今週読んだ2冊のご紹介です。

1冊目はなんだかテツガク的?
「きみが 生きる いまの おはなし」
作:ジュリー・モースタッド
訳:横山和江
(文研出版 2023年9月30日 第1刷発行)
タイトルが気になって手に取った作品。
私がタイトルから得たイメージは、表紙絵の少女が何か悩んだり迷ったりする体験に向き合っていく筋立て。でも想像していたものとはまるで違った内容でした。
作者のジェリー・モースタッドさんはカナダ在住のイラストレーター・絵本作家。本書はカナダ国内外で高く評価されているそうです。
訳者の横山和江さんは、山形県在住の子どもの本の翻訳家で、やまねこ翻訳クラブ会員。多数の訳書があります。
最後まで読み終わった後に、気になって本書の原題を見ると「TIME IS A FLOWER」とありました。日本語にすれば「時は花です」。日本語のタイトルは、日本語版のために作られたようです。
共通するのは、「今」そして「TIME」、どちらもこうしている間にも止まることなく流れている「時間」について表していることです。
本書はこの世界にある様々な存在の、移り変わる形を通して、「時間」というものの在りようを描いています。それは本当に身近なもの、おひさまの光だったり、自分の髪の毛だったり。そのストーリーの冒頭に登場するのが原題に使われた「花」。それに対してストーリー全体を俯瞰して表しているのが日本語のタイトルと感じました。本書の中で表現されている様々な時間の経過は、どれも「今」この瞬間に起こっていること。
イラストは柔らかい繊細な線や、表紙にも使われている鮮やかなピンク色が特徴的。花や木や生き物や人々の顔が時とともに変化していく様が、可愛らしくも洗練された絵と語りかけるような呟くような短く的確な文で表現されていきます。
あなたにとって「時」とは、「今」とは?と静かに問いかけられているような絵本でした。

もう1冊は終始ほのぼの、眺めていると微笑みが勝手に出てきてしまうような絵本です。
「すずめの うんどうぼうし つくります」
作:西本鶏介
絵:黒井 健
(金の星社 2020年11月 初版発行)
作者の西本鶏介さんは「すずめが いちばん好き」なんだそう。
作者は1934年・奈良県生まれ。昭和女子大学名誉教授で、児童文学評論や民話研究などに幅広く活躍されている方。
このお話は、隣の家の柿の木に飛んできた一羽のすずめの頭に、小さな柿の葉がふわりと載った様子を偶然見たことから着想したそうです。
「…童話のすばらしさは、小鳥とだっておはなしができ、友だちになれることです。…」(本書作者のことばより抜粋)
生まれ故郷で帽子屋のお店を開いたおじいさんと、すずめの運動会で一等になるために練習に励む一羽のすずめの交流を描いた心温まるお話です。
このお話を時に美しく、時にしみじみと温かく表現しているのが黒井健さんのイラスト。黒井健さんは1947年・新潟県生まれの絵本作家、イラストレーター。「ごんぎつね」や「手ぶくろを買いに」など一度見たら忘れられない優しさ溢れる絵を描く方です。
ふわふわと淡い色合いとタッチで描かれるイラストは本書でも健在。ページを開くたびに場面全体から醸し出される優しさに引き込まれます。
帽子屋のおじいさんがすずめの頭の寸法を測っているシーンは微笑ましくて何度も見入ってしまいました。
本書で知りましたが、2003年に山梨県清里に自作絵本原画を常設する「黒井健絵本ハウス」を設立されています。
いつか訪れてみたい場所が、またひとつ増えました。

