12月に入りました。今週はクリスマスにちなんだ絵本を3作品ご紹介します。

1冊目は、史実に沿ったクリスマスの成り立ちがわかります。
タイトルもそのものズバリ。
「クリスマス」
作:バーバラ・クーニー
訳:安藤紀子
(ロクリン社 2015年11月2日 初版第1刷発行)
作者のバーバラ・クーニーさんは以前記事にした「ルピナスさん」を書いた方。
本作では、モノトーンに朱色と緑で色付けした静謐で厳かな感じのするイラストから聖書が思い起こされました。
丁寧で分かりやすい文章で書かれているのは、イエスキリストの誕生に纏わる物語と、どのようにしてクリスマスを祝うようになったか、そしてクリスマスにはそれぞれの国でどんな祝い方をしているか。
クリスマスの成り立ちについて、思わぬ発見があるかもしれません。

次は軽快なテンポが小気味良い
「いちばん ちいさな クリスマスプレゼント」
文・絵 ピーター・レイノルズ
訳 なかがわ ちひろ
(主婦の友社 2013年11月20日)
こちらには、クリスマスの歴史とか由来とか、そういう話は一切出てきません。
小さな男の子のローランドの「クリスマスプレゼント」に対するあくなき願望がひたすら描かれて行くのみ。その願望の膨らみ方が半端ない。地球規模、いえいえ宇宙規模の大きさまで行っちゃいます。さて、ローランドの思いの到達点はどこに?それは絵本を読んでのお楽しみに。
子どもたちにとっては、数日もしくはもっと前からこの日が来るのを待ちわびて、サンタクロースさんに何度も真剣にお願いする大事なイベントとしてのクリスマスを、ポップで明るいイラストとともに楽しく愉快に描いた作品です。

次の作品、テーマはクリスマスじゃないけれど
「やまなし Mountain Stream」
文:宮沢賢治
英訳:アーサー・ビナード
絵:山村浩二
(今人舎Imajinsha 2022年4月8日 初版発行)
宮沢賢治さんの「やまなし」に、アーサー・ビナードさんが英訳した文章が併記されている作品です。
当然ながら、といいますかクリスマスとはほぼ関係のないお話ではあります。強いて言えば後半「12月」の物語が描かれていることが共通点となるでしょうか。
もちろん「クリスマス」という言葉は全く出てきません。ですが、「クリスマス」の「ク」の字も出てこないかというとそうではないんです。「ク」の字は出てきます。大事な大事なキーワードの最初の文字として。
私は実はしっかりとこのお話を読むのは初めてでした。ですが、この言葉は耳にして、その響きの不思議さにしっかり覚えていました。どういう意味なのか分からないということも印象を強くしていた一因だと思います。
「クラムボン」
クラムボンって何なのでしょう?ひとりではないようで、笑ったり死んだりするので、生きものであり、個体の固有名称ではなく種類なのでしょうか。
青白い水底に住む兄弟カニの子どもの会話で物語は進んで行きます。
山村浩二さんの繊細なタッチと淡い色合いで描かれるイラストから、水底の静けさや水中での出来事が神秘的な雰囲気で伝わってきます。
宮沢賢治さんの言葉は読んでいる者の想像力を掻き立ててくれます。なにかはっきりとはわからない「畏れ」のようなものが全体を静かに薄いベールで包んでいると私には感じられました。
「クラムボン」
アーサー・ビナードさんの英訳で「クラムボン」は全く違った言葉で表現されています。そのことについての訳者の詳しい解説も巻末の1ページに掲載されていて興味深いです。
クリスマスにちなんだものではないけれど、英訳と読み比べてみるのも面白い本作、子どもだけでなく大人にも素敵なクリスマスプレゼントになりそうだと思いました。



