今週読んだ2冊です。

1冊目は最近のお気に入り出久根育さんが絵を描いた作品
「ロシアの民話 マーシャと白い鳥」
再話:ミハイル・ブラートフ
文・絵:出久根育
(偕成社 2005年10月 初版第1刷)
表紙絵からもうかがえますが、くすんだ色合いの赤茶色や、深みのある紫がかった黒色が印象的な味わいのあるイラストです。
再話ミハエル・プラートフ(1913-1963)さんは、ロシアのモスクワ州生まれ。新聞社やラジオ局で働いた後、1935年からロシアや旧ソ連諸共和国の児童向きフォークロアの採集や研究、昔話の再話を始めた方。
文・絵を手掛けた出久根育さんのあとがきによると、この物語はロシアに古くから伝わる昔話だそうです。同じ物語をほかにもアレクサンドル・アファナーシェフやアレクセイ・トルストイが再話していて、それぞれ少しずつ内容に異なる点があるとか。再話する方の個性がエッセンスになっているのでしょうか。
それは、おとうさんとおかあさんが町へ出かけて、小さな姉弟、姉のマーシャと弟のワーニャがお留守番することになったときの出来事でした。
父母から弟の面倒を見るように言いつけられたマーシャですが、弟を残して遊びに出かけてしまいます。するとマーシャがいない間にワーニャは突然現れた白い鳥に連れ去られてしまいます…
マーシャは遊びから戻ると、どこにも見当たらないワーニャを探して、たったひとりで黒い森のなかへ向かっていきます。
そこで出会うのは、土でできたペチカや、赤い実をいっぱいつけたリンゴの木やミルクの小川。マーシャはそれぞれに弟の行方を尋ねます。すると、みんな少し困っていてマーシャに頼みごとを聞いてくれたら教えてあげると答えます…
さてマーシャはどうするでしょうか。
小さな女の子の必死の大冒険、勇気をもって前に進む力をもらえる物語です。
ところで、この物語にはババヤガーという魔女がでてきます。この魔女はロシアの昔話の常連さんでいろいろな物語に登場するそうです。怖いだけでなく、物語によっては、人のためになることをしたりもする存在。ふと、日本の昔話に出てくる鬼婆や山姥を思い出しました。
出久根育さんは本作で2006年第11回日本絵本賞大賞を受賞しています。

もう1冊は考える児童書
「働くってどんなこと?人はなぜ仕事をするの?」
10代の哲学さんぽ(9)
文:ギヨーム・ル・ブラン
絵:ジョシェン・ギャルネール
訳:伏見 操
(岩崎書店 2017年1月31日 第1刷発行)
なぜ人は、働くのでしょうか。今更ですが、私も最近改めて気になっている話題なので読んでみました。
これをもって答えがわかるというものではないですが、多方面から働くことについて考えるきっかけになる本だと思います。
大きな活字で文字数は少なめ。手軽に哲学にも近づけます。児童書ですが、大人にも響く箇所が点在しています。特に、働きたくても働けなくなったら…といったことにも言及されているので身につまされました。
内容は5つの章に分かれています。
(目次)
1.人それぞれの時期
2.生きるために働くのか、働くために生きるのか?
3.愛すること、働くこと
4.人間らしく、胸を張って生きるために
5.仕事のない生活
働くことを全面的に肯定しているわけでも否定しているわけでもありません。
第1章では、こんな問いかけが書かれていました。
「生きることと働くことは、ぜったいに結びついているのか」
みなさんは、どうお考えになりますか。
また本作では著名な哲学者や俳優が語った「働くこと」についての言葉の数々が掲載されていて目を引きました。
フランスの劇作家モリエールや、ユダヤ系の女性哲学者ハンナ・アーレント、喜劇王チャーリー・チャップリン、ドイツの哲学者カール・マルクス等々。
フランスの哲学者ブレーズ・パスカルはこんな言葉を残しているそうです。
「人間の不幸は、部屋でひとりおとなしくしていられず、外に出るからこそ起こる。」
対してこちらもフランスの哲学者ジャン=ポール・サルトルは
「すべては外にある。自分自身すら外にある。すなわち、私は外に、他人の集う世界のただ中にいるのだ。」
と言っています。
どうしたらいいのか、わからなくなる?
第5章では働くことの良い面と悪い面について掘り下げられています。読んでいくと、どちらか一方ではないことが見えてきます。
仕事について、働くことについて向き合い考えるときに、繰り返し手に取ってみたいと思う内容でした。新たな目線で見つめるためのヒントを与えてくれる本です。

