ということで、年が明けないうちに海外アニメ映画の話をします!今年は非英語圏のアニメが少なめでしたね。なんか買い付けのトレンドとかあるんだろうな……知らんけど…。
リバイバル上映の波はアニメ界にも押し寄せ、未見だった旧作もいくつか観れたのでその感想も書きますが、旧作に関してはネタバレとか配慮しないのでよろしくね!!!
『 ストーム』『リンダはチキンがたべたい!』『ユニコーン・ウォーズ』『インサイド・ヘッド2』『トランスフォーマー/ONE』『ロボット・ドリームズ』『風が吹くとき』『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』『ブレッドウィナー』だよ!今年もけっこう観たな!
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新作!
『 ストーム』
これはもういいですね、上半期のまとめからしてさんざん引用してる感想記事がありますのでね。
しかし本作を3月の<東京アニメアワードフェスティバル2024>で観たとき、後述の『リンダはチキンがたべたい!』と『ロボット・ドリームズ』はすでに全国公開が決まっていて(チラシも配ってた)、羨ましいなあぁあ~~~と思ったことを覚えています。ちえっ。
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『リンダはチキンがたべたい!』
フランスからやってきた、カラフルで自由で元気いっぱいなアニメ!
とにかくタイトル通り、リンダという女の子が、とある理由からどうしても今日、「チキンのパプリカ煮」を食べたくて、お母さんと二人で町中を奔走するお話です。いろいろと見どころのある作品ですが、まあとにかく絵がね、すごいのよ!!マティスとかシャガールみたいな自由闊達な輪郭線に大胆でカラフルな色彩の絵が、そのまま動く!めちゃくちゃ動く!!背景ももちろん自在に伸縮し色や形を変えながら明滅し、登場人物たちの動きや感情に寄り添うように存在を主張していてマジですごい。去年の『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』も水彩画がそのまま動いてるみたいで美しくてかわいくて感激したんだけど、その枠をさらに踏み越えてきたな!て感じでした。
リンダが鶏肉を買えないのは町中がストライキ中のせいで、しかしそれに参加できない/しない人々のそれぞれの事情が垣間見え(リンダは家賃の安い公団みたいな団地に住んでいて、周囲にはお年寄りや移民の家族が多い)、そのような中でもある種の連帯があり、個人の意思と意志を尊重する文化があり、リンダには意志を押し通す強さと逞しさと真摯さがあり、なんかとにかく元気が出た。
周囲の大人たちがみんな不完全で不器用で、あまり真っ当なことを言わず(言えず)、自分の都合を優先し、子供をみくびらず対等に怒ったり慌てたりしてるのがフランスっぽいなあ~と思いました(偏見)。
彼ら彼女らに思うところのある人は多かろうが、そういう体験も面白いしアニメーションを観るだけでも価値はありますね!間違いない。
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『ユニコーン・ウォーズ』
スペイン発!のカラフルで残酷でグロテスクで哀切なクマちゃんたちの戦争神話!なんだそれ!!!!!
ユニコーンに戦争を仕掛け、彼らが住む森を焼き払い領土拡大の夢を見る、トキシックで乱暴で陰湿で醜くてどうしようもないクマちゃんたち!!!軍隊内での、仲間内の陰険なイジメ、上官からの暴力、無謀な作戦行動による損耗、ドラッグの蔓延、大義のない戦争、虐殺。目を覆うばかりの惨状がキッチュで不気味なアニメーションで綴られ、怒りと憎悪の膨張の果てに世界は終焉を迎える……!?いやオチ!!!なにそれ!!!(ほんとうにびっくりしている)。
スペイン発の映画、そんなにたくさん観ているわけではないが、独特の色彩感覚と深い絶望とどん底のタフネスみたいなのがあり、怖ぁ…てなりますね(偏見その2)。スペイン内戦が浅からぬ傷を残していることは間違いなさそうですが。
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『インサイド・ヘッド2』
前作は未見だったので直前のテレビ放送でありがたく鑑賞し、おもしれえ~~ってなってその勢いで観に行ったのでした!吹替版だったんですけど、みんなすごく良かったですね!思春期に訪れる嵐、それは誰のせいでもなく自然な成長のステップなんだよ、ということを優しく、易しく教えて寄り添ってくれる、すてきな友だちみたいなアニメだった。自分の感情と向き合ってそれを尊重しつつ他者との適切な関係を築いていくのは大人だって練習無しでは難しいので、前作と併せてみんな一回は観たほうがいい。必修科目です。
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『トランスフォーマー/ONE』
トランスフォーマー自体は、マイケル・ベイの映画シリーズからなので特別な思い入れは無いのですが、信頼できる皆さまが絶賛されていたので観に行きました!面白かったです!!!ビターな青春の終わりと友との訣別を描きながら、労働者たちの信頼と団結をベースにした冒険アクションで、少年少女たちに勇気と希望を与えつつ大人たちの心の柔らかいところを確実に刺してくるよいオリジンでしたね~。個人的には、D-16が友人を見限るに至った心情の揺れを丁寧に追ってたのが辛くてねえ…。あんなにも一心同体だった友の言葉や行動が理解できなくなり、焦りと寂しさが怒りを増幅させていく、孤独な姿……大人ならみんな泣くだろ、あんなのさあ…。
ビジュアル面では、金属生命体の天体なので、有機物が出てきたときにべちゃべちゃして気持ち悪いな、て素で思ったのが面白かったです。異星人の美意識にシンクロしてる!
あと、吹替ももちろん良かったのですが、スカーレット・ヨハンソンの声でお説教されるのも憧れるな、ていう煩悩がわりとずっと脳裏をチラついていた。マジ煩悩。
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『ロボット・ドリームズ』
これは感想記事を書いた!作品に引っ張られて文章がややセンチメンタルなのが興味深いですね。で、これもスペインから来た映画なんだよね…、スペイン、こわい。あとフランスのアニメスタジオでの製作だそうで、フランスのアニメ製作、強い。
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旧作!
『風が吹くとき』
いまのこの世相で、世界が滅ぶのをただ傍観する映画を観るのマジでキツかった……なんでこんなことに。うぅ……。
言わずと知れた(学校の図書室に必ず置いてあるであろう)名作絵本のアニメ化作品ですね。原作は台詞無しでシンプルなコマ割りのミニマムなマンガですが、映画のほうはかなり色々な撮影上の仕掛けがあってびっくりした。室内のシーンはミニチュアセットを使って撮影していて、今のフルデジタルアニメみたいな自由なカメラワークになってたのが興味深いです。あと、家の中とその周囲だけで展開される本筋のストーリーに対して、老婦人がカラフルで自在な空想に遊ぶ場面があって、アニメーションならではの表現を楽しみつつも、現実の二人の世界の狭さ、思考の窮屈さが対比的に強調されて辛いわね、てなりました。今みたいなこんな従順な”国民”である以前に、思考力や想像力を持つ自由な人間だったんじゃないの…?てなる。原作にも描かれていた、体制への従順さや無知に逃げ込む愚かさへの批判を際立たせる演出だったのかな。
しかしこの作品が21世紀にもなってこんなにも切迫度を増していくなんて、原作を読んだ子供の頃には思いもしなかったよ。
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『ブレッドウィナー』
タイトルの”ブレッドウィナー”は”一家の稼ぎ手”の意味ですね。女性は”ブレッドウィナー”になることができないタリバン政権下のアフガニスタンで、家族と共に暮らす少女の姿を通して、そこに生きる人々の生活、悲しみや喜びを生き生きと描く話題作です!
カートゥーン・サルーンらしい精緻で美麗なアニメーションが彼の地に言い伝えられてきた昔話の冒険譚を語り、一方では男手に頼れない家庭の生活の過酷さを丁寧な描写で克明に映し、その落差と、その土地に根差した固有性という共通点に心がざわつく。
女性たちの生活は苦しく、生きるために抑圧や暴力に耐えなければならない理不尽の一方で、男性もまた安価なリソースとして消耗させられている。家族を養うために過酷な労働に耐え(それゆえに買い叩かれる)、若く未熟な者は戦場へ送られる。誰がどう見ても出口なしの状況なのに、なんでこんなことがやめられないのか。イデオロギーは人を死なせる、それだけのことなのに…。
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『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』
絵が怖い!!!大人でもトラウマになるわ!!!(初見の感想)
えー、独自の神話世界を持つウサギたちのエクソダスを美麗なアニメーションで描いた1978年のアニメ映画です。1972年発行のベストセラー児童書の最初の映像化らしい。ふむ。原作者のリチャード・アダムスは1920年のイングランド生まれなので、全体主義や暴力的統治への嫌悪と抵抗が全編に横溢していて、原作の雰囲気をそのまま表現しているのかなと思いました。
ビジュアル面で特に印象的だったのは背景美術で、田園風景を描く油彩画の世界がそのまま奥行きを持って動いてて素晴らしく美しかったです(しかしだいたいお話はそれどころではない)。水面の木漏れ日の表現とかすごかった。あと、ウサギは詳しくないのであまり分からぬが、途中から協力者として出てくる鳥の仕草の描写がめちゃくちゃ良かった。緻密な観察に基づいた絶妙なデフォルメ感、今どきのアニメの精密さとはまた違う解釈の仕方だった気がします(詳しい人にもっとちゃんと分析して欲しいね…)。
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番外編!
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』
観た人はご存知だと思うんですが(公式からも映像が出ていた気がするが)、オープニングのショートアニメ『Me and My Shadow(俺と俺の影)』、えらいオシャレだなあ!!と思ったら、フランスのアニメーション監督シルヴァン・ショメの新作だったんですね、いやびっくりだよ。海外アニメウォッチャーの皆さんは必見だよ!!たぶん…。
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ということで、今年(だけではないが)の海外アニメの話でした!海外アニメ、売り出し方が難しいとか円安とかいろいろハードルはあると思いますが、今後も良質な作品が気軽に観られることを願っています!!!
では!!!