今週読んだ絵本のご紹介です。

訳者・前田まゆみさんを追いかけての出会いでした。
「あおいアヒル」
作:リリア
訳:前田まゆみ
(主婦の友社 令和元年10月31日 第1刷発行)
実はどんなストーリーか、全く予想もせずページを開いた絵本です。
これも後から知りましたが、本作は2020年産経児童出版文化賞翻訳作品賞を受賞しています。
本書のプロフィール文によると、作者のリリアさんはブエノスアイレスで生まれ育ったのち韓国に渡り、子どもの絵本にイラストを描いている方。本作は、「認知症の祖母を見守る家庭で育つ中で、将来の両親を想い、ワニのように強く優しく見守りたいと描いた。」という作品です。
静かな気配に包まれ気持ちの落ち着く色合いのブルーとグレー2色を使って「あおいアヒル」の世界は描かれています。青い花びらが舞い散る空間のなか、明るい目をした灰色で大きなからだをしたワニが、くちばしと足がブルーのアヒルを抱っこしているシーンから物語は始まります。
ママ おぼえてる?
この あおい いけ。
はじめて であった ときの こと…
ひとりぼっちの小さな赤ちゃんワニと心優しいあおいアヒルが、ある日偶然出会い、深い絆で結ばれた親子になっていく物語。
月日が流れ、小さかったワニは、どんどん大きくなって、あおいアヒルの何倍もの大きさになっていきます。ワニの成長を見守るあおいアヒル。一緒に過ごした日々は穏やかで優しさに満ちていましたが…
あおいアヒルに訪れた体調の変化を悲しんだりすることなく自然に受け止め、いつも優しく見守り世話するワニの姿は、とても温かい気持ちを読者に運んでくれます。
ワニの気持ちが伝わって、あおいアヒルも心地よさそう。
たとえあおいアヒルがいろいろなことを全て忘れてしまっても、ワニが傍らで寄り添い過ごした日々を忘れずにいるなら、きっといつまでも優しい時間が続いていく…
認知症の家族と向き合うと、時に疲労の積み重ねで余裕がなくなってしまうこともありますが、どんな状態になっても認知症の人にも相手の気持ちは伝わると思っています。良い感情も悪い感情も、必ず伝わっています。お世話が完璧にできなくても、絵本のなかのワニのような気持ちさえ失わなかったらそれで充分、きっと本人も一番大切な心の尊厳を持ち続けていられると思えるお話でした。
前田まゆみさんのプロフィール文には、こんな素敵な一文もありましたので最後にご紹介したいとおもいます。
絵本は、”世界の本質的な何か”を伝える力を持つと思っていて、この絵本も、それにあたると感じている。
