- 作者: 佐藤哲也,森見登美彦(解説)
- 出版社/メーカー: キノブックス
- 発売日: 2019/04/09
- メディア: 文庫
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この容赦ない傑作についてどのように語ればいいのか――登美彦氏はあれこれ悩み、うーんうーんと唸りながら解説を書いたのである。以下、解説の冒頭を抜粋。
青春とは『ひとり相撲』である。
たとえばひとりの黒髪の乙女に恋をしたとしよう。
その恋を成就させるためには乙女との距離を縮め、しかるべき地点で自分の思いを相手に伝えなければならない。恋愛成就の可能性を見きわめるべく、我々の精神は目まぐるしく活動する。乙女からのなんということもないメールを熟読玩味し、その一挙手一投足から膨大な仮説を組み立て、希望的観測と絶望的観測によって揉みくちゃにされる。しかし実地に検証する勇気のないかぎり、意中の乙女の胸の内は推測するしかなく、自分で作りだした幻影との駆け引きが続く。そこに「恋のライバル」が現れようものならもうメチャメチャである。我々は幻影をめぐって幻影と争う。
これをひとり相撲と言わずしてなんと言おう。
ヘンテコであり、ユーモラスであり、緻密であり、しかも情け容赦なく、そして美しい小説である。
なお、登美彦氏が暗躍した竹林小説アンソロジー「美女と竹林」にも、佐藤哲也氏の「竹林の奥」という短篇が収録されている。こちらもまた「一体なにが起こっているんだ……」と読み進めていくうちに、脳味噌が竹林に取り囲まれていくような作品である。 ぜひどうぞ。