今週の2冊をご紹介します。

1冊目、この絵本のなかには一文字も言葉はありません。
「やっと きみを みつけたよ」
さく・え グオ・ジン
(パイ インターナショナル 2024年1月16日 初版第1刷発行)
物語はコマ割りされた絵のみによって展開されていきます。
主人公はふたり。薄茶色の毛むくじゃらな小犬、そして眼鏡をかけ長い髪をひとつに束ねた物静かな雰囲気の若い女性。
ここは公園?それとも広い野原?大きな一本の木の近くには木製のベンチが置かれています。ベンチの下には一匹のもじゃもじゃの小犬がうずくまっていました。
首輪もリードも見当たりません。ポツンとひとり、じっと動かずに丸まっていると、そこに先ほどの若い女性がやってきました。
彼女がベンチに腰掛けようとすると、小犬は急いで逃げて行ってしまいます。でも小犬は少し離れたところから、ベンチで新聞を読む彼女を静かに見ています。
夕暮れが迫り、彼女が立ち上がってベンチを離れ去っていくのを見届けた小犬は、またベンチの下へ。ここは小犬の住処のようです・・・
ふたりが少しずつ、本当に少しずつ近づいていく昼間の光景や
欠けた月あかりに照らされた蒼く染まった野原にひとりぼっちの小犬
言葉はなく紡がれていくふたりの物語。私の心はその場面場面で温かい夕日に包まれたり、深く寂しい夜の静けさに孤独を感じたり。
そうして心を通わせていったふたり。ある日、夕暮れが迫り家路へついた彼女の後を茶色い小犬は少し離れて追いかけて行きますが・・・
作者のグオ・ジン(Guo Jing)さんはカナダ在住の「言葉を使わずに、視覚的にストーリーを語るアーティスト。(本書より)」未邦訳ですが文字のない絵本デビュー作「The Only Child」も世界各地で高い評価を受けているそうです。
「いなくなってしまった愛犬ドウドウへ。あなたが恋しいです。」
・・・本作の巻頭に寄せられた作者の言葉です。

そしてもう1冊は
ああいえばこういう恋の駆け引きが今風?
「お金のない王女のおはなし」
文: アーシェラ・ジョーンズ
絵: サラ・ギブ
訳: 石井睦美
作者のアーシェラ・ジョーンズさんは女優であり作家。ロンドンとフランスを拠点に創作活動されているそう。イラストのサラ・ギブさんはロンドン在住。ふたりの共作絵本にはほかに「王国のない王女のおはなし」や「美女と野獣」があります。
とある王国に父王とジェフリーという名前の猫と暮らす若い王女のお話。
お城は雨漏り、庭の草はボウボウ。王女のドレスには穴。朝食にパンもなく・・・修理するお金も手入れをするお金も新しいドレスを買うお金もない!
でも王女に悲惨な感じはありません。城中の雨漏りにはロイヤルバケツで対応します。ロイヤルバケツ?お城にあるものには何でも「ロイヤル」が付いてるんです。
なんでこんなにお金がないんでしょう?それは父である王さまが自分の夢の実現のために行っている研究に原因が。そんな王さまを王女はとても心配しながら見守っています。
ある日、となりの王国から王子の妃を選ぶための舞踏会が開かれることになり、王女にも招待状が届きますが…
色鮮やかでキラキラしたイラストと、黒色がくっきりと際立って影絵のようなイラストが交互に出てくる絵本。
夢見るようにロマンチックでありながら、黒色が物語全体を引き締めて単なる可愛らしいお伽話に終わらせない雰囲気です。
王女は誰かに守ってもらうばかりの姫ではなく、自分の意見をしっかり言うし、いざとなれば幸せは自分で掴み取ります。寄り添う猫のジェフリーもいい味を出しています。その状況判断の的確さは誰よりも力強い味方です。
昔ながらのプリンセス・ストーリーに今どきのしっかり女子のエッセンスも効いた美しくて愉快なお話でした。


