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【今週の絵本】火と塩と水と

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今週読んだ絵本3冊のご紹介です。

1 「ひとつの火」

 文 新美南吉

 絵 ほんま きよこ

 発行 安城市図書情報館

 2023年10月10日 初版発行

 

この絵本は「ごんぎつね」や「手ぶくろを買いに」を書かれた作家の新美南吉さんゆかりの地である安城市にて創設された「安城市新美南吉絵本大賞」の第3回絵本大賞を令和4年に受賞した作品です。

ほんまきよこさんの描く日本の原風景、奥深い山のふもとの小さな村での生活は温かく慈愛に満ちています。そこには自然と共に暮らす静けさや慎ましさが描かれて、物語の言葉にはないその場の情景を臨場感豊かに表現しています。

 

物語の主役は表紙絵の丹前を着た少年でしょうか、それとも少年が持つマッチの火なのでしょうか。そのたったひとつの小さな火の行方に思いを馳せる少年の心に、私自身も遠くまで連れていかれたような気持ちになりました。

 

端的な文章で書き表された少年の想像力の広がりには、しみじみといつまでも胸に残る味わいがあります。

2 「塩男」

 絵と文 牧野 伊三夫

 発行 あかね書房

 2023年3月8日 初版発行

 

作者は福岡県北九州市生まれの画家で、食や旅についての著書も多く書かれている方。

この絵本を作るきっかけとなったのも、実際にある福岡県の糸島半島にある製塩所を訪ねたことから。製塩所の名前は「工房とったん」。半島のとったんにあることがその名前の由来です。

作者は製塩所の近くに住み込みで滞在し、製塩所や塩づくりを取材しました。そして作られたこの絵本は、海の水が「どのようにして塩になるか」を、海の水そのものの一人称で語られていきます。

イラストはとても自由奔放でダイナミック。海も山も太陽も一筆書きをしたような濃淡やカスレのある太めの線と、淡く滲んだ緑や黄色や紫の水彩絵の具で描かれ、波のような勢いがあります。夕日を浴びる海も暗く沈んだ海も生き生きと躍動しています。そんな海から塩男たちが丹精込めて作る塩は、私たちが生きていくためには欠かすことのできない生命の源であることを改めて気づかせてくれました。

3 「水はうたいます」

詩 まど・みちお

絵 nakaban

発行 理論社

2023年11月 初版

 

まど・みちおさんの詩「水は うたいます」に、広島県生まれのクリエイターnakabanさんがイラストを描いた絵本です。

この詩の初出は1975年銀河社刊「まど・みちお詩集6 宇宙のうた」。まど・みちおさんの詩はどの詩を読んでも心が躍る気がします。それはどうしてなんでしょう。誰でもが使うどこにでもある言葉なのに、それがまどさんの詩になって連なったとき、ひとつひとつの短い言葉に命が宿っているように思うのです。

 

「水は うたいます」、この詩もそんな一編です。雨の日も雪の日も雲になる日も水は溢れるエネルギーを発散させています。きっと私の身体の中の水も本当はこんな感じ?・・・

詩の一節とともに描かれるnakabanさんのイラストも、雨の日は雨の日なりの、雪の日は雪の日なりの水の輝きを捉えています。




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