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仕事で食べるメシはまずい 『ラブレーの子供たち』書評

大量のごちそう。吹き出しに「食、食、食…」

仕事のために食べるものってのがあります。仕入れるために味見とかするわけですよ。

けっこう羨ましがられましたが、こういいたい。

「職場の飲み会のメシと同じです。帰って食べるカップ麺のほうがいい」

確かに珍しいものとか高いものとか食べられます。でもね、ほんとにひと口でいいから帰って「マクドナルドのダブチ食いたいなあ」と思うんですよ。

で、帰宅して、カップのうどんとかすするわけ。めちゃくちゃ美味いですね。出汁とお揚げとうどん。

そんなことを思い出したのが、四方田犬彦の『ラブレーの子供たち』。

古今東西に出てくるうまい料理を実際に作って食べてみたってエッセイです。

読んでるうちにイライラしてきます。なんせ『松茸となめこのパスタ』とか、『明治天皇の大昼食』とか、こっちには手も出ないようなごちそうが出てきます。

「あーそうっすかよかったっすね、その間にも紛争地帯で飢餓発生してますよね、関係ないけど」とか嫌味言いたくなってきます。

中でも白眉はイタリア未来派のフルコース。未来派と言ってもムッソリーニの時代の話ですが。

部屋の天井の色にまで指定が入ります。つーか手を青くして食えとか言われます。

『文明化された田園』とか『アルプスの夢』とか、珍妙不可思議な名前の料理。ゲージツの世界ですもんね。

この難解な料理(のようなもの)をちゃんと読み解いて食えるものにできるイタリアンの料理人がいて、食べてる人がいるってあたりにえらい嫉妬しました。

世間にはわたしの預かり知らないところでめちゃくちゃ美味いもの食べてる人いるんやろなあ、みたいな妬みです。

わたしはある程度の料理ならつくれますが、さすがに明治天皇やイタリア未来派のレシピは無理でしょう。

ところが読みすすめていくうちにだんだん話が変わってきます。

柿の葉寿司とか、ジャムと練乳のパンとか、手軽そうなものになり、カレーすき焼きに至っては「あんまし美味しくない」というレベルにまで。

最後はレバーカツやふりかけご飯になります。

なんでだろうと思ってたら、あとがき読んで納得。

曰く。

「最初は他人の金で美味い飯が食えて知的好奇心も満たせて、なんて素晴らしい仕事と思ったが、下調べは大変だし料理を作るのにシェフに頼み込み、写真撮影も手間」

あーわかるわかる。仕事で食べるメシほど美味しくないものはない。

しかも参考文献がフランス語やイタリア語まで混じってます。いやしくも東大教授ですから手を抜けるはずもない。こりゃたいへんだったでしょう。

こんな『ラブレーの子供たち』。古今東西の文豪、芸術家の食べた料理が出てきます。

たいへんな労作かつ、時空間をまたいだ美味奇食の世界に溺れられる一冊。寝る前にどうですか。

 ※ふだんは他人の本で投げ銭はいただきませんが、この本はぜいたくすぎて「別にもらってもいいんじゃないか」と考えたので投げ銭ください。




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