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「おかしくなったら教えてくれ」と言えるうちにおかしくなった自分を諫め追い出す CoC を書けるか

技術系カンファレンスや勉強会を主催する立場になると,自分たちが作り出したい空間のイメージがありありと浮かんでくるものです.
 
一方それと同時に,こんな空間になってしまったら耐えられない...... という心配事が実際に起こってしまった空間イメージも浮かんできてしんどいこともあります.
 
それらを実現する,あるいは実現させないために主催側は様々な工夫を凝らします.その中の一つが今回のテーマである「CoC」です.
 
参考までに自分が実行委員長をやっている TechRAMEN 2024 Conference の CoC のリンクを置いておきます.
fortee.jp

 

CoC

Code of Conduct」の省略形で,日本語では「行動規範」と呼ばれることが多いです.その空間を充実したものにし,また,この空間で不幸な思いをする人を減らす約束事です.企業ごとにも存在していたりしますね.
 
自分の記憶では 2016 年に東京で行われた勉強会の懇親会で,寿司ネタのみをかっさらい消えていった参加者がいたことが大いに業界を駆け巡り,また記事自体は見つけられなかったのですが,ほぼ同時期に Twitter で勉強会のハッシュタグをつけて登壇者の容姿等に言及したものが問題になるなどして,そのあたりから決まりごとが必要だね,という意識が運営だけでなく参加者側にも根付いていったように記憶しています.
scrapbox.io  
実際,このあたり苦労しているみなさんのコメントを寄せた記事を書いていますので,リンクしておきます.
tomio2480.hatenablog.com  
きっとみんなの願いとしては,こんな決まり事なぞなくとも,平和に過ごして充実するのが一番だと思うのではないでしょうか.
 
その思いも非常によく理解できます.もしかすると人によっては,関係する全員が悪者である前提に立ち,信じていない運営が考えたもののように感じる方もいらっしゃると思います.
 
もちろんほとんどの運営はそんなことは思っていないはずですし,過去の多くのカンファレンスや勉強会は平和にやれているものもあることは事実でしょう.
 
それでも,やはり決めておくに越したことはありません.
 

無意識の違いから生まれる不幸

特に CoC を作るにあたり着目されているのはハラスメントについての制限と対応です.
 
具体的に何を制限し,どういった対策をすることを書くのかについて,ここで細かくは触れません.様々なカンファレンスの CoC を眺めて共通する事項が,それに該当するのかなと思います.
 
ここで制限されることは法に触れることはもちろん,そうではない個人間での認識差に起因するものや,この空間にそぐわないだけの別の空間であれば歓迎されることも含まれます.
 

個人間のやりとり

それぞれのコミュニケーションの癖による「これくらい」の範囲をあらかじめ狭めておくことで起こる不幸を防ぎます.
 
とはいえそれなりに関係ができていて,昔からお互いによくわかっているなどの背景があれば,ここにある限りではないでしょう.
 
そういう場面では馬鹿らしく感じるかもしれませんし,新たな関係も深まっていかないじゃないかと思われるかもしれませんが,ここではそれ以外の方法で頼むということです.
 

別の空間では認められていること

これは OSS コミュニティなのか,草の根の地域技術コミュニティなのか,DevRel マーケティング的な販促を目的としたイベントなのかで変わってきます.
 
特に自分は OSS コミュニティをベースとした草の根コミュニティが主になるため,自社の宣伝や過剰な紹介,ビジネスに関する勧誘や採用活動を主目的と認識されうる活動を制限することが多いです.
 
これだけ IT 業界が発展して,ビジネスの関係からしかこの業界が見えていない人も増えました.しかしそれでも,そうではない趣味やボランティアの文化は非常に尊く,大事にすべき文化だと考えています.
 
これらの文化を守り,醸成していくためには,世間からみて本流と認識されているものでも,ときに拒否する必要があります.
 
こういった守りの姿勢を貫くためにも CoC の策定は必要です.
 

効力はイベント当日だけではない

イベントに関係する決まりごとのため,イベント当日に守るものと勘違いされがちですが,そうではありません.
 
イベントをやるぞと決めて,カンファレンスを作るスタッフが 1 人でも集まれば,そこから効力を発揮します.
 
つまりこの策定した CoC が最初に守るのは運営スタッフです.
 
あまりイメージができないかもしれませんが,スタッフ間のハラスメントも存在しないとはいえません.
 
カンファレンス運営の経験量の差,エンジニアとしての職位の差,特定スキルの熟達度合の差...... 経験の少ない側が気後れする要素はいくらでもあります.
 
だからといって腫れ物に触るような物言いをしろというわけではないですし,多少の厳しい物言いも必要な場面もあるでしょうから,そこは状況に応じて,常識の範囲内で,ということになろうかと思います.
 

真によい空間をつくるために

本当によい空間を作りたいと思うなら,たとえ CoC を策定した本人であったとしても,守らないのであれば追い出すべきです.
 
長の権限を利用して,自分の居心地のよい空間をつくるためだけに決まりを捻じ曲げるなんてのは誰も歓迎しません.
 
もちろん,はじめから主催の居心地をよくすることを是とした集まりをやるのであれば,その限りではないですし,途中で決まりごと自体に問題があるとわかれば,迅速に変更すべきでしょう.
 
一方で,声が大きな文句を言いたいだけの人に振りまわされてもいけません.その声が本当にこの空間をよくするのか,この空間の至らない点を指摘しているのかに着目すべきです.
 
個人の思いも大事ではありますが,空間はお客さまをもてなすためにあるのかどうか思い返す必要があります.参加者相互の関係から成り立つものであれば,お客さまはいないわけで,これには該当しません.
 
重ねてになりますが,どこの誰のどんな感情や声であっても,この空間が元の目的に沿ったよいものにできているかどうかの一点だけに集中して,改善等にあたるべきでしょう.
 
どうしてこの会が存在するのか,どういった空間であり続け,どういう満足を打ち出していくのか,ここを真剣に考えられているかどうかが試されます.間違いなく踏ん張りどころです.
 
自分が事あるごとに引用している記事をここでも紹介しておきます.大変有名な話で「ことに向かう力」です.
note.com  
人が増えるといろんなことが起きますし,気持ちも落ち着かないことでしょう.見えるところにも,見えないところにも苦労はたくさんあるものです.
 
主催者のみなさん,お互い正気を保ってよい場づくりをやっていきましょう.
 

追伸 : 最近の「おかしくなったら教えてくれ」

この記事を書くに至ったできごとがいろいろあるんですが,2 つほど紹介します.
 
ひとつはきのこカンファレンス2025でおこなわれた,きじまさんの発表です.ページ数は 51 ページ目あたりに書いてあることが今回の内容のきっかけです.

 
この自分のことを正しく判断するのは難しいということを,自分でどうにかする方法の一つとして,正気のうちに作った制度で狂った自分を追い出すという方法を提示したかったというのがあります.
 
ふたつめは,施設と病院を行き来して 8 年,まったく話もできなくなった自分の祖母に関連して,親戚と話したことです.
 
自分の祖母は元気いっぱいにチャリでどこかに出かけたり,急に何も言わずに旅行に行って親戚一同が探しまわるなど,よくいる元気な人間で「おかしくなったら即座に閉じ込められて老いて死ぬから教えろ」と口酸っぱく言っていました.
 
家でボヤ騒ぎがあり原因が祖母の火のかけ忘れであったこと,いつもどおり急にいなくなったかと放置していたら本当に徘徊していて保護されたこと,なんとか施設に入れてはみたが 2 月の昼間に 2 m 以上高いところにある窓から脱走し -20 ℃ の外に出て雪の上を裸足で 3 時間かけて歩いて家に帰ってきてしまったこと,様々なことがあって本人に「おかしくなっている」と幾度となく家族から伝えましたが,まったく聞く耳を持ちませんでした.おかげで病院に行く回数も増やすことが難しく,どんどん処置が遅れてしまいました.
 
ひとり身の祖母なのに,今まで口酸っぱく伝えてきた言葉が一人娘から発せられても受け入れられなかったわけです.
 
こうなると心情としてもしんどいものがあります.しかし,おかしくなっているのは誰の目にも明らかでしたので,病院にいかせようとかなり多くの人間が苦心して時間を費やしました.
 
何とか乗り越えるために消耗した精神の度合いはなかなかなものです.人間が相手である以上,機械的に処置することに良心の呵責が発生するのは否めません.
 
「おかしくなったら教えてくれ」ではおかしくなった人をどうすることもできないことを痛感しました.
 
最近,無職になってこうした親戚回りのことも細目にできるようになり,いろいろなことを思い出すこともあります.無職ですが技術カンファレンスのスタッフは継続しており,このふたつの出来事が自分の中で重なり,この記事を書くに至りました.
 
人間の営みは難しいですね.自分のことくらい自分で制御したいと誰もが思うでしょうが,人間に任せるとうまくいきません.CoC だって解釈の幅と差はゼロにできません.
 
それでもあるに越したことはなくて,より人間から苦しい判断を機械的に処置できるように外に出す仕組みが CoC なんだなと思いました.
 




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