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食い物の恨み

串が刺さった肉厚のハンバーガーとポテト。吹き出しに「我が最愛の ハンバーガー」 うちの父親というのは頑ななところのある人で、食事に関してはことさら偏食を貫き通した。
 一週間三食ポトフで文句のない私とある意味似ているが、父と私の決定的に違うところは私は妥協するが父はそうでない。

彼は食事に関して引き下がったことは一度しかない。父は卵の火の通し方は半熟が好きだが母親は固めしか食べない。それが判明したのが結婚後四半世紀たってからだ。

つまりそれまでたかが「卵を半熟にしてくれ」ということすらしなかったのだが、それに至るまでの闘争を思うとこの夫婦は結婚すべきじゃなかったし、私も生まれてこないほうがよかった。
 しかし父は卵以外は決して引かなかった。自宅で父が食べる料理は以下のものだ。


魚部門
 焼き魚、煮魚、刺し身。おひたし、豆腐。味噌汁。
 もう少し細かく分ける。
 焼き魚…鯵の干物、鮭、サンマ
 煮魚…サバの味噌煮、それ以外は全て醤油味。カジキマグロ、キンメ、カレイ、タラ
 刺し身…マグロカツオアジイワシイカタコその他、これは文句を言わない


野菜部門
 おひたしか胡麻和え…ほうれんそう、こまつな
 煮物(全て醤油味)…かぼちゃ、さつまいも、じゃがいも
味噌汁
 磯海苔とか変わったものは食べない


揚げ物…天ぷら(野菜)、アジフライ、とんかつ
 
 ほとんどこれしか食べてない。ゆで卵や卵焼き、鍋料理なども食べるが基本的に和食で醤油味のみである。書いてていらいらしてきた。おかげさまで私は魚が大嫌いである。魚なんぞ明日から全面的に禁止になって肉のみになっても一向に構わない。


 魚だって世の中には幽庵焼きでもホイル焼きでもトマト煮でもオリーブオイル垂らしてオーブン焼きでもサーモンクリームチーズだってあるが、そういうハイカラなもんは一切却下である。

父の海は多分醤油味でサバだけ味噌のカプセルに入って泳いでるんであろう。

 これを強いられる子供はたまったものではない。しかも給食が始まって、子供に合わせた味付けの食事を与えられるともうだめだ。家のものなんか何一つ食べたくなくなった。

しかし私は食い意地が張っていた上に、親に対して自分の要望を通せたことが一度もなかった。どんなに頑張ったとしても親の意思のほうが優先だ。

しかも腹の立つことに父親の偏食は体にいい偏食である。塩分だけ気をつけてれば文句がない。子供にはまったく脂分が足りないが!
 極稀に、私のための食事が出てくることもある。半年に一度くらいだ。
 ハンバーグとコーンポタージュと人参のグラッセ
 そんだけである。あとは一月一度、料理の教育として作ったツナサンドとたまごサンド。
 そのかわり母はパンやケーキは手作りで与えてくれたが、市販のポテトチップスやせんべい、お菓子類は一切禁止である。

中学生になって小遣いで食べるようになると叱られた。帰宅すると隠していたお菓子が机の上に出されて「デブの元」とか張り紙があった。エロ本と同じ扱いである。
 実際中学に入って買い食いを覚えて加速度的に体重が増えた。当たり前である。煮魚と焼き魚で子供が喜ぶわけがない。

食事は愛情であるなら、私は望まない愛を押し付けられた。反動で、自分で食事を選べるようになったら好きなだけ食べた。食べまくった。
 その中でも大好きなのがハンバーガーだった。
 初めて食べたときのことは未だに覚えている。伯母がごちそうしてくれたのだ。まだちゃんとしたレストランに入ると迷惑だからとファーストフードで、子供はこういうのが好きだからと出されたのがハンバーガーと、ポテトと、コーラだった。
 あんな美味いものは他にない。
 美味というのは食べる相手を思いやった料理の中にある。たとえ高級食材を星3つのシェフが調理しようとも、嫌いなものは嫌いなのだ。牡蠣アレルギー持ちに三ツ星レストランの牡蠣料理を出しても喜ぶわけがない。
 私の中では、伯母が「子供の好きそうなものだから」とおごってくれたマクドナルドのハンバーガーが一番の美味だった。

母が作るハンバーグは父は好まず、その上私の偏食を治そうと嫌いなものが刻まれて入っていた。今考えるとよく食べることそのものが嫌いにならなかったものだ。
 だから私はハンバーガーを食べた。食べて食べて食べまくった。あれは私が選んだ私のためだけの食事だった。その結果脂肪を大量につけたが構わなかった。

太っていさえすれば、誰も私を女として見ない。子供のままでいられるからだ。そしてそれは未だに変わっていない。

 

※再掲のため投げ銭は遠慮いたします。




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