今週読んだ2冊のご紹介です。

1作目は、その世界観に絵本の醍醐味を感じた作品です。
「さかなくん」
作:しおたに まみこ
(偕成社 2022年5月 初版第1刷)
作者は1987年千葉生まれ、埼玉育ち。美大を卒業後、会社勤務を経て絵本の制作。
本作のイラストは写実的で現実的なのに独創的。ありそうでなさそうでありそうな物語の世界を創り上げています。
主人公は小学生の「さかなくん」。人間のさかなくんじゃなく、本物のお魚。
小学生らしい小さな勉強机や小さな本棚のあるさかなくんの子ども部屋の場面から物語は始まります。少し変わっているのは、その部屋にはエビが泳いでいることや、細かな水泡があちこちに漂っていること。ここは水の中みたいです。
さかなくんは丸っこい黄色いからだつきにエメラルド色の手びれと足びれがあって、ガラス玉のようなまんまるの目が無邪気で可愛らしい姿です。今は通学用のカバンに手びれを使って一冊の本(教科書かな?)をしまっているところ。
3つある縦長長方形の小窓からは明るい日差しがさしています。
さかなくんです。
しょうがくせいです。
きょうも さかなくんは がっこうへ いきます。
物語の書き出しが自然体で素敵です。絵本のなかでは「さかなくん」が小学校に登校するのは当たり前のこと。でも学校は水の外にあるので、学校に行くためには準備が必要です…
学校へ行くための準備が思ったより大変そうだったり、学校に通っているのは人間もいればトカゲもいれば猫も鳥も。保健室の先生は白衣を着たお馬さんだったり。
どこにでも見かけるような通学路の風景、教室や運動場の様子のなかで描かれるありそうでなさそうでありそうな生き物たちの小学校シーン。
全体を通して描かれる緻密で優しくて想像力に富んだイラストに心が和みました。
体育の時間のある出来事でさかなくんが落ち込んでしまう展開があるのですが、それをどのように乗り越えていくかも、さりげなくて微笑ましいです。
隣町にありそうな、さかなくんの住む清涼感たっぷりの世界をどうぞご覧ください。

もう1冊は実際の活動を絵本にした作品
「谷戸であそぼう 秋」
文:相川明子
絵:とみたしょうこ
(冨山房インターナショナル 2023年11月10日 第1刷発行)
文章を書いた相川明子さんは青空自主保育「なかよし会」を1985年に創設された方。「なかよし会」とは
1歳から4歳までの子どもを、保育者と当番母で保育しています。鎌倉市の真ん中にある「山崎の谷戸」を中心に、週に数回、山や海で遊びます。(本書あとがきより抜粋)
絵本では、小さな子どもたちが泥んこになりながら協力し合って畑の芋ほりをしたり、雨降る林の中で色とりどりのレインコートを着てお互いに助け合ったりするシーンが描かれていきます。
みんな生き生きしています。ケンカしてもすぐ仲直り。
様々な体験を通して社会性を学んでいく子どもたち。
そしてそこには、子どもたちを見守る大人の優しい目線があるように感じました。
野山をたくさん歩き回ったあと、みんなで食べるお弁当は、きっと格別に美味しいでしょうね~

