に就いたりすることができない。それを様々な形でサポートする人々、どうにか自分たちの暮らしを形にしようとする二人、低所得者層の集うアパートの暮らし。
兄弟は中華ルーツの設定で、同じルーツを持つコミュニティとの絆や、多言語が飛び交う生活、都会の片隅で見えなくされている人々の生き生きとした様子が瑞々しく活写されていて、その中で必死に生きる兄弟が本当に愛おしくて胸が詰まる。マレーシアと台湾の、それぞれの人気俳優が演じる二人が本当に、もう、ねえ…(号泣)。
で、マレーシアは管理社会であり、映画の公開基準もそれなりに厳しいらしく、映画内で明快に説明されてない背景がかなりあるなと思ったり(パンフレットの解説にもいろいろヒントがある)。兄弟の過去シーンは断片的だし(本当の兄弟かどうかは明かされない)、二人の親代わりみたいなニューハーフ(?)の男性(?)の仕事や来歴も曖昧なままに残される。どこにも明言されていないけど、監督がウォン・カーウァイからの影響に言及していることと併せて、あのダンスシーンはそういう意味かなあと思っているよ(分かりにくい書き方ですまんな!)。ラストの選択も、ギリギリの、針の穴に糸を通すような、推敲の結果なんだろうという気がしますね。えーん!!
マレーシアの近現代史、中華系移民の歴史、国家が抱える課題、そこで生きる生身の人々の当たり前に祝福されるべき人生、複雑で多層的でそれゆえに豊かな、替えのきかない故郷の風景、それらを丁寧に、慈しむように、誠実に、深い愛と理解のもとに撮っていて素晴らしかったです。
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『セプテンバー5』
スピルバーグの映画で知られるミュンヘンオリンピック事件を、生中継していたテレビクルーの視点で描く意欲作!パンフレットは……無し!!!ちょっとお!!!
本作、1972年当時のテレビクルーの現場を、まるでドキュメンタリーのように撮っていてものすごく興味深い細部がたくさんある。当時の先端技術を駆使した生中継、衛星回線の取り合い、離れた撮影現場とのフィルムのやり取り、アナログ手作りのキャプション、放送フィルムと原稿のアナログ編集、通信手段が限られることによる情報の錯綜、いや大変だこれ……。
そして、それぞれのスタッフはそれこそ死力を尽くしてニュースを届けようとしているのに、それ自体が事件の解決を妨げてしまうという逆説。現在でも見かける光景ではあるね。
放送中にキャスターとのやり取りがあった場面では、実際の放送映像を使ってそれに合わせて役者のセリフや演技を入れ込んだらしい(説明が難しいな)。『映像の世紀』とかで見たような実際の映像も流れる。放送現場の作業やたくさんの判断や出来事の経過を細部まできちんと検証して当時の生々しく緊迫した状況をスリリングなドラマにしつつ、クルーたちをヒロイックに撮るんじゃなくて、まるでパンドラの箱を開けてしまった人たちみたいに描いているのがとても良い。当人たちもそこから飛び出してきたものを目の当たりにして茫然としている、みたいな演出がいくつかさりげなく入っていて(ドキュメンタリーの体裁を損なわない程度に)、それは、映画から観客への問いかけになっている。君たちが観たいものを見せてるんだよ、分かってるよね、っていう話よね。なので映画自体が反パレスチナ的だとかは全く思わなかったのですが、全く反対の感想を書いてる人もいたので、何だろうな、と思いました。
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『市民捜査官ドッキ』
特殊詐欺で全財産を騙し取られたシングルマザーが、犯人からお金を取り戻す話!女性たちの、地に足の着いた、それでいて情の厚い、等身大の連帯に胸打たれたね。主人公たちの普段の生活をしながら捜査する日常パートと、特殊詐欺グループの拠点(最近、東南アジアの中国国境あたりで話題になっているやつですね)の陰惨な犯罪パートのギャップがすごくて、どちらの演出も韓国映画の得意分野なので一粒で二度美味しいみたいになってて良かった(???)。
もちろん普通の中年女性が組織的な暴力に対抗できるわけはないので、警察を動かす必要があるのですが、たぶん日本もそうだけど、この映画のモデルになった事件が起きた頃は、こういう個別の事案から横断的な国際捜査プロジェクトを立てる体制が確立してなくて、警察組織を動員するハードルが異様に高い。そこがめちゃくちゃ歯がゆいんだけど、警察官のキャラクターにバリエーションを持たせることで警察の怠惰とか保身だけが悪いんじゃないよ、てなってて、韓国エンタメの犯罪ドラマの上手さが際立つね~と思いました。
ごく普通の、よき市民である中年女性を主人公にして、現実でもフィクションでもないがしろにされがちな彼女たちの人生をきちんと語りつつ、時事ネタを入れたクオリティの高いジャンル映画(だよね?)を作り上げていて見ごたえがあったよ!
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『ブルータリスト』
215分!!!215分!?!?と慄きながら足を運んだ映画館で見事にノックアウトされるという貴重な経験をさせていただいたアカデミー賞3部門受賞の話題作!さすがに長い&題材になじみが薄い、ということで日本ではあまり流行らなかったようだが、まあよくぞ配給&上映してくれたよね…インターミッションまでちゃんと取ってくれて心が助かった、ありがとう…。たぶんインターミッション中に読む用の、入場特典の小冊子も映画の世界観の中で物語を補強していてめちゃ良かった。あれは他の国でも配布されたのかな?
物語は20世紀のさまよえるユダヤ人の話なので、分かりにくいところも多々あったのですが(本当にたくさんあった、台詞が少ないし)、観たことのないような映像とそれに寄り添いながら突き放すような緊張感のある劇伴に浸るだけでもなんだかすごい体験だった。建築物をはじめとした物の質感を精緻に捉え、圧倒的な空間の広さを映しとった映像を、映画館の広々としたスクリーンで観れたのはまさに僥倖。ビスタビジョン採用による高精細化だけでこんな映像になるか??と思っていたんですが、フィルム面積が広い=レンズの画角が(相対的に)狭い、ということで、それであの感じかあ!と腑に落ちました。なるほどね!!テーマがスタイルを規定する、みたいなことをやってたのかもしれん。劇伴ももちろんすばらしく、主人公たちの、不安や猜疑を具現化したような神経質で重々しいミニマムな旋律から、失われた故郷や家族を思う失望とリリシズムを彩るピアノソロ、可視の/不可視の深い断絶を照射する生々しい管楽器のうねり、ダイナミックかつ繊細な音響も相まって、大胆で緻密でミステリアスな物語に相応しい圧巻の劇伴でしたよ!インターミッションで流れてたピアノ曲もかなり好みだったし、しばらくサントラをヘビロテしましたね。こういうの好きなんだよね…。
俳優もみんな良かったけど、特にガイ・ピアーズ、こんないい俳優だったっけ??(失礼)なんかこう、システムの中でシステムそのものとして君臨する、最初は個人的なルサンチマンから始まった事業(というか人生そのもの)が巨大なシステムへ変貌し周囲の人間を吞み込んでいく、自らの人格や意思さえ捧げて育てた底知れぬ闇、それそのもののような男を演じていて、いやすごかったね!!!
欧州の芸術家が、戦後アメリカの資本主義に蹂躙されながらも自身のヴィジョンを具現化し、それによって決定的に疲弊したうえに約束の地では安寧を得られない、というプロット(?)を踏まえると、シオニズムには批判的な立場の映画だと思ったんだけど、全く逆の感想を言ってる人も見かけたので、もう分かんねえな、てなりました(二回目)。
ところで、英語版Wikipediaによれば、本作のおかげでビスタビジョンが再流行し、PTアンダーソンやヨルゴス・ランティモス、イニャリトゥ監督が次作の撮影に使っているんだそうで(観てないから伝聞だよ)。すごい、こだわりが強そうなフィルムメーカーたちがこぞって影響を受けまくっている…確かに映像はめちゃかっこよかったけどさ、ハリウッドの製作現場ってそういう感じなん!?
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『ANORA アノーラ』
はい言わずと知れた(こんなところを読んでいる君たちには自明だろうという話だよ)、アカデミー賞作品賞を始め主演女優賞など5部門を受賞した話題作ですねっ!
最初の甘々ウェディングツアーに潜む寂寥、中盤の中年ヤクザおじさんたちの珍道中に滲む悲哀、終盤の決定的な別離を彩る親愛。アノーラ(主人公ね)は1人で生きて一人で戦える強くて賢くて美しい女性だけれど、まだ若くて未熟なところがたくさんあって、困難な状況をコントロールしきれなくて(まああんなの誰でも無理だと思うが)、その中でも自分を蔑ろにさせない、ていう鋼の意思があんまりにも眩しくて目が潰れるかと思った。そしてその光が、周囲の人間の寂しさや愚かさや哀しみや控えめな愛を照らし出す。
本当にどうしようもない、もっとマシな選択肢あっただろ、って言いたくなるようなストーリーと登場人物たちなんだけど、自分の人生を自分の力で生きて行こうともがく若い人たちへのエールにもなっていると思いました。みんな健やかにあれ~!!
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『ウィキッド ふたりの魔女』
こちらも言わずと知れた(だよね?)傑作ミュージカルの映画化!!なんですけど、わたしにとっては思春期の多感な時期に読んで影響を受けまくった『オズの魔女記』(←復刊ドットコムへのリンク)の映像化なんですよ!!!
いつの間にか『ウィキッド』とかいう洒落た(洒落た?)タイトルで新訳が出て、ブロードウェイでミュージカルが大ヒット、劇団四季のレギュラープログラム入り、などを遠くで眺めておりましたが、とうとう待望の映画化、ということで観念して観てきました!(何をもったいぶっているのか)
いや歌もキャストも演出もめちゃくちゃ良かったけどさあ、後半のダウナー展開に耐えられる気がしないんですけど!?!?原作よりはマイルドになっているのかしら!?!?怖いよーーー!!!!!
二人の才能と向上心に溢れた女性の友情物語を中心に、学び舎での青春時代をキャッチ―に鮮烈に喜びをもって歌い上げ、みんなのその後の運命も暗示するという、第一幕に相応しい堂々たるエンタメであった。主役二人のアトモスフィアがとにかく素晴らしい。級友たちや王子様のキャラクターはミュージカル版よりかなり掘り下げてあるらしく、いい判断だと思います!あとミシェル・ヨーとジェフ・ゴールドブラムはさすがの貫禄で、後半の展開に緊張感をもたらしていたね。
しかし第二部、怖いよーーー!!!(観るまでずっと言う)
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『ドマーニ! 愛のことづて』
この映画のことを考えると泣きそうになるんですよね……!!ラストで号泣したのを思い出してさあ……!!
1946年のローマ、抑圧的・暴力的な配偶者と暮らす女性が、ままならない生活を抱えながらも「明日」へ向かって走る話!(原題は「まだ明日がある」)…というあらすじからは想像もできないくらい、軽やかでカラッとしたユーモアが詰め込まれていて、女たちが強くて前向きで、映画的な遊び心もあり、スリリングなサスペンスと爆発(!?)があり、明快で力強いメッセージがあり、まあとにかく観てくれよ!としか言いようのない素晴らしい映画であった。
そして監督・脚本・主演を務めたパオラ・コルテッレージの才能よな!!イタリアでは国民的コメディエンヌとして広く知られ、俳優・脚本家としても活躍していて満を持しての映画監督デビューらしいですが、いや~貫禄!!!イタリアも日本と同じような(似て非なるところはあれど)家父長制ベースの男尊女卑が広く社会に根付いていて、その中でキャリアを築いてきた女性が、世に放ったのがこれか!!ていう驚きと喜びがありますね。なに言ってんだとお思いでしょうが、観た人は意味分かると思うし、観てない人はあんまり内容を知らずに観て欲しい、という気持ちがありこのような書き方になっております。
男性と女性の置かれた状況の違いだけでなく、世代間の意識の差や経済的格差による立場の差など、それぞれの困難の差異ゆえの行き違いを細やかに、しかし重くなく描写して、それでも手を携えて一緒に歩くことはできるはず、ていう希望をきちんと語っていて、本当に心を打たれたのでした。まだ観てない人はどうにかしてぜひ観てね!!
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『シンシン SING SING』
全米で最も厳格とされるシンシン刑務所で、収監者によって運営されている演劇グループの話!
演劇には疎い(本当に疎い)ので、演劇というものが、人間(観客/演者/製作者)にとってどういう営みなのか、こういう映画を観るたびに感心させられることしきりです。本作、メインとなる演劇グループのメンバーの半数以上を、実際の演劇グループで活動していた元収監者たちが演じており、彼らが、自分たちが変容していくプロセスをもう一度生き直すように再演するのを映画の観客は目撃することになるという、何層かのプロセスが同時に進行しており、それが映画に奥行きを与えていると思いました。
まあとにかく主役のコールマン・ドミンゴが素晴らしかったですね!演劇グループへの献身、メンバーへの深い理解と思いやり、友人との気安いやりとり、自分の感情と向き合い傷つき立ち直るプロセス、それらの繊細な表現に引き込まれ、目が離せないのよね。パンフレットによれば、アメリカの刑務所の収監者のほとんどは裁判で有罪判決を受けているわけではないらしい。だからいつ釈放されるか分からない、犯罪歴もいろいろ過ぎる収監者たちが、人間らしく人生に向き合えるかというと、それは確かに難しいよね…としょんぼりしてしまいました。その中で、この演劇グループみたいに、自分を立て直して保つのを助けるような活動に出会えるのは本当にうれしいことだよね、ていうね。
人間の善性を信じたくなる、良い映画でしたよ。高評価も納得!しかしシェイクスピア演劇についての基本的な素養があればもっと楽しめるのに!!とも思いました。そういうの他にもいっぱいあるだろうけどさ…。
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『罪人たち』
観たことある気がするのに観たことないところまで連れて行かれる力強くて不思議な映画!アメリカ南部の産業史、音楽史を扱う重厚な史劇の空気感をまといながら、ミュージカル、マジックリアリズムの手法を駆使してゴシックホラーや血みどろアクションみたいなジャンル映画になだれ込み、歴史に抑圧され続けた被差別者たちの魂の咆哮を朗々と響かせる、意欲的なエンタメ映画だよ!!
まあ観た人はみんな心奪われているので今さら感想とか完全に蛇足なのですが、とにかく出てくる人々、非白人コミュニティの当時の暮らしぶりがものすごく精密に、情感豊かに描き込まれていて、その細部に引き込まれてしまうよね。教会や農場、町や駅に集う人々が生き生きと、意図と意味と背景を持ってそこで生きていて本当に良かった。
そしてラスト、最後の最後まで、映画ってこんなことができるのか!という驚きに満ちていて素晴らしかったです。ライアン・クーグラーはすごい監督だなあ!!(今さら)
ラスト前のシーンは『ジャンゴ 繋がれざる者』へのアンチテーゼでは、という指摘を見かけて、なるほどなあ、と思ったりしました。それ以外にも、たぶん見るべき人が見たら読み取れる内容がいくらでもあると思うんですよ、それくらい重層的なつくりの映画でしたね。でもパンフ売り切れだったね、分かるよ、パンフ欲しいよな…。
あ、でも展開でひとつわかんなかったところがあるので、ちょっと誰かに教えてほしい。
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『ディックス!! ザ・ミュージカル』
爆イケのミーガン・ジー・スタリオンのパフォーマンスを映画館のデカいスクリーンと音響で浴びて健康になろう!!!
…マジで下品で短慮で意味不明でどうしようもない愛の話だが、でもそれは他人が断罪するものではないよね、だからその幸福と幸運をお祝いしましょうね、ていう素敵なミュージカルなのであった。しかしとんでもなく下品なので人を選ぶのは間違いない。ていうか、ご両親が出てきてからの急旋回、マジで振り落とされる寸前であった。字幕の都合で分かりにくいのか??と一瞬思ったけどたぶん違う、展開がぶっ飛びすぎているだけである。
辛辣な政治的風刺も盛沢山で、たぶん製作陣に、悪口は相手が悪口を言われたって分かるように言わなくちゃ、という信念があるのではないかと思われる。ウケる。
音楽も多彩なキャラクターもご機嫌で、映画らしい演出も効いていていて、そもそもわたしはミュージカルが好きなので、かなり楽しめました!良識ある大人の皆さんが下品なギャグにためらいなく爆笑できる貴重な機会だよ!!!(そうなのか?)
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『対外秘』
90年代の釜山を舞台に、土地開発計画をめぐる政治の腐敗と暴力の話!理想に溢れた青年代議士が老獪な政治家の操る政治の闇に絡めとられ、そこに野心家の新興ヤクザも絡んで、ぜ、全員不幸になる将来しか見えませんが???とにかく演技に定評のある(らしい)主演三人のアンサンブルの見ごたえがすごい。確かに硬派な脇役で良く見かけるメンバーな気がするな。なるほど配役の意図がなんとなく。で、最近よくお見掛けするキム・ムヨル、三人の中では最若手で現場ではかわいがられていたみたいですが、なんか凄みと繊細さが増した佇まいが素晴らしく、暴力と愛嬌のバランスが奇跡だった。なんだその笑顔!!(逆ギレ)しかしいつも眉間のシワが取れない感じの役回りなので観てるほうがつらくなり、ここはひとつご機嫌でイケてる感じの役もやって欲しい。貴公子みたいな。
苦い、としか言いようのないラストが監督や製作陣の実感に近いとしても、ただの諦念ではないのだろうな、と思わせる力強さがあったね。本当にエンタメが上手いな…韓国映画…。
釜山はソウルから見たら大阪みたいな感じ、とどっかで聞いたことがあり、キム・ムヨルだけその辺の出身ではないので言葉を特訓した、という話と併せて、関東の人が関西弁を練習するみたいな感じ…??となんとなく思いました。なるほど平成の関西ヤクザの話だったのか(??)。
ところで本作も含め韓国映画、原題は渋い単語なのを分かりやすい邦題にされがちだったのが、最近は原題ほぼそのまま邦題になってるパターンをよく見かける気がしますね?(「密輸」「破墓」「脱走」「貴公子」など)なんかトレンドの変化でもあったのだろうか。知らんけど。
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『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』
や~、面白かったね !!!丁寧に作りこまれた九龍城砦そのものが主役みたいな、それでいてキャラクターとアクションが豪華で見どころの多い、香港アクションの最新・最高を更新してやろうという気概に溢れた良い映画でした!日本ではなかなか紹介される機会の少ない、若い世代の俳優をたくさん見れたのも良かったよね。ファンダムが大変な盛り上がりを見せているのも興味深く拝見しておりますよ…(こわ)。
兄貴世代の皆さんが揃って老けメイクだったので、おや、と思っていたら、案の定(案の定!)前日譚がすでに計画にあるそうで、なるほどね!!!てなりました。香港映画の伝統芸(続編をつくるスピード感)を見せつけて頂きたいものです、はい(何目線)。
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『ガール・ウィズ・ニードル』
第一次世界大戦直後のデンマーク、銃後の女たちの地獄の話!人間の価値が低く、家柄も財産も持たない男は戦場で、女はダウンタウンで、消耗品としてぼろ布のように死んでいく。死ねなかった者は、この世の地獄の底を這いずりながら生きていく…。モノクロームの抑制的な映像とミニマムな音楽で、クライムノワール風の語りが女たちの置かれている抑圧的で悲劇的な状況を炙り出す。「女の犯罪」を、見世物的でなく、個人の資質や責任に還元するでもなく、社会構造が生み出したある種の必然として告発する脚本が、現代に通じる強さを持っていていたように思う。ラストの、誰もが目を逸らすあの人の慟哭に、カメラは真っ直ぐに対峙する。まるで観客を告発するように。
2023年の年ベスに挙げた『ヒンターラント』は、同じ時代の男の地獄の話だったけど、こちらは女の地獄の話をより容赦なく(それは貧しい女が救われる選択肢の少なさの表れでもある)掘り下げていて凄まじかったです。それでいて映像と音楽がミニマムで美しくて、残酷ではあるけどエンタメ的なエグさは無く、もの悲しいけど救済のあるラストがほの明るくて、製作陣の優しさと誠実さを感じました。
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『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』
ウェディングドレスにスニーカーを合わせるくらい自由で恋愛に一直線な女の子と、クローゼットなゲイとして生きるハンサムな男の子の、何物にも代えがたい友情の話!ところで予告とかオープニングとかは結婚相手に関してミスリーディングを狙っていたんだろうか、だとしたらその意図だけはちょっと微妙だな~と思いました。気にし過ぎかなあ。
日本に勝るとも劣らない家父長的・保守的な価値観が個人の生き方を抑圧する韓国社会で、自分らしく生きるために溺れそうな者同士で助け合って生きていこう、そうすればきっと未来は明るいはず、ていう、個人の生き方の話をちょっと珍しいくらいポジティブに語っていて、若い人たちへのエールみたいで、そこがすごく素敵だった。君たちに幸あれ、って思ってる人がここにいるよ、ていうのが大事なんだよね。
あと配給がKDDIで、「KDDI!?」ってなって調べて出てきた配給担当のインタビューがこちら。なるほどねえ!今後も期待してますね!
ところで頭/性格の悪いやつが持ち出す「男女の間で友情は成立するのか?」ていう問いにはちゃんとファイナルアンサーが出ていて、「成立しないと思っている奴とは成立しない」です。以上。
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『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』
特殊詐欺で財産を騙し取られたおばあちゃんが、犯人からお金を取り返す話!(既視感!!! いや真面目な話、この手の犯罪が世界中でどんだけ脅威なのか、ていう話よ。『ビーキーパー』も『犯罪都市4』も特殊詐欺の話だったぞ)
独立心旺盛なおばあちゃんが、持てるリソースを駆使して、自分の力で、誇り(とお金)を取り戻す話を、スパイアクションの文脈や演出に乗せてスリリングにエンタメ化していて、人間の尊厳や社会的寿命について考えさせられる良い映画でした!友達はみんな死んでるし、家族には半人前扱いされるし、なるほど自分の身体は思うように動かないし、人に言われるまでもなく自尊心は削られ、それでも人生は自分の手でハンドリングできるし、そうすべきだ、という話ですね。だってお金を取り返せなかったら、周囲の人間に(悪気なく)「もう歳だから仕方ないね、財産は家族が管理しよう」って言われて、そんなことになったらQOLが激減するのは目に見えている。あの美しく整頓された家にも住めなくなってしまう。
そういう話を、スパイ映画のフォーマットで、軽やかなユーモアに乗せて、レジェンド俳優たちの遊び心と安定感のある演技で語っていて見どころが多い。スパイ映画お約束の展開でも設定や演出でこんなに楽しめるんだな、というのも新鮮で良かったです。ちなみに、なぜスパイ映画のパロディと断定できるかというと、映画の中でトム・クルーズがリスペクトされ、エンドクレジットにも出てくるからです!さすが世界の大スターやね。面白いよ!
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『カーテンコールの灯』
地域の演劇グループに参加した男性が、自分の内面と向き合い人生を取り戻す話!演劇の話だ!
映画を観てても思うんですけど、演技って、役者とキャラクターは異なる人間とはいえ、生身の身体をぜんぶ使って表現する活動じゃないですか。あれは本当に大変なことですよねえ…(語彙力どうした)。でもそれが、まるで筋トレみたいに、自分がいままで使ってなかった感情や表現の引き出しを発見するための手段になる、ていうのを丁寧に描いたのが本作なのですね。なるほどー。
あと、『ロミオとジュリエット』みたいな数世紀前の古典でも(だからこそ)、人生のいろいろなフェーズに”効く”っていうのが様々に表現されているのも良かった。誰にとっても大切な物語になり得るから、古典なんだよね。で、折々に生身の人間が演じているから、演劇はそれが分かりやすくなっているのかもね。個人的には、ロミジュリってそういう話をしていたのか、という新鮮な感動もありました。
自分の感情に向き合うのは難しくて怖くって、でもいつかはできるようにならなきゃ大事な人を傷付けてしまうかもしれなくて、そういうたくさんのものを背負った現代の大人たちには刺さる映画だと思いました!
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はい!!!
長くなったので終わりです終わり!!下半期も良い映画にたくさん出会えますように!!!!
では!!