今週は2冊をご紹介します。

1冊目は、
1948年にコールデコット賞を受賞した作品です。
「しろいゆき あかるいゆき」
絵:ロジャー・デュポアザン
訳:江國香織
(ブックローン出版 1995年10月10日 第1刷発行)
※現在はピーエル出版
あまりに長く暑い日が続いている反動か、冬の寒さが恋しくなって手に取りました。
作者のアルビン・トレッセルトさんが、冬の夜、雪の中のニューヨークを歩いているときに、この物語は誕生したのだそう。
アルビン・トレッセルト(1916-2000)さんはアメリカ・ニュージャージー州生まれの児童書作家。ニューヨークの子供向け本の出版社で長年働いていました。
画家のロジャー・デュポアザン(1900-1980)さんはスイス・ジュネーブ生まれ、のちにアメリカに移住し、ニューヨークで暮らしてから帰化するとニュージャージー州に引っ越しました。
物語に現れる市井の人びとの暮らしや広々とした平原の風景、この作品からはふたりの、素朴で自然豊かなニュージャージー州の田舎町への温かい愛情を感じることができます。
静かな夜に降り積もる雪の様子を描いた作者の詩から物語は始まります。
誰かに読んでもらいながら目を閉じて想像すれば、その雪が優しく自分の上にも舞い降りてくるのを感じられる穏やかで美しい詩です。
雪が降りそうな時って、なんとなく気配を感じますよね?
物語では、郵便屋さんやお百姓さんやお巡りさんが空を仰いでいます。
薄く白みがかったグレーが大きな刷毛で一気に延ばされたような画面からは、冬の寒さと、どことなく柔らかでシンとした空気感が伝わってきます。
使われている色は少なく、グレーの濃淡のほかには鮮やかなレモンイエローとくすみがかったオレンジ色。シンプルで印象深い雰囲気を湛えています。
お巡りさんの奥さんが雪の気配を感じるのは、つま先の痛み。
子どもたちも野ウサギも雪が降りそうだと感じています。みんな雪の気配を察知すると、積もった時の準備を始めます…
思いがけない出来事や大層なイベントなどなくても、どこにでもありそうな普通の人びとの普通の暮らしを、丁寧に細やかに掬い取って観察して言葉にすると、こんな素敵な優しい物語になるのだと微笑ましくなりました。
文章と絵によって、屋根にも車にも道にも原っぱにも、世界のすべてに雪が降り積もった時の、あの静けさや明るさが見事に表現されています。
そんなとき、みなさんならどんなふうに過ごしますか?物語のなかの子どもたちのように外で雪玉を作って遊ぶ?それともお巡りさんの奥さんのように揺り椅子に座って編み物をする?
物語の終わりとともに訪れる春の足音もぜひ楽しんでください。

次は
タイトルからは全く想像しなかった展開ににっこりした作品です。
「ヴィンセントさんのしごと」
文:乾栄里子
絵:西村敏雄
(福音館書店 2019年10月1日 月刊「こどものとも」発行
2024年2月25日「こどものとも絵本」第1刷)
物語はヴィンセントさんのとある一日を描いています。朝起きてから、朝食をとって仕事場に行って夜帰宅して夕食をとって寛いで眠りにつくまで。
たぶんヴィンセントさんは、いつもきちっとルーティンを守って行動するタイプじゃないかな?決まった時間に決まったメニューの食事、決まった服を着て一分一秒遅くもなく早くもないちょうどぴったりの時間に出勤、眠るときの姿勢も仰向けに微動だにしない・・・これは私のヴィンセントさんの一日を見たあとの印象。真面目で穏やかで慌てず騒がず、白シャツに蝶ネクタイが良く似合うチョビ髭の紳士。
ヴィンセントさんの職場は、ヴィンセント事務所。ヴィンセントさんの仕事は、世界中の子どもたちから送られてきた手紙を読むことからはじまります。手紙の内容は子どもたちの悩みだったり願いだったり。
たくさんの手紙の中から、ヴィンセントさんがその日の仕事に選んだ手紙には
ぼくのところには ゆきが ふりません。ゆきが みたいです。ゆきで あそびたいです。 みなみのしま トント
と書かれていました。
ヴィンセントさんの英知と行動力は想像以上です。今回の依頼、難しそうですがヴィンセントさんは淡々と仕事を進めていきます。高所恐怖症の人には無理かも?というような高度な作業にも、慌てず騒がず落ち着いた仕事ぶりのヴィンセントさん。どんなときにもポーカーフェイスのヴィンセントさんが愉快です。シンプルなタッチで描かれる素朴な雰囲気のイラストはヴィンセントさんの生真面目さを丁寧に表現していて、見ていると心が和みます。
もちろんヴィンセントさんはトントの願いを見事に叶えてくれるのですが、どんな方法でトントの願いを叶えたかはお話を読んでのお楽しみに。
今年の冬はどのくらい雪が降るのか、私の住む地は、降るとなったらとことん降って雪かき三昧でへとへとになることもあり、待ち遠しいような、そうでないような。ヴィンセントさんに、程よい量の雪が降るようお願いしたい気持ちです。

