今週読んだ絵本です。

「そうじきの なかの ボンボン」
作・絵:加藤絢子
(フレーベル館 2024年2月 初版第1刷発行)
もしかしたら、ひょっとすると?
主人公は古い掃除機の中で暮らす「ボンボン」と「ボンボンパパ」
白いモフモフのかたまりのような姿、まん丸い目といつも微笑んでいるような口元に愛嬌があります。どうやらふたりっきりで暮らしているようです。
掃除機の中の一見ガラクタに見えるものを上手く使って、ボンボンパパは生活に必要なものをなんでも手作りしちゃいます。ボンボンパパにボロキレを継ぎ接ぎして作ってもらったてるてる坊主風の人形は、ボンボンの大切な友だちです。
ふたりは掃除機の中でひっそりと、しかしのんびり楽しく暮らしていましたが、ある日その生活に思わぬ変化が・・・
全体を通してセピア色に染まる絵本の世界は、穏やかさと切なさを併せ持っていて、寂しげでもあり居心地が良さそうでもあり。背景の細部まで克明にリアルに描き込まれたボンボンたちの住む世界は、私には見えない知らないだけで、本当にどこかに存在しそうな気にもなります。
小さな豆電球の明かりに映し出されたボンボンパパやボンボンの影には、ふたりの別な姿が映し出されているようで、可愛らしさだけではないミステリアスな雰囲気も醸し出されて、すみずみまで絵の世界を訪ね歩きました。
ふわふわと頼りなげなふたりですが、どこにいても、その場にあるものを自分たちの暮らしに役立て、大切なものに変え、居心地の良い楽園にしてしまう逞しさもこの絵本の見どころだと思います。
このふたりは一体何者なのかとか、父と子だけでお母さんはどうしたんだろう?とか、見る側によって感じることもいろいろありそうな物語。私はと言えば、しばらく物置の隅っこに置いてある掃除機の中をそっと覗いてみたい気になりました。
作者の加藤絢子さんは静岡県生まれ。本作で第10回武井武雄記念、日本童画大賞 絵本部門審査員特別賞を受賞しています。
