今週読んだ絵本です。

「ジョン・ギルピンのゆかいなお話」
文:ウィリアム・クーパー
絵:ランドルフ・コルデコット
訳:吉田新一
「コルデコット」、絵本の紹介をして作者や作品の経歴を調べていると、ときどき目にするお名前です。その名を冠した「コルデコット賞」といえば、アメリカで1939年から、その年度の最優秀と見なされた絵本に贈られる賞のことです。
ランドルフ・コルデコットさん(1846-86)は、イギリス中部チェスター生まれ、ヴィクトリア朝時代のイギリスを代表する絵本作家。はじめは銀行に勤めたそうですが、投稿した雑誌のスケッチがきっかけで絵の道へ転向しました。わらべ唄やバラッド、ノンセンス詩などを素材にした絵本の名品を数々遺しています。
本作もそのひとつ。イギリスの詩人ウィリアム・クーパーさん(1731-1800)の、不滅のユーモア・バラッドとしてイギリスで親しまれている作品を基にしています。本作のオリジナル版原作は1878年ロンドンでジョージ・ラウトリッジ&サンズより刊行されました。
軽妙な筆遣いで描かれるのは、18世紀当時のロンドン郊外の風物や普通の人びとの暮らし。色付けされた絵もあれば、単色のラフなペン画もあります。
物語のあらすじは、奥さん想いで仕事熱心な洋服生地屋のギルピンさんが、20年目の結婚記念日をレストランで祝おうとしたところ、思いがけない事態にてんてこ舞い、周囲を巻き込んでドタバタ、最後は本人たちの意思にかかわらず丸~く収まるというもの。
登場する市民たちのクラシックな衣装や、ギルピンさんが馬に乗って駆け抜けるロンドンの長閑な風景などから、当時の人びとの暮らしぶりが活き活きとユーモアたっぷりの絵で表現されています。
言葉では表現されていない時代背景の描写も見事。人間だけじゃなく、犬や猫やアヒルやロバもその個性をしっかり主張する様子で登場します。中でもロバは物語の進行に一役買って物語を盛り上げています。
そしてそして、何といってもインパクト強めだったのは「カツラ」。18世紀、男性はこんなヘアスタイルが一般的だったことを知らなかったのでドッキリしました。ギルピンさんのカツラは物語の最も大切な笑いの要素となっています。
さすが、コルデコットさん、物語の楽しさが絵から溢れてくるような躍動感ある作品でした。
