今週読んだ2冊です。

1冊目は素朴でユーモラスなひつじたちの目線に吸い込まれて手に取った絵本
「こひつじクロ」
子どもの文学・緑の原っぱシリーズ8
作・絵:エリザベス・ショー
訳:ゆりよう子
(童話出版社 2023年1月20日 第1刷発行)
※1993年に岩崎書店より刊行された作品の復刊
何も考えていないような、全てを見透かすような主人公の「こひつじクロ」の目が、我が家の黒猫にそっくりで魅力的です。
羊飼いのおじいさんと相棒の牧羊犬ポロが名脇役の良い味を出してます。
おじいさんは優しくてのんびり。羊たちを放牧中も丸太に腰かけて羊の毛糸でせっせと編み物。
対して牧羊犬のポロはしっかり者。羊たちの管理だけじゃなく経営向上にも思い入れが強い老練なタイプ。真っ白な羊の群れにたった一匹混じっている子羊のクロがいなければ、もっと群れが良くなるだろうと、クロを売り飛ばすことまで考えています。
クロはと言えば・・・ひとりだけ違う見かけを気にしてはいるのですが、性格はかなりマイペース。ポロの言うことなどきかずに、いつも何かを考えています。ポロ曰く「…ひつじのくせに、頭のつかいすぎだよ…」
原っぱでの暮らしはのどかに過ぎていくように見えましたが、ある日大嵐がやってきて大変なことに・・・
原作は1985年に発表されたものですが、今盛んに叫ばれている「多種多様性」を見事に表現している愉快な結末が爽快です。
訳者のあとがきによると、作者はアイルランドに生まれ、13歳でイギリスに移り住み、夫と共に旧東ドイツへ移住。「旅にでることと人と話すのが大好きな、ユーモアたっぷりの女性(あとがきより引用)」だったそうです。本作での、全てを自然体で受け止めるような、のびのびとした自由な気風も、様々な土地での出会いで培われたもののような気がしました。
羊飼いのおじいさんの「やっぱりおまえは、そのままが一番」という言葉が、どんなシーンで発せられたか、ぜひ実際に読んで感じてほしいと思います。

次の1冊は見た目より意外と生物学的な絵本です。
「ゾウのはなのあなは、どこまでつづいているの?」
絵:中山信一
文:高岡昌江
(あすなろ書房 2023年12月25日 初版発行)
イラストレーターの中山さんの書いたゾウは、灰色の折り紙でもサッと切り取ったようなシンプルさ。どの場面でも細密さはないのですが、文章のなかで示される大事なゾウの特徴をしっかり捉えています。
まずは人間の女の子の鼻の構造から断面図を用いて解説します。断面なので普段は見えない体の中身ですが単純で素朴なイラストなのですんなり目に馴染みます。横顔の内面がどうなっているか、鼻の終点と喉の境目がどのあたりにあるか、一目瞭然です。
そしていよいよゾウの鼻について。人間と同じ穴は2つ。長い長いゾウの鼻の終点はどこを辿ってどのあたりまで続いているのでしょう。鼻の穴の大きさはどうなっていくの?大きなゾウの長い鼻や頭から喉へと続く構造は、見開きページ全体を使って描かれています。人間のそれと似ているところもあれば違うところも。
ゾウの鼻の穴の終着点が見つかると、次はゾウの鼻がどんな機能を備えているかを微笑ましいイラストとともに、わかりやすく詳しく説明してくれます。ゾウの生活にとって、長い鼻は無くてはならないものだということがわかります。
文を書いた高岡さんは、日本各地のゾウに会いに行き、そのなかで一頭の孤独なゾウと出会います。末尾に記された”もう1つの「ゾウのはな」のおはなし”は必読。ゾウの鼻が、性格まで決定づける意味合いを持つものだということが、強く胸に迫ります。
私も、先日上野動物園に行ったときに見た親子ゾウのある光景が忘れられません。それは遠くから見ても心が温かくなるものでした。お母さんゾウが長い鼻で子ゾウの頭を優しくポンポンしたのです。可愛くって仕方がないといったお母さんゾウの鼻の動きに、「ゾウって愛情深いんだなぁ」としみじみ感じた瞬間でした。



