今週読んだ2冊のご紹介です。

1冊目は、パリオリンピックの余韻から手に取った絵本
「げんきなマドレーヌ」
作・画:ルドウィッヒ・ベーメルマンス
訳:瀬田貞二
(福音館書店 1972年11月10日 発行)
今年開かれたパリオリンピックでは、選手の方々の活躍も素晴らしかったですが、ところどころに紹介されるパリの街並みや観光名所・歴史ある建造物の映像にも魅了されるものがありました。さすがのパリ。エッフェル塔が背景にあるだけで、オシャレな雰囲気が倍増します。
この絵本の表紙にざっくりと描かれたエッフェル塔も然り。シンプルな描き方なのに、エッフェル塔と認識するだけでなぜかオシャレオーラを感じます。
フランス生まれの作家さんなのかなと思ったら違いました。紹介文によると作者ルドウィッヒ・ベーメルマンスさん(1898-1962)は「チロルのメーランで生まれました」とあります。チロルのメーランってどこだろう?
チロルで検索すると・・・出てきましたチロルチョコ。そうですよね、やっぱり。私だってチロルといえばチロルチョコ。初めてHPを見ましたが、とてもかわいくてとても美味しそうなHPです。まだご覧になって無い方は、ぜひ一度HPを訪ねてみてください。企業理念も素敵です。
と、チロルの由来が載ってないかなと見てみましたが見つけられなかったので、再度検索してみると・・・チロルのメーランは北イタリア南チロル地方の第2の都市(Meran/Merano)のこと。
ちなみに「チロル」という広域地名はチロル城の城主チロル伯が勢力を拡大した領土全体に由来し、メーラン近郊のチロルにチロル城はあります。
だいぶ横道にそれてしまいましたが、メーランの写真を眺めたりチロルを調べていたらプチ旅をした気分になりました。
作者の経歴はユニークです。14歳ごろ学校を中退、16歳でアメリカに渡り、ニューヨークのホテルで長い間働きながら絵の勉強を続け、1925年にその地でレストランのオーナーとなりました。レストランの壁やアパートの日よけなどに描いた絵が編集者の目にとまり、子どもの本を書くことになったとのこと。本作の絵を見て最初に感じた印象は自由自在な気風。のびのびとやりたいことをやっている感じ。作者の生き方生き様が絵にも表れている気がします。
物語は、パリの古い屋敷に住む12人の女の子たち、その中でも一番小さな女の子マドレーヌが主人公です。12人はいつも同じ服を着て揃って行動します。ご飯を食べる時も、お出かけするときもきちんと二列に整列して行動。
ところがある日、一番小さいけれど一番勇敢なマドレーヌにあることが起きて・・・
原作が発表されたのは1939年、今から85年前の作品ですが、古さを全く感じさせない活き活きとした画風にまさしく元気をもらいました。
思わぬ一大事件があっても、おしまいには大きな笑いに変わる、絵もストーリーもユニークな絵本。
女の子たちの背景に、オペラ座やノートルダム寺院、ルーブル美術館などパリの名所が描かれていて美しく叙情豊かな雰囲気も醸し出しています。
ちなみに「マドレーヌ」は作者が1935年に結婚した奥さんの名前。本作に次ぐマドレーヌシリーズ第2作「マドレーヌといぬ」はコールデコット賞を受賞しています。

もう1冊はイタリアの代表的な昔話です。
「三つのオレンジ」
作:剣持弘子
絵:小西英子
(偕成社 1999年1月 1刷)
作者の剣持弘子さんのあとがきによると、
「三つのオレンジ」はイタリアを代表する昔話の一つです。東洋原産といわれるオレンジに象徴されるように、遠い昔、東方文化の影響をたっぷり受けたイタリアらしいお話です。
とあります。
オレンジの原産地がどこなのか、気にしたこともなく美味しくいただくばかりでしたが、この機会にまたまた検索。AIの概要によると「オレンジはインド東部のヒマラヤ山脈からアッサム地方の野生ミカンが起源」とありました。インドから中国に伝わり、中国を経由してヨーロッパへ。日本にはそのヨーロッパを経由して、明治時代に伝わったとされています。(一方、日本国内で古くから栽培されていたミカンは、原産地インドから中国を経由して、古代日本に伝わりました。)
オレンジは物語の中で、重要でミステリアスなキーアイテムとして使われています。
この物語、始まりは主人公の王子の突拍子もない思い付き。指をうっかり傷つけて、できた小さな傷から血のしずくが白いリコッタチーズに落ちました。それを見て《ミルクのように白く血のように赤い》娘と結婚したいと突然思い立つのです。
思い立ったらまっしぐら、なんのあてもなく《ミルクのように白く血のように赤い》娘を探して旅に出てしまいます。
王子は、行き当たりばったりだし、誘惑に弱いし、言いつけを守らないしなのに、なぜか次々うまくいっちゃいます。途中悪者があらわれて、王子と《ミルクのように白く血のように赤い》娘を引き裂こうとしますが、たとえ周りがなんといってもやっぱり自分の欲望に正直な王子の性格が功を奏して結局ハッピーエンドを迎えるのです。
どのあたりが東方文化の影響を受けているのか、勉強不足の私にはわかりませんでしたが、あんまり深く考えすぎず、自分の気持ちに正直に行動する王子を、最後は好意的に見つめる自分がいました。
格調高い雰囲気のイラストで描かれる実り豊かなオレンジ畑や、お城の佇まい、何よりも女神さまのように美しい《ミルクのように白く血のように赤い》娘も必見です。

